シャンシャンシティは、鬼子母神からさらに北上したところ、行ける範囲ギリギリのところに存在している。実際に挑んでみればわかるが、中は広くて複雑な作りになっているので、覚悟すること。都庁以来の難関である。
入ったところは、B1F。外道フォッグや下魔アバドンズを退け、エレベータを見つけたら、それに乗って上へ向かう。58Fに到着。人間はおらず、悪魔が徘徊するだけだ。階段で60Fまでのぼる。すると、転送装置があちこちに設置されたエリアに出る。ワープの連続で移動。これが悩ましい。間違ったポイントを選ぶと、何度でもぐるぐると同じところを回らなければならないのだ。しかも、幽鬼ヴェータラ、降天使ブエル、堕天使シトリーといった、侮りがたい連中が待ちかまえている。先制攻撃で斃さないと、反撃されてピンチになる可能性が高い。前もって仲魔を呼びだしておくべきだろう。
ただ、いい点もある。シトリーを斃すと、氷狼剣を落としてくれる。これが手に入ればしめたもの。この時点では、せいぜいスパイダークロウやセラミックブレード程度の武器しか持っていないはずだが、それに比べれば威力に雲泥の差があるのだ。戦闘中に使えばブフーラと同じ効果があり、しかも無制限に使用できるが、装備した方がはるかに得。戦闘が格段に楽になるし、追加効果の氷結で敵の動きを封じることもできる。
とはいえ、入手できる確率はそれほど高くない。そこで、わざとループにはまるという手もある。そのエリアの悪魔が1体でも残っていると、戻ってきたときにすべての悪魔が復活しているので、氷狼剣が手に入るまで粘ろうというもの。経験値も稼げて一石二鳥だ。
攻略の方に話を戻そう。ルートとしては、落とし穴に落ちることができれば正解。初めて来るエリアで天使シャムシエルと出会ったら、それが正しいルート。落とし穴から、60階分を一気に墜落する。
ふたたび1F。不思議なことに、墜落のダメージはそれほどでもないはずなので、すぐに探索を再開できるだろう。落ちてきた縦穴には、何らかの魔力が作用していたのだろうか。ところで、少し歩き回ると、ターミナルに行き着く。当然セーブしておこう。しかも、マイシテーに戻っての回復も可能になる。一息つけるわけだ。ただし、AMSデータは登録されていないのだが。
攻略の後半戦がスタートする。まずは南西にあるエレベータにたどり着かなくてはならない。しかし、そう簡単には進ませてくれない。マップをきちんと把握していなければ、やはり同じところをぐるぐる回るハメになる。悪霊ラルウァイ、堕天使ハルペスなどいろいろな悪魔が出現するから、長居すればそれだけ消耗する。
ようやく2Fにたどり着いたら、そこは牢獄のエリアだ。たくさんの人間が囚われている。プリズンの支配者アバドンは、彼らを拷問にかけて殺すのを楽しみにしているのだという。もはや観念している人すらいる。助けたいところだが、今はまだダメだ。護衛の悪魔を蹴散らして先を急ぐ。ただ、一番奥の牢獄にいる天女、アメノウズメだけは別。救い出してあげると、天の香をくれる。
3Fは、またワープゾーンの連続となる。しかも、これまでにない難しさだ。これはもう、試行錯誤を繰り返して体でマップを覚えるほかない。回廊のようなルートを通って、マシンT−92βに遭遇できたら正しい道を進んでいる。ルートによっては、コンピュータ端末があって、「DMホリーライツ」を入手できるようだが、はたしてそんな余裕があるかどうか。
ワープを繰り返すと、10Fに出る。だだっぴろいところだ。ここにも端末があって、セーブできる。ボス直前なので、しない手はない。幽鬼ナイトストーカーなどを斃し、奥へ進むと、大広間へ。
薄暗い大広間では、凄惨な光景が広がっていた。そこには1体の悪魔がおり、周囲には裸にされた人々が鎖につながれ、吊されている。むせ返るような、耐え難い血の臭い。悪魔は彼らを拷問にかけ、哀れな犠牲者が苦しみ悶えながら死んでいく様子を眺めながら、ひとり悦に入っているのである。目を背けたくなるような残虐さだ。
その悪魔こそは、降天使アバドン。プリズンの支配者であり、由宇香を喰らい、爆心地の
アバドンとは、疫病のイナゴの王であり、奈落の魔神である。その名はヘブライ語で「破壊」「滅亡」「死」を意味するといい、ギリシャ語ではアポリオン(破壊者)である。『ヨハネの黙示録』では、地獄の奥底に住む堕天使として、最後の審判が訪れるときに、イナゴに似た使い魔を放って人間を苦しめ抜くとされる。また、魔術書では、身体を緑の鱗に包まれ、水掻きのような形の翼をもち、赤い髪をした男の姿で表される。
