主人公である
適性テストは、画面に表示される選択肢を選ぶことによって行われる。内容はやや抽象的なものから、具体的な場面での行動を問われるものまでさまざま。「適性」といっても、デビルバスターに向いているかどうかを見るものではないようで、ここで申請を却下されることはないので、素直に選択肢を選んでいってかまわない。いわば性格診断である。
診断結果はすぐに表示される。理性的、神秘的、正しい分析能力があるといったプラス面と、独善的だ、優柔不断、思慮が足りないなどのマイナス面が同時に診断される。これらの組み合わせにより、『格闘戦』・『射撃戦』・『魔法戦』・『コンピュータ戦』の4タイプに葛城の適性が決定される。そのことを告げられるのは試験の合否が発表されたときである。筆者の経験から言えば、『魔法戦』タイプがいちばん楽。ちなみに、テスト後に葛城の属性が、少しLAW寄りと少しCHAOS寄りに分かれるようだ。
テストが終わったら、
翌日。入隊試験が始まる。まずはペーパー試験から。試験は4部に分かれ、第一部は悪魔分類学。生体マグネタイト、属性、悪魔との交渉などの基礎知識が問われる。第二部は対悪魔戦術学魔法編。敵悪魔や自分が用いる魔法・特殊能力についての知識が問われる。第三部は対悪魔戦術学物理攻撃編。悪魔と武器を交えて戦うときの知識が問われる。第四部は対悪魔会話戦術。読んで字のごとく悪魔との具体的な交渉術について問われる。悪魔との交渉もまた戦いなのだ。
問題数は25問。配点は50点満点。コンピュータにより採点は瞬時に行われる。ところでこの試験、個人差もあるだろうがゲームを始めてすぐの段階ではかなり難しいと思われる。腕に覚えのあるメガテニストでも相当苦戦するようだ。しかも、わざと難しく作っているフシがある。一種のファンサービスということだろうか。
次は実技試験。試験官にトレーニングルームへ連れていかれる。そこにはバーチャルトレーナーなる大仰なマシンが設置してあって、
ふたり一組でバーチャダンジョンへ。葛城のパートナーは由宇香。まあ、お約束だ。ポッドに乗り込んだらシートに座って身体を固定し、ヘッドギアをかぶってスタート。ふたりは、見知らぬ建物の中にいる。デビルバスターとしての最小限の装備が与えられている。しばらく歩くと悪魔たちが徘徊しているのを発見。これらを斃しつつ、目的地にたどり着かなければならないのだが、その目的地も自分たちで見つけ出す必要がある。
最初は戦闘に慣れるためにゆっくり進み、多少レベルアップしてから本格的な探索を始めるのがセオリー。接近戦よりも遠距離から攻撃する方が無難。途中から敵がいきなり強くなる。近距離から魔法を喰らうと即死なので、先制攻撃あるのみ。全滅、つまりふたりとも死んでしまうと、声が聞こえてきて、さらに続けるか、もうやめるか尋ねてくる。やめようとすると由宇香に止められるので、続けるしかない。もちろん、大減点は覚悟しなければならないが。
ある場所で、遠くからものすごい爆発音が聞こえてくる。さらに進むと、デビルバスター第2部隊のメンバー、
部屋にはボス(ポイズンドラゴン)がいる。かなり高レベルの悪魔らしい。西野隊長らが応援に駆けつけてくれるまで、4人で持ちこたえるしかない。だが、全員で攻撃しても、暴走したデータにはダメージ(これもバーチャルなものだが)を与えることができない。そのとき、西野から通信が入り、到着を知らせてくる。いったん部屋から撤退。扉の外には、西野隊長と、もうひとりの第2部隊のメンバー
ここで、真のオープニングが流れる。スタッフロールとともに、以後のストーリーで重要な役割を果たすことになる、いろいろなキャラクターのグラフィックが出る。スタッフには、
ストーリー再開。まず、トレーニングルームの外で第2部隊のメンバーによる自己紹介がある。あらためて自己紹介しよう、という西野の言葉にはいまさら……という感じがしなくもないが、キャラクターの性格を印象づける意味もあるのだからしょうがない。英美のコンパニオンアニマル(ペットではない)、ニュートンとはここで初めて顔を合わせる。それ以外のメンバーについては、すでに触れた。さて、本来試験が中断してしまうと後日再試験ということになるのだが、葛城と由宇香は勇敢に戦ったので、その旨西野から管理部へ報告してくれるとのこと。再試験を受けずに済みそうだ。
その後、由宇香とともに控え室で待たされる。試験官の注意があって、呼び出しがあるまで部屋を出るな、と言い渡される。不安と緊張。周囲の人間があれこれぼやく。呼び出しの時間が近づいてくると、みんな黙りこくってしまう。由宇香が声を潜めて話しかけてきて、不安を口にする。優しい言葉をかけてあげるか、それとも突き放した物言いをするか――プレイヤーの選択次第だ。順番に名前が呼ばれていく。葛城よりも先に由宇香の番が回ってきた。彼女は部屋を出ていく。
葛城ひとりになってしまった。部屋はしーんと静まり返っている。そのとき、外で突然爆発音が! さあどうする。部屋を出るなという指示を破れば点数に響くかも。だが、放っておいていいものかどうか。ここでは部屋を飛び出すことにする。
部屋の外には作業員のおっちゃんがひとり。爆発音は武器庫の方から聞こえたという。一緒に武器庫へ向かう。扉の前まで来ると、おやじは尻込みし、俺には妻子がいるからひとりで入ってくれ、などと言い出す。何かあったらすぐに大声で俺を呼べ、と無責任極まりない。
仕方なくひとりで中へ。作業員が武器庫の管理人を人質に取っていた。床にデビルバスターが負傷して倒れている。気をつけろ、作業員は悪魔に憑依されている、とそのデビルバスターは苦しげな息の下から声を絞り出す。かなりヤバい状況だ。考えられる選択肢はいろいろある。逃げるか、助けを呼ぶか、それともまずはしばらく様子をうかがうか……。
様子をうかがうのが正解。とはいえ、悪魔に憑依されたという犯人には隙がない。人質は怯えきっているし、周囲の武器を取ろうとすれば、人質の首筋に当てられたナイフが喉笛を掻き切ることになる。ふとデビルバスターの方を見ると、犯人の死角に銃が落ちている。これを拾えれば……。そのためにはまず、犯人の注意を逸らさなければ。犯人の要求を聞くフリをして、一瞬の隙に乗じて銃を拾った――はずが失敗。そのとき、そこまで、と声がかかる。
背後から試験官が現れた。実は、これも実技試験の一環だという。すべては、演技だったのだ。瀕死の重傷を負っていたはずのデビルバスターが、何事もなかったかのように立ち上がる。緊急時にもパニックに陥ることなく、冷静な判断を下せるかどうかを見るものだったという。
すると、軽率な行動をとっていれば減点されそうなものだが、最近の研究によれば、どうも違うらしい。このイベントは、加点対象にはなっても、減点はされないようなのだ。しかも、部屋に待機したままでも合否には影響しないらしい。
そうなると、どうもしっくりこない。真の緊急事態に際して迅速かつ的確な行動がとれなければ、デビルバスター失格だと思うのだが。試験官の言いつけを守るのはいいが、自分の頭で状況を判断して行動できなくてどうする。少なくとも減点扱いにすべきではなかったか。