ここでは、体力が自慢の力押しタイプ。アギヤードなども操るが、手にした断頭剣を振り回してくることが多い。こちらも正攻法で対処しよう。補助魔法で攻撃力と防御力を上昇させつつ、じっくりと剣で攻撃。氷狼剣を手にしていれば楽勝だ。そして、さしもの悪魔も斃れるときが来た。
アバドンの死骸はみるみるうちに溶けてしまい、そこに残ったものは、由宇香の左腕だった。完全な形を保ったまま、朽ちるでもなく、まるで生きているかのように規則正しく脈打っている。あまりの驚きに声も出ない葛城のとなりで、泪が妙なことをつぶやいた。失われたパーツを集めれば、由宇香を蘇らせることができるかもしれない、と。
きっとあなたはそうするに違いないわ、と言いつつ泪は感情の高ぶりを押さえきれない様子。そして、私はそんなことは手伝えない、と言い、走り去っていく。葛城は追いかけようとするが、英美を放っておくわけにもいかず、断念せざるをえなかった。
ついに泪とも別れてしまった葛城。吊されたままの英美を解放してやり、近くに放置されていたのであろう、元の装備を身につけるまで待つ。再会を喜び合うふたり。しかし、早坂の行方は杳としてしれないのだ。早坂を捜すべく、英美はふたたび葛城と行動をともにする。まずは、この悪魔の牢獄から抜け出さなければならない。
ちなみに、アバドンを斃したときに泪が瀕死の場合、由宇香の左腕が出現したときに泪をまばゆい光が包み、泪は回復する。なぜ、彼女だけが回復したのか。ここには何か秘密が隠されていそうだ。
残念ながら、吊されていた人々の中で生き残ったのは英美だけだった(アバドンはこれから拷問にかけようとしていたのだから、少しおかしな気もするが)。大広間をあとにしようとすると、また由宇香のヴィジョンが現れた。例によって聞き取りにくいが、市ヶ谷へ行けということのようである。外へ出ると、悪魔たちはいなくなっていた。主を失い、逃げ出したらしい。帰りは行きと違って非常に楽だ。すぐに3Fのはじめの場所に戻ってこれる。
2Fでは英美が、囚われている人たちを助けようという。ここは素直に助けてあげよう。感謝されるのは悪いことではない。ただ、助けても助けなくても、属性に影響はない。アブナイ目をしたバール兵だけはそのままにして、牢獄エリアを脱出。あとは、ターミナルから脱出してもよし、出口まで行くもよし。悪魔がいないので、距離の問題でしかない。どちらにせよ、シャンシャンシティを出ようとするとき、英美が「絶対に達也達を見つけようね!」と話しかけてくる。
まずは、マイシテーで休息。次に、由宇香の左腕をどこに保存するか考えなければならない。生きているとはいえ、エネルギーの供給を絶たれた状態なのだから、放っておいたら今度こそ死んでしまうかもしれない。そこで、戸山シェルターに向かうことにする。平沢博士はサイバネティック医療の権威だ。彼なら保存の方法を教えてくれるだろう。
戸山シェルターには、以前訪れた(第3章参照)。近道を使えるので、すぐに研究所にたどり着く。平沢博士に会って事情を話すと、保存に必要な培養槽が手元にないという。そこで、市ヶ谷にいる弟子の日下章人のところへ行くよう指示される。マイシテーの酒場で市ヶ谷に凄腕の医者がいると言っていたのは、実は日下のことだった。
平沢博士は、親切にも日下あての紹介状を書いてくれる。これがないと会えないのだ。博士が書き終わるのを待っている間、お茶でも飲んでいなさい、と言ってくれるのだが、そのお茶をもってきたのは、なんとメイだ。
博士によると、カズミとメイもまた、迷宮を突破して研究所にたどり着いたようだ。博士は事情を聴いて、これ以上病気がひどくならないように、メイを預かることにした。一方カズミは、修行も兼ねて、博士の娘で行方不明になってしまったアリスを探しに行ったという。
紹介状を渡してもらうときに博士が、日下が断れないような書き方をした、と謎めいたセリフを言う。その真意は不明だが、とにかくこれで市ヶ谷へ行けそうだ。研究所をあとにするとき、となりの部屋をのぞいてみると、メイは、お伽の国の住人になったように無邪気に楽しんでいた。
ちなみに、葛城が瀕死の状態で平沢博士に会うと、「こんな状態で訪ねてくるとは近頃の若い者は礼儀を知らない」と言いながらも回復してくれる。メイを預かったことといい、気難しそうな風貌とは裏腹の、優しくてとてもいい人なのだ。
市ヶ谷へ行け、という由宇香のヴィジョン通りの展開だ。以前は瓦礫があって進めなかったが、今は通れるようになっている。余談だが、瓦礫がどうして取り除かれているのかは、いつも謎である。地上で生活している人々がチームを組んで作業にあたっているのだろうか。それとも、まさか悪魔がせっせと瓦礫を崩しているなんてことは……。
市ヶ谷にはシェルターがある。それは、かつて軍(たぶん自衛隊のこと)が所有していたものだ。今では、日下の研究所になっている。そのシェルターの付近まで来たとき、1体の悪魔に遭遇する。悪魔はレラジエと名乗った。葛城たちが必ずここに来ると思って待っていたのだという。
恐るべきはその洞察力である。だが、高位悪魔の知能を人間と同じレベルで考えてはいけない。レラジエは、決闘を申し出る。自分が勝てば葛城の持つ由宇香の左腕をもらい受けるが、葛城たちが勝てば、自分が持つ右腕を差し出す、というのが条件だ。レラジエとしては、左腕をも手に入れて、さらなるパワーアップを図りたいのだ。
ここで受けて立つかどうか選択になるが、実は拒否しても英美が納得しないので、強制的に戦闘となる。それよりも、男らしく受けて立とう。相手は由宇香を喰らった悪魔のひとりだし、由宇香の右腕を取り戻すチャンスなのだから。
降天使レラジエは、レラィエとも言い、ソロモン王によって封印された72柱の魔神のひとりだ。射手の侯爵の称号をもち、緑の服を着て、弓矢を携えている。戦争や競争を起こし、敵の傷が癒える速度を落としたり、止めたりする力があるともいう。ここでも、レラジエの武器はやはり弓矢である。火魔矢、五月雨矢、腐乱の矢など、魔力を込めた矢を次々に放ってくる。とくに、腐乱の矢の猛毒はポイズノンXでは回復できないので注意。毒によって敵の傷が癒える速度を落とすのだ。
ここで問題になるのが英美である。レベルが低く、装備も貧弱。装備はマイシテーでいくつか買い換えられるが、能力値が足りず身につけられないものも多いのだ。そこで、どうしても彼女を庇いながらの戦闘になる。だが、レラジエの体力はアバドンを上回る。長期戦は必至だ(氷狼剣があればだいぶ状況が違ってくるが)。
やっとの事でレラジエを撃破すると、その体から由宇香の右腕が現れる。これでパーツはふたつになり、いよいよ保存の必要性が高まってきた。中へ。
シェルターに入ってエレベータで下へ。ロボットがいて、一瞬敵かと錯覚しそうになるが、これらはすべて警備用らしく、動き出すことはない。やはりもともとは軍の所有だったものらしい。B3Fで受付の女性に紹介状を渡すと、確認のための作業をしたあと、通してくれる。もし紹介状をもっていないと、追い返されてしまうところだ。中では天井のライトが誘導してくれるので、放っておいても日下の研究室にたどり着く。
日下章人。想像していたよりも若い、長身で長髪の男だ。しかし、サイバネティック医療の権威であり、その実力は平沢博士をも上回るという。彼はすでに紹介状を読んでいた。そして、本来なら高額な費用を要求するパーツの保存を、無料で請け負うという。その代わり、研究のために由宇香の細胞組織を少しだけもらいたい、と取引をもちかけてきた。平沢博士が言った、日下が断れないように書いた、というのはこの取引のことを意味していたのだろう。
ここで選択を迫られる。愛する人の体を少しでも傷つけられるのはイヤだ、というのであれば、この申し出を断ることになる。日下は、自分を信用しないクライアントとは取引をしない、と言ってくる。別の保存の方法を考えなければならなくなるのだ。ここは素直にOKした方がいい。
この場合、パーツは日下が預かり、培養槽に保存してくれる。日下に連れられ、B4Fへ。そこは、脳やらなにやら全身のパーツがいくつもの培養槽の中に浸かっているという、あまりぞっとしない場所だった。日下は両腕を培養槽に入れ、一通り説明してくれたあと、さっさと研究室に戻ってしまう。
以後、自由に動けるようになる。いろいろ話を聞いて回ろう。市ヶ谷シェルターには、サイバネティック技術によってパワーアップを目指す人々が大勢集まっている。悪魔人さえ少なからずいる。相当高額の治療費を要求されるようだが、命には代えられないというわけで、少しでも強くなろうとみんなここへ来るのだ。
歩き回っていると、看護婦がやたら多いのが目につく。しかも、とても正規の看護婦とは思えない。それもそのはずで、彼女たちはみな日下に造られた有機デミ・ヒューマンなのだ。しかし、ちゃんとDNAをもち、人間とまったく同じ振る舞いができるように設計されているという。