とにかく、ここで試験は完全に終了。自室へ戻らされる。途中で由宇香の部屋に立ち寄ると、由宇香も同様のテストをさせられていたことがわかる。彼女の場合、呼び出された部屋でいきなり悪魔が襲いかかってきたという。だが、それらはすべて立体映像だったのだ。
自室へ戻って結果を待つ。そこへ、由宇香が上気した顔で飛び込んでくる。彼女は合格したようだ。そのとき、管理部から連絡が。合否の通知と、葛城がどのタイプに属するかの判定が伝えられる。
通常は落第となるはずなので(少なくとも初めてのプレイで合格する確率は極めて低い)、これ以後も落第したことにして話を進める。だが、合格もあり得る。筆者の経験では、ペーパー試験が35点以上で、実技試験の途中で全滅することがなく、最後のテストにも冷静な判断を下すことができていれば合格となった。最近の研究では、実技試験で全滅すると10点マイナスとなり、このマイナスがなければペーパー30点以上で合格になることが明らかにされている。合格すると、由宇香と一緒に即第2部隊に配属となる。
由宇香が合格し、葛城は落第。ちょっと気まずい雰囲気だ。由宇香から慰めの言葉をかけてもらう。気が進まないながらも結果をみんなに伝えにいくと、同じように慰められる。入隊試験はかなりの難関であり、一度で通ることはなかなかないというのだが、でも、現に由宇香が……。
自室に戻って休息をとる。やはり落第したショックは大きい。なかなか寝付けない。その間にさまざまな思いが胸中を去来する。葛城は幼くして母を亡くし、10歳のとき父も亡くした。デビルバスター第2部隊は父が隊長を務めていた隊だ。当時はまだ結界の強度が不十分なころで、シェルター内に悪魔が侵入することもたびたびあった。そして、ある戦闘において父は部下を逃がすために自分の身を犠牲にして殉職した。そのときの隊員のひとりが、西野であった。西野は、ふさぎ込み、自閉的となった葛城を優しさで救ってくれたばかりか、我が子同様に育ててくれた。葛城の父への、せめてもの恩返しと考えたのだろう。西野のおかげで葛城は元気に育っていったが、父の形見であるブルゾンと腕時計は、今でも肌身離さず身につけている。
片親もしくは両親不在というのはメガテンのお約束。悪魔に象徴される『力』が父親の代わりで、ヒロインが母親の代わりだったりする。葛城の脳裏に、由宇香の姿が浮かんだ。管理部のエリートを父に持ちながら、家を飛び出し、ひとり居住区に住む少女。眠りに落ちる直前まで、彼女のことが葛城の頭から離れなかった……。
次の日、起きると目の前に由宇香がいる。心配になって様子を見に来たという。しばらく話をしたあと、彼女は仕事に出かける。初出勤だ。葛城の方は、フリーなのですることがない。暇つぶしにあちこち歩き回ってみよう。
そろそろ操作にも慣れてきたはず。今のところ行けるのはB5FからB7Fまでなので、くまなく回って位置関係を把握しておこう。ポイントは、B6Fの食料庫(早坂の父がいる)、ファーム、そしてB5Fの詰所だ。ちなみに、ファームとはシェルター内の全食料をまかなう施設で、合成食品を製造している。ただ、エリート向けに自然食品も一部生産しているとか。B6Fの食堂はあまり重要ではないが、早坂の母が働いているので、一度挨拶しておくのがいいかもしれない。
同じB6Fでも道具屋はあまり利用することがないだろうが、ここで売っている
端末をいじるのもいい。メールの読み書きができるほか(書くことはほとんどないだろうが)、前世占いなんてのもある。フォーラムにも立ち寄ってみよう。ただし、のぞけるのは【ネオフィリック】だけ。〔思想/哲学〕のフォーラムへ進もうとすると、「あなたの市民階級では利用できません」というメッセージが出てはじかれる。要するに、エリート以外は相手にしないってこと。このへんは芸が細かい。
さて、【ネオフィリック】だが、無駄な情報がいっぱいある中で、銀座が『宗教のメッカ』と呼ばれていることには注意しておこう。ここで、わかる人にだけわかるようなことを言うと、バール教団の支部が銀座にあるってことは、デビルバスター以外知らないはずなのだ(DB専用情報に掲載されている情報だから)。
〔通常情報〕というコーナーも必ずチェック。つい見逃してしまいがちだが、あとあとの展開を暗示する重要な情報が含まれている。どういうところと絡んでくるかということは、それぞれの場所で触れたいと思う。
ところでこの端末、キャラクタベースに見える。ハイテクシェルターにはそぐわないような気もする。だが、シェルター内で回線を増設するのは簡単なことではないので、限られた帯域幅を有効に利用するためにあえてそうしているのかもしれない。なお、衛星回線はもっと貴重なので、管理部やデビルバスターしか利用できないようである。
さて、西野の部屋に寄ってから詰所に行くと、第2部隊のメンバーがいる。事件もなく、実に暇そうだ。葛城に対して、彼らは気を遣ってまた慰めてくれる。山瀬だけは軽い皮肉を飛ばしてくるが。自室へ戻ると部屋の前で由宇香に会う。備品であるディスクや医療キットを運んでいたのだが、床に落としてバラバラに。拾って荷造りするのを手伝ってあげよう。だが、荷物を運ぼうとする由宇香の足取りはおぼつかない。重すぎるのだ。代わって運んであげるのが紳士的というもの。由宇香とともにB5Fの詰所へ向かう。試験に落ちた悔しさをかみしめながら……。
相変わらず暇を持て余し気味の第2部隊だが、そこへシェルター外に悪魔が出現したとの連絡。ラボからデータが送られてくる。どうやら楽勝らしい。由宇香はまだ実戦には早いということで、管理部との連絡係に。デビルバスターではない葛城は、もちろん詰所に残ることになる。
連絡係といっても、たいして仕事もなさそうな感じなので、緊迫した雰囲気ではない。由宇香が、飲み物でも入れようか、などと言ってくる。コーヒー、紅茶、緑茶の3種類が置いてある――はずだが、なぜか緑茶しかない。だが、由宇香はお茶を入れるのが得意なのだそうだ。お茶の用意をする由宇香の姿が初々しい。入れ立てのお茶がアルミの無骨なカップで出てくる。ほっと一息……。
そこに通信が入る。山瀬からだ。だが様子がおかしい。やたらとノイズが入る。しかも、途中で切れてしまった。どうやら、西野らの身に何か起こったらしい。由宇香は慌てて管理部に連絡するが、応援要請をなかなか受理してくれない。そこで、由宇香は必死で考えたあげく、ひとつのアイデアにたどり着いた。葛城の方に向き直り、様子を見に行ってくれと頼んでくる。ゲートを通るためのIDカードと通信機を手渡された。有無を言わさず、である。とはいえ葛城としても西野たちが危険な状況にあるとなれば放っておくわけにもいかない。1Fへ向かう。
B5Fからエレベータで直行したいところだが、エレベータは1Fに止まったまま。仕方なく階段で。途中で手元の通信機から由宇香と管理部の交信が聞こえてくる。ようやく応援要請が受理されたが、応援の到着までしばらく時間がかかるらしい。
1F。シェルターの隔壁扉の向こうから、電波が入ってきた。アームターミナルを破壊され、電波の出力が極端に落ちてしまっていたようだ。悪魔はラボのデータと異なる強力なものであったため、予想外の苦戦を強いられている。しかも、扉を開けるための入力板もやられてしまい、退却すらできなくなっているという。
ここで、葛城が取れる選択肢は2つ。ひとつは、外に向けて通信を試みること。もうひとつは、ひたすら様子をうかがうことだ。ふつうは通信する方を選ぶだろうから、そちらの方で話を進めていく。こちらからの通信は、かろうじて通じたようだ。西野によれば、扉は中からなら開けられるとのこと。そこで、西野の指示通りにコード(58147)を入力。すると扉が開いて全員無事に帰還。あとは応援部隊がなんとかしてくれるらしい。
詰所へ戻ると、西野が病院で手当を受けているというので、病院へ向かい、話を聞いてふたたび詰所へ。その日はそれで解散。しかし、自室で休息をとり、翌日にまた詰所に行ってみると、前日の活躍が認められ、葛城は特例合格で晴れてデビルバスターに。しかも第2部隊に配属である。
子供のころからの夢だったデビルバスターに、ようやくなることができた(第7章参照)。誰もが憧れる職業である。嬉しさもひとしおだ。だが、危険な任務が待っているであろうことは、西野らの例を挙げるまでもなく明らかだ。その晩、期待と不安を胸に、葛城は眠りについた。
ところで、ひたすら様子をうかがっていた場合、刻一刻と第2部隊が追いつめられていく様子が通信機に送られてくる。山瀬が腹を貫かれ、英美も重傷。まさか全滅……と思ったところで、背後から靴音が響いてきた。デビルバスター第1部隊の到着だ。彼らのおかげで、第2部隊は事なきを得た。
負傷者多数のため第2部隊は急遽非番に。山瀬と英美を見舞いに病院へ行く。ふたりとも眠っているが、命に別状はないという。なんと、ふたりとも今日一日安静にしていれば、明日にも仕事に復帰できるそうだ。高度に進歩した医療技術は、たいていの傷を一瞬で癒すことができるのだ。翌日、山瀬から脳天気な電話が入る。彼の部屋に行ってみると、特別に改造したというアームターミナルをくれる。使い方も説明してくれる。このあとの展開は、デビルバスターになれないままで、原宿シェルターからの通信を受けることになる。
次の日、早坂からの電話で起こされる。すぐに由宇香が部屋に入ってくる。迎えに来たのだ。初日から遅刻するわけにはいかない。慌てて準備して詰所へ向かう。だが、ちょっと早すぎたようだ。まだほかのメンバーは来ていない。ふたりだけで話をしていると、いいムードに。見つめ合うふたり。そのとき、背後で物音がした。振り返ると、山瀬がニヤニヤしながら立っている。ふたりの様子を見て楽しんでいたのだ。しばらくすると他のメンバーもやってくる。
まずは支給されたデビルバスターの装備に身を包む。次いで装備の説明を受ける。主にアームターミナルから操作できるソフトの説明である。まず、ANS(Auto-Navigation System)は、センサーによって周囲の状況を探知し、さらに衛星からリアルタイムで情報を受信。自分の位置やフロアの全体的な構造を把握できるようになっている。
だが、ここで疑問が。ひとつは、衛星からの電波がシェルターの奥まで届くのかということ。しかもシェルターには結界が張られているのだ。電波障害が発生してもおかしくない。もうひとつは、衛星の寿命である。大破壊後にロケットを打ち上げられるはずもないので、大破壊前から衛星がずっと動き続けていることになる。
ただ、これはそれほど不思議なことではないのかもしれない。「真・女神転生 I」からも明らかなように、メガテンでの199X年は、思いのほかハイテク化が進んでいる。プラズマソードやヤクトアーマーは、五島指令が開発を命じたものだ。そのテクノロジーがあれば、太陽電池で永久に動き続ける衛星が開発されていても不思議はないだろう。特殊な電波がシェルターの奥まで届くことも。
なお、余計なことだが、ANSで利用される衛星はおそらく全部で4機である。GPS(Global Positioning System)は、米国防総省が打ち上げた24個の衛星から送信される軌道と時刻の情報を地上で受信し、経緯度や高度を三角測量の要領で取得するシステムなのだが、実際には3機ではなく4機を利用しているらしい。また、誤差情報を補正してより正確な位置を特定するD-GPSなるものもある。ANSが利用しているのはこちらだと思われる。
さて、今の段階では最低レベルのANSしか使えないので、デビルバスター用に改良されたプログラムを英美から受け取らなくてはならない。詰所から英美の部屋へ。ソフトをインストールしてもらう。AMS(Auto-Mapping System)は、その名の通りオートマッピング機能を提供してくれる。そして、ANSも英美が徹夜で作り上げたスペシャルバージョンに仕上がっていて、ナビゲーション機能が格段に強化されるのだ。詰所へ戻ると(由宇香の部屋などに寄り道するとすぐに戻れる)、西野の命令で今度は早坂とともにバーチャルトレーナーへ。今度はB6Fにある少し小型の装置だ。
バーチャルトレーナーのすごいところは、そこで得た「経験」を現実の肉体にフィードバックできる点にある。LOW、MIDDLE、HIGHの3段階があり、今回は由宇香とともにレベルLOWでチャレンジ。クリアまたは全滅で終了。ボスはアースドラゴン(なお、バーチャダンジョンに出現する悪魔の種族は、すべて『悪魔』で統一されている)。トレーニングなので、ボスといってもパワーを押さえてあり、HPは高いが攻撃力は極めて低い。むしろボーナスキャラである。訓練が終了すると、詰所に戻って報告。
英美もやって来ていた。プログラムの専門家である英美と、コンピュータオタクの山瀬から、いろいろとレクチャーを受ける。DCS(Devil Communication Sytem)は悪魔との対話を可能にしてくれるシステム。これがないと悪魔とシンクロし、精神を乗っ取られる危険性があるのだ。そして、悪魔を仲魔にすることができたら、必要に応じて召喚することになる。それを可能にするのが、DDS(Digital Devil Summoner)である。
今のところDCSとDDSはインストールされていない。葛城がもっと訓練を積んでから、という。また、アームターミナルには生体マグネタイトを蓄積しておける『MAGバッテリー』が搭載されている(バッテリーの容量がほぼ無制限であるのは、ゲームバランスとの関係でリアリティを犠牲にしたのだろう)。これら全システムの原型は、大破壊前にスティーヴン博士によって作られ、世界各地でばらまかれたものだという。
ここで、ちょっと余談を。スティーヴン博士についてである。彼について触れないわけにはいかない。すべては彼が作った悪魔召喚プログラムから始まったのだから。まるで悪魔が現れることを予期していたかのようなその行動。時空を超えて彼はどこにでも現れる。生身の人間では決してあり得ないその正体は、まったくの謎に包まれている。だが、あえて推測してみよう。
悪魔召喚プログラムは、悪魔と対抗する手段を人間に持たせる目的で開発されたもの。成沢大輔氏は、スティーヴンは「過去の因縁よりも未来に関わる存在」だと言った。筆者は、「人間の、人間による未来を望む存在」だと思う。はっきり言おう。スティーヴンの正体は、人類が共有する理性そのものだ。すなわち、西洋的人間主義を象徴する。人間が自らの意志で未来を切り開こうとするとき、彼は現れる。科学者の姿は、理性の具現化と言える。その意味で、大自然の人格化した存在たる太上老君(彼は東洋的自然主義の象徴だ)とは異なる調和の担い手、ニュートラルの象徴なのである。