日下の研究室の近くにはターミナルがある。これでマイシテーとの行き来が可能になる。入口からでも、それ以後は紹介状なしで中に入れるようになるが、ターミナル間を移動できた方がはるかに楽だ。また、端末からはDAS Ver2.0が手に入る。悪魔の状態を分析できるだけでなく、一度斃した悪魔については完全な情報を得られるという逸品である。
そして、これからもパーツを入手したときは日下の世話になることになる。また、パーツを長い間放置しておくと干上がってしまうが、その場合でも彼の天才的な腕をもってすれば、元に戻すことができるのだ。
市ヶ谷シェルターをクリアすると、東池袋駅から有楽町線が利用できるようになる。未知の世界へ足を踏み出すわけだ。が、その前に復興したシャンシャンシティへ行ってみよう。
復興後のシャンシャンシティは、中の構造が変化している。迷路のように入り組んでいたところも、いまや自由に行き来できる。1FでターミナルからAMSデータを入手したら、B1Fへ。ここは店がたくさん並んでいるが、まずは装備を更新しよう。それまでの戦闘で随分マッカが貯まっているはずだから、仲魔の分まで買えるはず。とりわけ防具が大事だ。これからの戦いに備えて、できるだけいいものを買っておこう。コンサバスーツ、メタルクラウン、TAKAIブーツあたりがおすすめ。武器屋では、強力な弾薬が手に入る。
コンピュータショップでANS Ver2.0とセーバーIIを買う。ANS Ver2.0は、付近の人間の生体反応を表示してくれる。早い話が、初台で英美がくれたANSと同等の機能を提供するものだ。コンピュータといえば、1Fの端末から降天使ブエルのDDSデータをダウンロードできる。メディアラマとパララディを持っているので、回復用にキープしておくのも悪くない。
装備類が整ったら、住人から話を聞いて回る。これは鉄則。エレベータからは2Fと58Fに行ける。58Fの方は、60Fまで階段で続いている。妖精マベルや夜魔リリムなどの悪魔が出現する。59Fでプチダゴン、60Fで職人の香が入手できるが、無理して取りに来る必要はほとんどない。
2Fは、かつての牢獄。人々が解放され、ほとんど空いているが、例のアブナイ目をしたバール兵はそのままだ。今では、悪いことをした奴を懲らしめるために使われている。
3Fだけは、なぜかAMSにマップが登録されていない。だが、やはり構造は変化している。ワープゾーンがふたつあり、ひとつは邪教の館につながっている。邪教の館がいつも使いづらい場所にあるのは、人目を忍んで活動しているからだろう。このルートでは、悪魔に遭遇するエリアにも飛べる。出現するのは、やはり妖精マベルと夜魔リリム。わざわざ探索しても、宝箱やアイテムボックスはひとつもない。
もう一つのルートは、10Fにワープするもの。アバドンと戦ったエリアであり、端末も残っている。ただ、ここも変わっていて、近くに回復ポイントが見える。アバドンがいた大広間はただの空き部屋になっているが、それとは別の空間ができている。一見すると広いのだが、見えない壁があり、何度もAMSを利用することになるだろう。そこではオサキ狐と水妖エアリアルが出現する。だが、弱いので心配はない。
一度11Fへ行ってから10Fへ降りてくると、奥まったところでガンマニアがひっそりと店を開いている。本来ならもっと先まで進まないと手に入らない、高価で強力なガンが並んでいる。たとえば、ヨシツネN9、ヘヴンズファイア、DBW9レーヴァテインなど。どれもかなりの値段である。だが、仮にマッカに余裕があったとしても、装備できるかどうかは別の話。
とはいえ、できればデザートイーグルは入手しておきたい。弾薬も強力なものがそろっているので、銃の攻撃力が大幅に向上する。10Fを試射場に見立てて、狐狩りとしゃれ込むのもいいだろう。
さて、一通り回ったら、東池袋駅へ。有楽町線で護国寺駅と飯田橋駅に行けるが、ここはまず護国寺駅へ。当然地下鉄が走っているわけもなく、線路の上を歩いていくのだ。
護国寺駅から護国寺へ。廃墟の中、なぜか西洋鳥居が新しく建てられている。不思議な光景だ。これを確認したら、高速道路に乗って神田方面へ(もちろんこれも道路を歩いていくのだが)。
神田は、神田学術研究都市の名で知られる。ここにももう、シャンシャンシティが開放されたニュースは伝わっているようだ。エレベータでB5Fへ。そこは地下街になっていて、武器屋、防具屋、邪教の館など、一通りの施設がそろっている。武器屋はそれなりのものを置いているが、シャンシャンシティのガンマニアほどではない。防具屋は、仲魔専用の防具が多い。道具屋では、アンチドートPPを買っておこう。毒と麻痺を両方回復できる。