さて、プログラムの説明も一通り終わった。より詳しい情報は、自室の端末から入手できる。なお、この場で説明されなかったプログラムにDAS(Devil Analyzing System)があるが、これは悪魔の情報を解析して表示してくれるというもの。B6F、ファーム横の端末から入手可能だ。しかし、こうも頭文字が羅列されると混乱してしまう。くれぐれも間違わないように。というところで、この場は解散。
しかし、これからはイベントが立て続けに起こるので、それなりに準備をしておいた方がいい。まず、バーチャルトレーナーでもっとレベルを上げておくべきだ。由宇香がすでに来ていて、一緒にダンジョンに入ることになる。ただし、LOWしか利用できない。ここで戦闘にはしっかり慣れておこう。特に、狭いところでの戦い方が重要だ。
自室に戻ってもすぐに休まず、端末に向かおう。デビルバスター専用のネットに入れるようになっているので、新情報をかなり入手できる。レジスタンスの動きや、神田、渋谷などの情報が掲載されている。一通り終わってから休息。
翌日の朝、通信が入る。原宿シェルターに悪魔が進入、ゾンビウィルスが発生し、シェルターは潰滅状態にあるという。通信の主旨は初台シェルターに対する救援要請。だが、その要請文は途中でとぎれている。緊急事態だ。まずは西野に知らせなければ。だが、あいにく西野は不在。西野の妻陽子に連絡を頼み、詰所へ向かう。
早くも第2部隊のメンバーがそろっていた。英美の両親と由宇香の実の母親は原宿シェルターにいる。一刻も早く救援に向かいたいところだが、管理部の許可なしには出動できない。西野が状況を報告し、指示を仰ぐが、無情にも管理部は待機命令を出す。
だが、早坂は我慢できず命令を無視して部屋を飛び出す。追いかける英美。由宇香もついていく。そして、西野も部下たちを守るため、独断で行動する決心を固めた。しかし、山瀬は反対する。さて、葛城はどうするか。
ここでは救出に向かうことにする。1Fから地上へ。葛城にとって、生まれて初めての地上。そこは、建物や道路が無惨に倒れ、崩れている荒廃した世界だった(注:新国立劇場があるが、ここの竣工は'97年のこと。ということは、大破壊はそのあとか)。悪魔がそこかしこを徘徊し、原宿シェルターへの移動途中にも襲いかかってくる。だが、西野らがついているのでそれほど危険はない。
原宿シェルターの前まで来た。が、隔壁扉が開かない。メカに強い英美にもお手上げである。核爆発にも耐えうるシェルターだけに、扉を破壊することも不可能。交信もつながらない。英美によれば、電気系統が破壊されてしまった恐れがあるという。そうなると中の酸素がもつのかどうか心配だが、手の打ちようがない。管理部から通信が入り、帰還命令が出る。処理は第1部隊と技術班に任せ、撤収。管理部に出頭することに。
ちなみに、詰所に残ることもできる。この場合、原宿シェルター前の状況などは、山瀬と西野との通信のやりとりで知ることになる。当然出頭もない。山瀬が意外に真剣に西野らのことを心配している様子が微笑ましい。
管理部では由宇香の父である橘兼嗣が待っている。彼はデビルバスター隊の上官で、直接の上司である。いきなり、兼嗣は由宇香をひっぱたく。よろめく由宇香。駆け寄る葛城。兼嗣はその様子を見てさらに不機嫌に。怒りにまかせて隊員たちをなじる。しかも、早坂を見て「身分の低いやつが混じっているから……」などと言う。徹底した悪役である。上官に食ってかかろうとする早坂を押しとどめ、西野はすべて自分の責任だと言って謝る。ひたすら謝られてばつが悪くなった兼嗣は、第2部隊に謹慎を申し渡して去っていった。
管理部を出るとき、女の子連れの女性とすれ違う。ふたりは管理部に入っていく。関係者以外立入禁止のはずでは? 実は、女性は兼嗣の妻の橘可燐であり、女の子の方はその娘の美莉なのだ、ということを由宇香が教えてくれる。つまり、美莉は由宇香にとって腹違いの妹にあたる。兼嗣は、由宇香の母冬子と別れる前から可燐とつきあっていたのだという。由宇香は、そんな自分勝手な父親に反発して、家から飛び出したのだ。
ここで、面白いことに気づいた。兼嗣には子供が2人いる。由宇香と美莉だ。だが、シェルターのほかの地区では、2人以上の子供を持った家族は皆無である。西野でさえ、葛城を我が子同様に育てたとはいえ、実子は知多だけだ。これは、偶然だろうか。
おそらく、シェルターの人口事情と関係があるのではないか。ファームが頑張ってはいるものの、食料や水をはじめとして、シェルター内では物資は決して余るということはない。むしろ不足しないように、配給制を敷いている。となると、人口増加は憂慮すべき事態である(端末からの情報にも同趣旨のものがあった)。そこで、どこかの国の一人っ子政策みたいなことが必要になってくる。
2人目を生んだら罰金、というような生ぬるい手段ではとても対応できない。そもそも2人目が生まれないようにする、何らかの処置が施されている可能性が高い。遺伝子治療の技術が応用されているのではないかと推測される。
ただし、エリートだけは例外である。子供をたくさん養える「特権」をもっているのだ。すると、離婚・再婚も制限されないわけだ(再婚するたびに子供をもうけるのでは一人っ子政策の意味がなくなるので、なかなか離婚できない制度になっているはずだ)。それなら「不倫も文化である」と開き直るヤツが出てきてもおかしくない。エリート居住区の連中は贅沢な暮らしをしているだけでなく、そこの男どもは女性関係もルーズなのだろう。
そういうところが、由宇香には許せなかった。父に対する反発は、そのままエリート層全体に対する反発につながり、由宇香は一般居住区に住むことに決めたのである。
閑話休題。休息をとり、次の日に西野らの部屋に行く。謹慎中なのでみんな部屋にいる。謹慎の話はすでに知れ渡っていて、近所の女の子にまでからかわれる。
自室に戻ると、原宿シェルターから通信があり、メールが届く。「悪魔撃退プログラム」なるものの完成で戦況が逆転して悪魔を駆逐、ゾンビウィルス感染者も内部的に処分し、事態は鎮静化に向かっているという。そして、メールにはその「悪魔撃退プログラム」が添付されているとのこと。にわかには信じがたい話である。このメールをどう処理するかであとの展開が大きく変わる。
まず、管理部に連絡した場合。ラボのプロフェッショナルに任せるのがいちばん――だと思ったのだが、DDSの改良作業を進めているため、ラボの人手が足りないという。英美に解析を依頼するか、自分で解析するかして結果だけ報告せよとのこと。管理部は徹底して官僚的な組織として描かれているようだ。
次に、困ったことは隊長に……というわけで西野隊長に相談した場合。といっても、西野もソフトウェア関係に強いわけではない。なので西野は管理部に連絡するのみで、結局は英美に任せるか自分で解析するかのどちらかになる。
親友に相談してみよう、と早坂のところに持っていった場合。早坂がプログラムを預かり、解析することになる。以後の展開は、英美を早坂に置き換えたのとまったく同じになる。
というわけで、実はパターンは2つだけ。英美(または早坂)が解析するか、自分で解析するか、だ。ここでは英美に解析を依頼したことにして話を進めていこう。英美は、二つ返事で解析を引き受けてくれる。しばらく時間がかかるというので、日を改めてやってこよう。自室で休息。
次の日。異変が始まる。突然シェルター内の霊的磁場が上昇、悪霊系の悪魔がシェルター内に出現し始める。シェルター内に警戒態勢がしかれ、B6Fではデビルバスターたちが交替で見張りにあたっている。特定の場所を通過すると突然悪魔が出現したりするのだが、危険はほとんどない。
問題は英美の方だ。英美の様子がおかしくなっている。解析の経過を聞こうとすると、全然取り合ってくれない。次の日になっても、爛々と輝く目でコンピュータに向かい、一心不乱にキーボードを叩いている。かと思うと、翌日、今度はペッドに横たわったまま死んだように動かなくなった。これはただごとではない。早坂はかなり心配そうだ。西野らメンバー全員に話をすると、次の展開に進む。以後同じ。
さらに翌日。早坂の部屋に行くと、英美のことで相談を受ける。英美の指に血がこびりついていたこと、霊安室に血の痕があった話などを聞く。そこへ、B10Fで悪魔が出現したとの連絡が入る。B10Fはエリート居住区なので、結界の強度も高いはずなのだが……。謹慎中とはいえ、万一に備えて西野隊長の部屋に集まり、待機。しかし、英美は来ない。また連絡が入って、悪魔は第1部隊によって駆逐されたとのこと。解散となる。
早坂の部屋に戻ると、英美の部屋まで一緒に来てほしいと言われる。ここは断れないので一緒に英美の部屋へ。しかし、英美の姿はなかった。そこらへんの人に英美の行方を聞いて回ると、エレベータでB6Fへ行ったという。
B6F。食堂の前で英美に遭遇。DB専用食を10個も抱えている。DB専用食というのは、訓練や戦闘でたくさんカロリーを消費するデビルバスターに合わせて、栄養価とボリュームを増やした特別な食料セットのこと(ちなみに、『スペシャルサーモンのソテー』などが入っているらしい)。それが10個ともなると、大変な量となる。しかも、目つきが尋常ではない。早坂が話しかけるが、聞こうとはしない。ふたりを突き飛ばして英美は去っていく。早坂はあとを追う。
さて、これ以後はイベントの連続となり、自由行動はとれなくなる。つまり、今のうちに準備を済ませておかなければならない。まず、バーチャルトレーナーでレベルアップ。今度はひとりだが、その分たくさん経験値が入る。しかも、MIDDLE以上にも入れる。できればHIGHにチャレンジしたいところだが、魔法戦タイプでないと入れないとの噂もある。もちろん、一定のレベルも必要だ。
HIGHやMIDDLEともなれば、敵悪魔の攻撃も厳しくなってくる。こちらの装備も強力になってはいるのだが、いかんせんひとりである。一瞬の判断ミスが命取りにつながる。MIDDLEのボスがスカイドラゴン、HIGHのボスがファイアドラゴンである。いずれもHPは高いが攻撃力が低いので楽勝。
この時点でB8Fにも足を伸ばせるようになっている。武器庫で装備を更新し、弾薬を支給してもらおう。話を聞いて回ると、デビルバスターには第3部隊が存在することも判明する。第何部隊まであるんだろうか。
翌日。由宇香が部屋に入ってくる。由宇香の(腹違いの)妹である美莉がファームで変死体で発見されたという。全身の血がきれいに抜き取られて、しかも外傷がない、とは確かに変死だ。由宇香は、葛城に一緒に葬儀に参列してほしいと頼む。ひとりで行くのは不安だという。
これは断れないので、葬儀場へ。B10F、例のエリート専用居住区だ。ちなみに、エリートとは市民階級A以上を指す。大破壊を予見してシェルターに逃げ込んだ「地位のある人々」というのは基本的には彼らのことだ。彼らとその家族のみならず、彼らから何らかの形で大破壊の情報を伝え聞いた一般の人々がこぞってシェルターにやってきたことが、市民階級成立の原因である。
葬儀場では、橘兼嗣に帰れと言われてしまう。西野からも兼嗣の言葉に従っておくよう諭される。その後、継母の可燐が出てくるのだが、彼女は追い打ちをかけるように由宇香に対してつらくあたる。あなたには関係ないことだ、今日という日をかき回されたくない、など。由宇香にとって、(継母とはいえ)親からのこの言葉はショックだろう。
やむなく引き返す。葛城の部屋へ。すると、ふたたび早坂から相談を受ける。英美は正気を取り戻したようなのだが、靴に土が付着していたという。シェルター内に土があるところといえばファームしかない。英美が橘美莉殺しの犯人なのか……。だが、英美にはここ数日の記憶がほとんどないそうだ。メールに添付されたデータの解凍作業を始めたところで意識を失い、気づいたら今日だったという。
この話を聞いて、由宇香がデジタル・デビル・メール(DDM)の存在を指摘する。もともとこれは、シェルター間で悪魔の召喚データをやりとりするために人間が開発したものなのだが、悪魔に悪用されてしまったらしい。おそらく、召喚プログラムとデータの両方が添付され、解凍と同時に自動的に召喚プログラムが実行されたのだろう。だが、出現した悪魔は生体マグネタイトをいっさい保有していないので、実体化することはできない。近くの人間に憑依してその人間を操るのだ。英美はその犠牲になったというわけ。コンピュータシステムの盲点をついた攻撃である。この方法なら、誰にも怪しまれることなく邪魔な結界を乗り越えることができる。
小康状態を保っているとはいえ、英美の身体から悪魔が退去したわけではない。いつまた操られて動き出すかわからない。対策を講じなければ。ここはやはり隊長に相談だ。だが、西野からは、重大な会議に出席しなければならないので、手短にやってくれと言われる。たぶん、異常な霊的磁場の上昇という問題をどうするか話し合おうというのだろう。本当はそれどころじゃないのだが。
由宇香を残し、西野の部屋で西野と山瀬を交えて作戦会議が行われる。山瀬の推理によって、英美が殺人犯ではないとわかる。英美に憑依した悪魔は催眠術だか妖術だかで美莉を人気のないファームまで連れ出し、そこで英美の体から抜け出して美莉を殺した。だから、美莉の死体には外傷がなかった。英美が直接手をかけたわけではない。悪魔の目的は、生体マグネタイトを獲得すること。実体化を目論んでいるのだ。
会議後、自室に戻ろうとすると、由宇香のことが気になる、などとメッセージが出てくるので由宇香の部屋に行ってみる。そこでなんとラブシーン。ふたりで一夜を過ごすことに。詳細は自粛。かなり強引な展開に思えるが……。一言だけ付け加えておくと、紳士的な(?)態度をとらないと、気まずい雰囲気になって、起こるはずのイベントが起こらなくなる。そのことがあとあとに影響するので気をつけてほしい。属性がDARKに傾くという情報もある。
翌日は詰所で作戦決行。山瀬と由宇香は参加せず。由宇香はともかく、山瀬は……? 作戦というのは、悪魔を挑発し、体外へとおびき寄せるというものだ。プライドの高い高位の悪魔ほど、この手に乗ってきやすい。しかし、周囲の人間にはかなりの危険が伴う。相手が実体化できた場合、その悪魔と戦わなければならないし、そうでなくても、ふたたび別の人間に憑依される恐れがあるからだ。