地下街のさらに下には、研究所がある。B6Fからエレベータで移動。そこは地下街よりもはるかに広く、驚かされる。研究者はミュータントばかりで、彼らは最先端分野の研究を進めている。とくにサイバネティック研究に関しては、市ヶ谷シェルターと並ぶメッカだ。政府(なるものがあるのかどうかは不明だが)が資金援助と特別保護を実施している、 との情報もあった(初台の端末)。しかも、ここの研究成果は無償で各シェルターに発信されていたらしい。
研究者たちは自分の研究に没頭していて、葛城のことなどほとんど気にもとめない様子。有益な情報はほとんど得られない。ただ、有明には神田と同じくミュータントが集まっているらしいことがわかる。
B16Fにはターミナルがあり、マップもダウンロードできる。さらに、別の端末から水妖アプサラスのDDSデータも手に入るが、ウイルスが侵入してくるので、対応するセーバーがないと危険だ。
この研究所の主宰者は、ルイ・サイファーという。どこかで聞いたような名前だ。たしか、大破壊後、世界各地を飛び回っていたのでは……? それはさておき、研究者の中には、彼をほとんど神のごとく扱っている者すらいる。相当なカリスマ性だ。しかも、やはり初台の端末情報によれば、「ルイ・サイファー氏の身元に関する情報は正確で、何一つ問題は見られない」のだそうだ。さすがに巧妙である。また、この研究所には政府の関与も噂されているという。その政府というのがなんなのかは不明だが。
転送機を使い、B17Fの奥にあるルイ氏の部屋へ。部屋に入ると、彼は話しかけてくる(このとき葛城か英美が瀕死だと、回復してくれる)。シャーロック・ホームズばりの推理力を披露して、葛城がシェルター出身であることなどを言い当てる。なにしろIQ300だそうだから、わからないことなどないのだ。が、筆者としてはこんな小手先の芸は見せてほしくないというのが正直なところ。
ルイ氏に由宇香のパーツについて相談すると、個人用の培養槽を売ってくれるとのこと。しかし、18,000マッカという値段は決して安くない。しかも、今はまだそれを置く場所がない。将来的にどうするかは、プレイヤーの判断に委ねられている。
ここで余談をひとつ。神田では、ミュータントが普通の人間よりも優れた頭脳をもっていて、科学の最先端をになっている。このような、異形の者が同時に異能者でもあるというモチーフは、神話・伝承の中にも見られる。たとえば、有名なのは北欧神話のドヴェルグ小人。これはRPGではおなじみの、ドワーフの原型である。
彼らは原初の巨人ユミルの死骸に蛆虫として湧き出たとされ、醜く、頭でっかちで、膝までつくような長い腕をしていたという。だが、彼らは鍛冶屋・細工師としては超一流で、オーディンの槍グングニルや、トールの鉄槌ミョッルニルは、いずれもドヴェルグ小人の手になる業物である。
『ヴォルスンガ・サガ』で英雄シグルズ(ジークフリート)が振るう聖剣グラムも、「こびと」が鍛え上げたものとされる。また、ロキがアンドヴァリという名のドヴェルグ小人から取りあげた金の指輪には呪いがかけられ、指輪を持つものは死の運命につきまとわれることになった。龍に変身したファフニルや、シグルズ自身もこの指輪の餌食になっている。のちに、この指輪の伝説は『ニーベルンゲンの指輪』やトールキンの『指輪物語』に受け継がれることになった。
これ以外に最近の例を挙げるとすれば、『もののけ姫』がある。主な舞台であるタタラ場に登場する、全身を包帯で巻いた人々(おそらくハンセン病患者)は、有能な技術者であり、銃や火筒を生産してタタラ場に貢献していたのだった。
地下街と研究所を回ったら、次の目標は御茶ノ水シェルターだ。ここを素通りして秋葉原にも向かえるのだが、攻略しておかないと後々苦労することになるので、ここでは御茶ノ水シェルターを目指す。先に秋葉原に行くパターンだとどう苦労するのかについては、後述する。
御茶ノ水シェルターへの布石は、初台シェルターの時点ですでにあった。ムールムールがDDMで初台に侵入したとき、憑依した体を使ってさらにDDMを送りつけたのだ。ムールムールを挑発した際には、御茶ノ水シェルターに送ったメールは回収した、と言っていたはずだが、シェルター内を逃走している間に再度送りつけた可能性は高い。葛城が憑依された展開だと、添付ファイルがAIM.BINであるとわかる。はたして御茶ノ水シェルターは無事なのだろうか?