英美を詰所に呼び出し、扉をロックする。英美の目の前には武装したデビルバスターたちの姿がある。英美(に憑依した悪魔)はいつもと様子が違うことに気づいたようだ。西野が語り始めた。御茶ノ水シェルターに送ったDDMは回収した、お前の収穫は小さな女の子の生体マグネタイトだけだ、などと言って挑発する。英美の身体がそのたびにビクっ、と反応する。そして、英美の身体が痙攣をはじめ、無理な姿勢で反り返り、口が上を向けて開く。まるで操り人形のようだ。目は焦点が定まらず、虚空を見つめている。しだいに、口から白い煙のような、ねっとりとした質感をもったものが螺旋を描いて立ちのぼり……。
英美に憑依していた悪魔が姿を現した。英美はその場に崩れ落ちる。敵はすでに実体化できるだけの生体マグネタイトを入手していた。西野は、それが相当高位の悪魔であると直感する。悪魔の名は、ムールムールという。
ムールムールは、悪魔学ではソロモン王によって封印された72柱の魔神の1人とされ、元は座天使だったが、現在では魔界で大公爵兼伯爵の地位にある。グリフィンに乗った、緑の鎧を身につけた戦士の姿をしているとされる。ハスキーで耳障りな声で話し、哲学についての知識が豊富。また、
確かに高位の悪魔だ。訓練されたデビルバスターたちと比べても、あまりにも力の差がありすぎる。ニヤニヤ笑っているムールムールに対して、葛城たちの攻撃は傷ひとつつけることができない。ムールムールはふたたび気体化し、扉をすり抜けて去っていった。その前に奴は、意味ありげなメッセージを残していった。ひとつは、労働キャンプのこと。そして、もうひとつは西野のことである。ムールムールは、まるで西野の背後に誰かいるかのようにつぶいたのだ。いったい何を「見た」のだろうか……(第10章参照)。
さて、次の展開に進む前に、メールを自分で解凍した場合の展開について触れておこう。ここでは、英美(もしくは早坂)の身に起こったことを自分で経験することになる。
添付されていたのは、MURMUR.BINというファイルだった。1.5ギガバイトもある巨大なものだ。解凍されたデータが画面に表示されたとたん、葛城の体に言いようのない悪寒が走り、意識を失う。次の場面では、朦朧とする意識の中、御茶ノ水シェルターにメールを送りつけていた。自分の意思を離れて、身体だけが勝手にキーボードを打ち続けている。今度は、AIM.BIN(1.2ギガバイト)というファイルが添付されている。ふたたび昏睡状態に。
頬に冷たい感触を感じて目を開けると、そこは床の上だった。内蔵のすべてが腐敗したかのように熱く、体が重い。嘔吐感も酷い。なんとか起きあがって端末を見てみると、悪魔データとおぼしきものを御茶ノ水シェルターに送ったログがある。夢ではなかったのだ……。ベッドに倒れ込む。とにかく安らかな眠りが欲しい。
深夜の霊安室。気づくと葛城はそこにいた(MAGが0になっていることに注意)。誰もいない、静まり返った部屋で葛城は何をしていたのか。指先に激痛を感じる。見ると、爪は折れ、根元は裂け、酷い状態だ。そして、目の前にある死体安置BOXを見て、葛城は愕然とした。そこには、血の筋が幾本もこびりついていた。素手で開けられるはずもない電子制御された扉を、掻きむしっていたのである。葛城は、恐ろしくなって自室へ戻った(このときMAGがいくらか回復していることに注意)。
異常なまでの虚脱感を感じる。葛城は、深遠なる眠りへと誘われた……。早坂から電話がかかってくる。だが、全身が石になったかのように重く、声を発することもできない。西野からも、英美からも通信が入る。
由宇香が葛城を揺さぶって起こす。由宇香は、葛城の手を見て驚き、医療キットを取りに行く。葛城は、猛烈な空腹感を覚えた。起きあがると、自然と体が動き出す。B6Fの食堂でDB専用食10個を注文し、食堂を出たところで早坂と英美に会う。だが、今の葛城には、彼らが心配してかけてくれる言葉すべてが、不快で偽善めいて感じられる。ふたりを突き飛ばして自室に戻る。
濁った瞳、こけた頬。床に座り込んで食べ物を貪り食うその姿に、かつての葛城の面影はなかった。だが、そんな葛城に対してさえ、由宇香は優しく傷の手当をしてやるのだった。ところが、葛城の心にわき上がってくるものは、劣情と血への欲求。その瞳は、まさにケダモノのそれと化していた。由宇香もそれに気づき、「貴方は葛城くんじゃない!」と言って、怯えて去っていった。ふたたび睡魔に襲われる。
翌日。久々に体調が回復している。端末に向かいながら今までのことを振り返る。パスワードの「ZOWY-THE-KITTY(子猫のゾウイ)」は、葛城しか知らないはずだが、何者かが葛城を操ってメールを送らせたのだ。葛城は、以前山瀬から聞いたDDMのことを思い出した。そして、自分が絶望的な状況にあることに気づく。悪魔に憑依されたのだ。
そこに由宇香がやってきて、美莉の死を告げる。早坂も来る。由宇香は、葛城の靴にこびりついた土に気づく。美莉はファームで殺されたという。シェルター内で土が付着する場所といえば、ファームしかない。葛城は、自分の人生が音を立てて崩れていくのを感じながら、絶望的な思いで今までの出来事を語り始めた。
早坂は西野と対策を練るため出ていった。だが、由宇香は残った。そのまなざしは、深い悲しみに縁取られながらも、あくまで愛に満ちた優しいものだった。ふたりは、絶望的な状況の中で、お互いの愛を知ってしまった。あなたを憎むことがどうしてもできない、と由宇香は言う。見つめ合うふたり。まるで時が止まったかのようだ。
早坂から通信が入る。明日の朝、迎えに来るという。由宇香は、葛城と一緒にいさせてほしいと言ってしがみついてきた。ここでラブシーン。次の日、由宇香を部屋に残して、早坂と詰所へ。葛城は観念していた。ここで殺されるのが運命なのだ。もう思い残すこともないだろう。目の前には、見慣れた仲間たちの姿が。みな重武装して、緊張した面もちでいる。背後で扉がロックされる音が聞こえた。そして、西野が口を開いた……。
――書いてる自分が恥ずかしくなってきた。だが、ゲーム中に出てくる表現を交えて書くとこうなってしまうのだからしょうがない。どういうわけだかやたら芝居がかっている。たぶんシナリオライターの人がノリノリで書いたんだろう。なお、ここから先の展開は同じである。
ところで、「ZOWY-THE-KITTY」のゾウイ君だが、これは葛城が幼いころ両親に買ってもらった、小さなロボット猫の名前である。このゾウイ君はずっとあと、思いがけないところで登場するので覚えておこう(第7章参照)。
山瀬と由宇香が詰所に来て、レクリエーション施設と居住区に悪魔が出現し始めたことを告げる。無論、ムールムールの仕業だ。だが、管理部に連絡しようとすると、通信機構が停止している。管制コンピュータ室から停止命令が出ているという。ここにも異変が起こったらしい。だが、まずは住民の安全確保が最優先。B7Fへ。住民をとりあえず部屋に避難させる。それぞれの部屋はロックされ、結界が作動する。
病院などはパニック寸前である。西野の部屋では、陽子と知多が不安そうだ。下の階の状況も確認しなければならない。しかし、階段の前で英美はさらなる異変に気づいた。ドアの網膜キーが変更されているのだ。エレベータも同様だ。これでは下の階に行くことができない。そのとき病院から悲鳴が!
急いで戻ると、看護婦が震えている。霊安室に安置されていたはずの美莉の遺体がなくなっているという。しかも、床には足跡が続いている。話を聞くうちに西野は状況を把握した。西野によれば、ZMV(Zombie Making Virusの略か?)なるウィルスが関係しているとのこと。これに感染したものは数時間後に死亡し、ゾンビと化して周りの生者に襲いかかる。喰われた人間もまたゾンビになる。まさに映画『バタリアン』の世界。
美莉はZMVに感染しており(ムールムールの仕業だ)、ゾンビになって霊安室からさまよい出た。生前の記憶が残っていたため自分の家に帰る。それを見た両親は、ゾンビと知りつつも匿ってしまう。しかし、デビルバスターに見つかれば美莉はふたたび殺されてしまうだろう。そこで、橘兼嗣は我が子かわいさのあまり、周りが犠牲になるのを承知で、通信機構を停止させ、網膜キーを変更したのだ。だが、それこそムールムールの思う壺である。気づいたときには、ウィルスは手のつけようがないほど広範囲に伝染してしまっている。
もはや一刻の猶予もならなくなった。西野は決断を下す。まず、山瀬を付けて住民はすべてファームへ移動。事態が沈静化するまでは誰が来ても開けるなと山瀬に厳命しておく。残ったメンバーで扉を物理的に破壊・溶接しながらのクリーン化作戦が開始される。これは、各階に潜む悪魔をすべて掃討し、出入り口を塞いだうえで、下の階に進むというもの。1階ずつ確実にクリーン化されていくわけだ。まだ悪魔がシェルター内で実体化できていない今のうちに、片をつけなければならない。
ほかのメンバーが溶接作業を行っている間、葛城と由宇香は、B6FにあるB10Fへの直通エレベータの見張りを命令される。しばらくは何も起こらないが、そのうちにエレベータが上昇してくる音が聞こえてきた。それはB6Fで止まり、ドアが開く。中から出てきたのは、喰いちぎられた可燐の腕を抱えた、美莉のゾンビであった。ショックで由宇香は気絶してしまう。
応援が駆けつけ、仲間に美莉を任せて、葛城は由宇香を病院へ運ぶ。ベッドに寝かせ、入り口まで戻ると、西野たちが戻ってくる。彼らは何も言わないが、美莉は斃されたのだろう。幼い女の子とはいえ、ゾンビになってしまえば一介の悪魔にすぎない。情け容赦なく斃してしまう方が、美莉の魂も成仏できるというものだ。
英美に治療してもらったあと(英美は医術の心得もある)、葛城は早坂とともに食料の調達を命じられる。B6Fの食料庫へ。ここには早坂の父親がいたはずだったが、今はもちろんいない。無事だろうか……。戻ってくると、由宇香も回復していて、英美の傷の手当をしている。山瀬からの通信で、みんな無事にファームに避難できたことがわかる。陽子や知多、それに早坂の両親もである。食事をとりながらのつかの間の休憩。
作戦続行。B8Fへ。この間、悪魔どもと戦わなければならない。中でも悪霊スタンパーは、実体がないだけに戦いづらく、やっかいだ。0距離になると姿が見えなくなってしまう。その点では外道スライムも同じだが、セラミックブレードを落としてくれるので、むしろスライムは狙い目だ。これを入手できると、以後の戦闘はずっと楽になる。
B8F。やけに静かである。悪魔の姿もない。早坂と英美は溶接に向かい、葛城たちは武器庫へ。ふたりが戻ってくると、全員で装備を調える。だが、部屋を出ると、そこはすでにゾンビの巣と化していた。すでに手遅れだった。死体がゾンビ化する短時間の間に運良く行動できていたにすぎなかったのだ。この階の人間はすべてゾンビになってしまったのか?
生き残りの人がいないか探さなければならない。まずはゾンビどもを一掃。一カ所だけロックされた部屋がある。入隊試験のときに待合室として使った会議室だ。銃でロックを壊して中に入ると、学者が1人隠れていた。だが、そのままファームに連れていくわけにはいかない。ZMVに感染していないか検査するため病院へ向かう。
B7Fへ戻ってくると、さらに異常が発生していた。肉体を持った悪魔が出現し始めたのだ。それは、結界が破れたことを意味する。ファームが危ない。通信を試みるが、つながらない。良くない兆候だ。急いでファームへ向かう。
ファームの扉を開ける。おかしい。扉はロックされているはずではなかったか。連れてきた学者が、助かったと勘違いして、西野の制止を振り切って奥へと駆け出していく。だが、その学者の悲鳴が。奥へ進むと、そこは阿鼻叫喚の巷と化していた。次々に悪魔に憑依され、人が人を喰らう凄絶な光景。呻きとけたたましい笑い声がこだまする。山瀬は? だが彼の姿は見あたらない。
次々にゾンビが襲ってくる。それだけではない。下魔インプや邪鬼オークなど、実体化した悪魔も混じっている。そして……。最後に葛城たちが見たものは、変わり果てた陽子と知多の姿だった。ふたりは抱き合った姿のまま、ゾンビと化していたのだ(魔人母子合体悪魔人)。早坂の絶叫が響く。だが、西野は心を鬼にする。意を決しての戦闘。ゾンビにしては強く、子守歌やデスタッチなどの特殊能力を持つ。斃すと、ダイアモンドを落とす。元は指輪についていたものか、それともネックレスだったのか。
戦いを終えると、管理部から助けを呼ぶ橘兼嗣の声。扉の外に強力な霊体反応があるという。切羽詰まった様子。網膜キーは元に戻したとのこと。自分だけは安全なところに避難しておいて、周りの人間を平気で犠牲にする唾棄すべき輩だが、そんな奴でも命は命。自分たちの上官でもあり、なによりも由宇香の父親なのだ。見捨てるわけにもいかない。
B9F。管理部はもっとも強力な結界に守られていたはずだった――が、中ではすでに兼嗣が殺され、血の海ができていた。駆け寄る由宇香。しかし、突如として現れたムールムールに由宇香は捕らえられてしまう。
放せと言って放してくれる相手ではない。力ずくでなんとかするしかない。戦闘となる。だが、先刻と同じく、まったく相手にならない。今度はムールムールも攻撃を仕掛けてくる。一撃でメンバーがバタバタと倒れていく。ネクロマンシーの達人らしく、死の吸引、ムド、ネクロマンなど多彩な技を操る。手も足も出ないまま全滅。
身動きのとれない葛城たちの前に、大物悪魔たちが次々と姿を現す。彼らは、バエル様はどういうおつもりなのか……こんな小娘があの……などと謎めいた会話を交わす。そして、悪魔たちの手により、由宇香はその身体を引き裂かれ、喰われてしまう。メガテン恒例、掟破りのイベントだ。いきなりヒロインが殺されてしまった。
だが、実に奇妙なことに、分断された肢体はなお同化されず生き残っているようだ。しかも、肉体を取り込んだ悪魔たちはパワーアップを果たしている。いったいどうなっているのだろうか。満足した悪魔たちは次々に去り、ムールムールも、バエル様のもとへこれを届けねば、と言って残された頭部を持ち去る。悪魔の首領の名はバエル。葛城の脳裏にしっかりと刻み込まれた。