中へ一歩足を踏み入れると、そこはやけに高温の空間だった。エレベータは破壊されている。階段を使って降りるが、このとき、気をつけないとダメージを受けることもある。そして、B4Fの最初の扉を開けたとき、目の前に飛び込んできたのは、半ば廃墟と化したシェルターの姿だった。炎にあぶられたかのように、あちこちの壁が熔けだしている。悪い予感は的中した。このシェルターもまた、悪魔の襲撃を受けたのだ。
そのとき、目の前に天使のヴィジョンが現れた。天使の名はファニエル。ファニエルは葛城たちの傷を癒してくれ、そして話しかけてくる。シェルターが悪魔の襲撃を受けたこと。仲間の天使たちは、人間界のことはタブーであるとして見て見ぬ振りをしていること。周囲の制止を聞かず、人間たちを助けるべくひとりで降臨したこと。今は、生き残ったシェルターの住民たちを悪魔の攻撃から守りながら、下層に籠城しているのだという。
ファニエルは、葛城に手を貸してくれるよう頼む。人々を守るのに精一杯で、悪魔と戦う余力は残されていないという。悪魔の攻撃は一段と激しさを増しており、このままだと陥落も時間の問題かもしれない。人の子でありながら人を超えた力をもつ葛城以外に、人々を救える者はいないというのだ。ここでどういう行動をとるかによって、展開が変わる。ここでは、ファニエルの頼みを引き受けることにする。
あちこちに悪魔の炎が撒き散らされており、下手に寄り道するとダメージゾーンに何度も足を踏み入れることになる。これらの炎は物理的な燃焼作用とは関係なく、エーテルが燃えているので、燃え尽きるということがない。有用なアイテムはあまりないので、攻略を最優先すべきだ。ただ、B7Fには天の香がある。
シェルター内の構造はあまり複雑ではない。だから迷う心配はないが、原宿シェルターに負けず劣らず広い。しかも、出現する悪魔のレベルが上がってきている。少し挙げてみると、降天使ゼパール、邪龍ジャバウォーク、魔人ヴァンピール、悪霊ピシャーチャなど。これに加えて、シャンシャンシティでも登場した、降天使ブエル、堕天使シトリー、幽鬼ヴェータラが加わる。
全体的に見て、シャンシャンシティよりも厳しい戦いを強いられるのは間違いない。しかも、泪と違ってレベルの低い英美は戦力としてあまり当てにならない。強力な仲魔がいないと、全滅することもあり得る。まだ氷狼剣を持っていなければ、シトリーを斃しまくろう。ボス戦までには入手しておいた方がいい。
B9F〜B11Fの間は、一方通行が多く、固定悪魔が多数出現する。凶鳥アトロポスや、邪龍ワイアームなど。上に挙げた以外のワンダリングの悪魔としては、鬼女ラミアや妖獣ヌエなど、出現する悪魔を挙げているとキリがない。
最難関は、B12F。ここはまさにダメージゾーンの嵐。傷薬などではとても間に合わない。宝玉を何個か失うことになるだろう。ちゃんとHPを確認しながら歩くこと。しかし、これを抜ければボスは目の前だ。
B12Fの奥の部屋では、1体の悪魔がさらに先へ進もうと扉に炎をぶつけている。しかし、扉は何かの力に守られているようで、なかなか壊れない。悪魔は、あの腐れ天使め、と毒づく。そのとき、気配を察知し、葛城たちの存在に気づいた。ファニエルに頼まれたか、とその悪魔――アイムは言った。まず葛城たちから血祭りに上げる気になったらしい。戦闘となる。
堕天使アイム。ソロモン王によって封印された72柱の魔神のひとりで、火炎公の称号をもつ。三つ首で、1つは蛇、1つは猫(または子牛)、もう1つは人間(額に2つの星を持つ)であり、この世に火炎地獄を作るため、見るものすべてに放火しようとするとされる。常に赤みがかった煙に包まれ、地獄の毒蛇(またはトカゲ)にまたがっているともいう。
いままさに、御茶ノ水シェルターを火炎地獄に変えようとしているアイム。こいつに火炎系の攻撃はまったく効かないどころか、すべて反射されてしまう。衝撃系の魔法も吸収してしまうようだ。だが、炎を自在に操るはずの悪魔にしては、ファイアブレスやアギラオくらいしか繰り出してこないので、しぶとく攻撃していればそれほど苦戦することはない。氷狼剣があれば、さらに戦いは楽になるだろう。
アイムを斃すと、ファニエルが現れる。このシェルターも次第に復興していくでしょうと言い、葛城たちを出口近くまで送ってくれる。そして、自分は天界へと戻っていったようだ。
御茶ノ水シェルターを出たら、一度神田地下街へ戻るのが正解だ。傷を回復する、という意味だけでなく、御茶ノ水シェルターの復興を待たなければならないからだ。しばらくの間、シェルターは作業のため立入禁止になる。そこで、時間をつぶさなくてはいけない。
神田地下街の入口のところで、驚くべき噂を耳にする。新宿都庁がふたたび悪魔の襲撃を受け、陥落したというのだ。事の真偽を確かめなければならないようである。
B4Fの端末から、ANS Ver2.1が入手できる。人間ばかりか悪魔の存在まで感知する、ナビゲーションシステムの最新バージョンだ。これをインストールして、地下研究所のターミナルからマイシテーへ移動する。
どうやらマイシテーは無事だったようだ。いつもと変わらず人々が生活しているように見える。が、外へ出て都庁に行こうとすると、見えない壁に阻まれて進むことができない。いったいどうなっているのか。
マイシテーに戻って居住区で話を聞く。すると、渡邊が悪魔とすり替わっていたとの情報が。これで、今までの出来事すべてに納得がいく。なぜ、代々木労働キャンプから戻った葛城たちがスパイ扱いされたのか。なぜ、襲撃後に犬たちを処分したのか。最初の襲撃のとき、顔を撃たれて渡邊の側に転がっていた死体、それが本物の渡邊だったのだ。
すると、あのとき葛城と園田が一瞬だけ見た強大な悪魔こそ、渡邊に化けた張本人なのだろう。悪魔は頃合いを見計らってその正体を現し、手下の悪魔を呼び寄せたのである。結局、リーダーを失ったペンタグランマは瓦解してしまった。残ったメンバーも、意気消沈してレジスタンスを再編成するどころではないようだ。悪魔の強大な力の前に、やはり人間は無力なのか?
神田へ戻り、旅を続ける。実は、御茶ノ水復興の鍵はルイ・サイファーが握っている、と言うと大げさだが、彼から培養槽の設置場所はあるのか、と尋ねられればOK。御茶ノ水シェルターへ行くと、見事復興しているはずだ。
B4Fの、最初にファニエルのヴィジョンを見たところで、ふたたびファニエルが現れる。葛城たちがやってくるまで待っていてくれたらしい。葛城たちに礼を言い、昇天していくファニエル。ところで、このイベントは属性に影響を与える。ファニエルの要請を受けた場合、属性はLIGHT側に傾く。
中を探索してみよう。かなり広い。B14Fまであるから、今まで訪れたシェルターの中でも最大だろう。まだまだこれから復興を進めていくという感じだが、邪教の館をのぞき、施設は一通りそろっている。B5Fに武器屋、防具屋、道具屋が、B6Fには病院、薬屋、酒場がある。
それぞれの店に注目すべき品があるので、しっかり品定めをしよう。武器屋にはけっこう強力な銃がおいてある。防具屋では、サイバネアーマーIIやサイバーアームがおすすめ。全身鎧はトータルで見ると防御力が落ちるので、買うだけ無駄である。道具屋には反魂香があり、これを使えば回復ポイントで、瀕死ばかりか死をも回復する。薬屋の牛黄丹は、少し値が張るが、猛毒を回復できるので持っておいて損はない。
B5Fにターミナルが設置されているから、例によってマップをダウンロードする。B7Fには、ファニエルが約束してくれた葛城の部屋がある。ここで休息をとればセーブ可能だが、B5Fにターミナルがあるので、利用価値はあまりない。ただ、個人培養槽を購入した場合はここに設置することができるのだ。
シェルターを救った葛城は、まさに英雄である。下にも置かない扱いぶりだ。B14Fまで、話を聞きながら丹念に回る。空き部屋が多い。そして、デビルバスターがいないことに気づく。全滅したのだ。住民の話によれば、実戦経験のない彼らは、闇雲に悪魔に向かっていくだけで、みんな返り討ちにあってしまったのだという。ほかにも、銀座にある金星教団の情報が聞ける。
B9Fの宝箱にはダイヤモンドが入っている。まさにこのために御茶ノ水シェルターを攻略したのだと言ってもいいくらい、これは大事なものなのだ。以前陽子と知多の母子合体悪魔人から1個入手したが、これで2個になった。ずっと先になってからわかることだが、イベントの関係上ダイヤモンドが絶対に必要になる。そして、ダイヤモンドを入手できるのは、ここ御茶ノ水シェルターしかない。さらに、B14Fには魔法の宝箱があって、満月になるたびにダイヤモンドが手に入る。
さて、以下ではアイムを斃すことなく御茶ノ水シェルターを素通りした場合、またはファニエルの頼みを断った場合について触れていこう。
ファニエルの頼みを断ったとしても、秋葉原に行っていなければシェルターに舞い戻って攻略は可能だ。ただ、この場合はなぜか属性がCHAOS側に傾いてしまうという。それ以外は要請を受けたときと同じなので、省略。
展開が異なるのは、秋葉原に一度でも行ってしまった場合。秋葉原で起こるイベントについては、次章で触れるのでここでは書かないが、イベント後に御茶ノ水シェルターに行ってみると、そこは完全に廃墟になってしまっていた。
ここではさらに、最初から御茶ノ水シェルターに寄らなかった場合と、ファニエルの要請を蹴ってシェルターを見捨てた場合とに別れる。どちらの場合でもやはりB4Fでファニエルのヴィジョンが現れるのだが、セリフが少し違う。
まずは前者のパターン。ファニエルは、来るのが遅すぎました、と言う。そして、自分に力があれば……と嘆く。嬉々として人々を焼き殺すアイムの姿が目に浮かぶ。もちろん、生き残った人など皆無だ。
後者のパターンでは、まず、頼みを断ったときに、人間などを頼ろうとした私が間違っていました、と痛烈なことを言ってくれる。慈悲深い天使ではあるが、ひょっとしたら心の底では高位悪魔と同じように、人間を下等生物だと見下しているのだろうか。ここで属性がCHAOS側に傾く。次に、イベント後に戻ってきたときには、兄弟たちが力を貸してくれれば……と言う。葛城たちを非難しようとはしない。それは天使の理性によるものなのか、それとも単にあきらめているだけなのか……?
ところで、御茶ノ水シェルターが廃墟になってしまうと、ダイヤモンドをどうやって入手するかが問題となる。実は、B14Fの魔法の宝箱は残っている。が、悪魔の巣窟と化したシェルターの中を歩いて最下層まで降りるのは、かなり骨が折れる。当然B12Fの、嵐のダメージゾーンも健在だ。しかも、今やこのエリアにも悪魔が出現するので、HPが激減する状況の中で戦闘するハメになる。
ちなみに、ダメージゾーンに出現するのは、天使ダニエルである。なぜ、ファニエルが去ったシェルターに天使が出現するのか。おそらく、彼らはシェルターの元住人たちだろう。ファニエルと神の加護を信じながら死んでいった人々は、天使に転生することができた。だが、懐かしいシェルターを離れられずにいるのだ。哀れではある。
余談になるが、このダニエルについて、生体エナジー協会の『悪魔全書』に興味深い記述がある。普通ダニエルというと、旧約聖書中の『ダニエル書』に出てくるダニエルを思い浮かべる。このダニエルは、終末論的幻を見せられ、大天使ガブリエルに内容を解釈してもらうのである。
ところが、偽典のダニエルは映画が元ネタになっているという。ヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩(原題:Der Himmel uber Berlin)』(1987年西ドイツ)の主人公が、ダニエルなのだ。この『ベルリン・天使の詩』がリメイクされて、『シティ・オブ・エンジェル(原題:CITY OF ANGELS)』(1998年アメリカ)になったらしい。こんなところから天使の名前を引っ張ってくるあたり、鈴木大司教らしい選び方だと言えよう。
魔法の宝箱にたどり着くまでに、相当の距離を歩くことになる。だから、その移動の時間も計算に入れて、たぶん満月の少し前にシェルターに入らなければならない。たかだか宝石1個のために、実に面倒な話である。それに、廃墟のシェルターを歩くのは何となく良心が痛まないだろうか。自分が見捨てたとなればなおさらだ。
と、まあ今回はこんなところだろうか。次は秋葉原からのスタートとなる。では、また次回。