去る間際、ムールムールはあるゲームを始める。駒は、人間という下等生物。つまり、葛城たちのことだ。まず、ゲームを面白くするため、ムールムールは葛城たちを全快させる。次に、シェルター内に毒ガスを撒く。これは遅効性の毒で、吸い込むたびにじわじわと体力を奪っていく。力尽きる前にシェルターを脱出できなければ、ゲームオーバーというわけだ。ムールムールの目論見は、ほかにもある。いちばん生きのいい人間(つまり脱出できた人間ということだが)を、労働キャンプを治めるダンタリオンに引き渡すつもりなのだ。
さあ、生き残りをかけたゲームの始まりだ。ニュートンに備え付けてある酸素マスクでは短時間しかもたない。皮膚から吸収される毒ガスは防げないからだ。対化学戦スーツが必要である。スーツが置いてあるのは、B5Fの詰所近くの部屋と、このB9Fの予備の部屋だ。万一の場合、管理部のエリートたちだけは生き残れるように、ということだったらしいが、皮肉なことに、そのエリートたちはみんな死んでしまった。
やっとの思いで部屋にたどり着く。だが、ケースは5つあるのになぜかスーツは3着しかない。他はもっていかれた跡がある。これもムールムール仕業なのか? これで、ニュートンを除く4人(西野、早坂、英美、葛城)のうち、少なくとも誰か1人は助からないことになった(ニュートンは機械の体なので大丈夫)。葛城以外の3人は、それぞれ自分が残ると主張する。特に西野は、お前だけは死なせるわけにはいかない、と葛城に言う。西野は葛城の父に命を救われた。その忘れ形見を見殺しにはできない。そして、西野にとって葛城は息子も同然。知多を失った今、もうひとりの息子まで失うわけにはいかないのだ。さて、どうすればいいのか。ここでの選択が以後の展開と属性に影響する。
まず、自分が犠牲になろうとした場合。大切な仲間を犠牲にするわけにはいかない、愛する由宇香を失い、生きる意味もなくなった、といったところか。葛城は仲間の制止を振り切って部屋を飛び出す。英美は、ニュートンに葛城のあとを追うように言う。向かったところは、由宇香が殺された部屋。血まみれになった床が生々しい。毒ガスのせいで意識が朦朧としてきた。力無く床にくずおれる。ニュートンが何かをくわえて来て、葛城に渡す。それは、由宇香のペンダントだった。唯一の形見だ。だが、葛城ももうすぐ同じ場所に行けそうだ……。
シーンが変わる。そこは、
奥へ進むと、悪魔も徘徊している。NPCと間違えないように。レベルアップしない限りMPを回復できない(HPは泉で回復可能)ので、MPの残量には気をつけよう。とにかくやられたらそれまでだから、接近戦に持ち込むよりも、銃か魔法に頼るのが安全だ。最深部で
意識を回復すると、異能者に覚醒。死の淵から蘇ったことがきっかけとなったのだろう。射撃、魔道、コンピュータのいずれかの技能が身につく。それまでの行動に影響されるようで、銃をよく使っていると射撃技能を、魔法をよく使っていると魔道技能を修得できるらしい。
死と再生。実は、これこそが偽典を貫く大きなテーマである。因果律に導かれ、生まれ変わりを繰り返し、新たな自分を見いだすこと。それが葛城の宿命であり、ここで覚醒したのも偶然ではない。過去世の因縁がそうさせたのだ。
話を戻そう。毒ガスはまだ残留している。ぐずぐずしているとどんどん体力を失っていくが、対科学戦スーツなしでも行動に支障はなさそうだ。ニュートンは葛城のそばから離れていなかった。葛城が部屋を出ようとすると、ニュートンはメインコンピュータに向かって吠える。プログラムを入手していけというのか。まるで、人の心がすべてわかっているみたいだ。不思議な犬である。
DCS Ver1.0とDAS Ver1.0を入手する――のだが、このDASはDDSの間違いだろう。これ以後、悪魔と会話し、仲間にし、召還できるようになるのだが、これ以前にDDSは入手していなかったのだから、インストールできるのはここしかないはずなのだ。
ふたり(?)でシェルターを脱出することに。B5Fのゲートを通る前に、B8Fの武器庫とB6Fの食料庫に立ち寄る必要がある。そして、ゲートにいるガードロボットであるが、本来ならIDを照合すれば通してくれるはずだが、壊れていて、有無を言わさず襲いかかってくる(マシンゲートロボット)。だが、電撃に弱いのはロボット系の常。マハジオストーンがあれば楽勝だ。まあ、弱いので剣だけでも十分だが。1Fへ。地上へ脱出。しかしあてがあるわけでもなく、不安は募る。隔壁扉を開ける瞬間、葛城の胸に去来するものは……?
さて、自分だけは絶対に助かろうとした場合。言い争う3人を尻目にさっさとスーツを着始める。西野の言葉に素直に従ったと言えなくもないが、本当は、西野らの自己犠牲の精神を偽善としか思えなかったのでは? この場合、犠牲になるのは西野である。西野は部屋を飛び出していく。ニュートンと早坂があとを追うが、早坂は西野を見失い、戻ってくる。葛城、早坂、英美の3人で脱出。
対化学戦スーツのおかげで、移動中ダメージを受けることはない。管理部に行ってみるが、西野はいない。プログラムを入手。落ちていたペンダントも拾う。同じ階にターミナルがあるので、セーブするのを忘れずに。回復ポイントで香を焚いてみるのもいい。武器庫で装備を調え、食料庫で食料を調達したら、B5Fのガードロボットを撃破して、1Fへ。毒ガスの濃度もかなり低下してきた。もはやスーツは必要なさそうだ。スーツを脱ぎ捨て、地上へ。西野はどうなったのだろうか……?
初台シェルターのストーリーはここまで。この先は次回。
ここで、ちょっとばかり補足を。まず、なぜ『初台』シェルターなのかということ。それ以外の場所ではなく、なぜここなのだろうか。この謎、たぶんわからない人にはまったくわからないだろう。
答え。アスキーの本社が初台にあるから。'93年夏に南青山から初台に引っ越したのだ。本社のある場所をスタートに選ぶとは、やはり思い入れがあったのか。
あと、個人的な感想を少し。筆者としては、この初台シェルターのイベントをいちばん気に入っている。というのは、運命に翻弄される無力な人間、という感じが良く出ているから。物語はこうでなくては。主人公が強すぎては面白くない。
それに、未知の部分がたくさんあるのも、ワクワクさせてくれる。といっても、ただ謎を示せばいいというものでもない。伏線やヒントをちゃんと残しておいてくれなければ。想像力を働かせて、あれこれ推測するのが楽しいのだから。この点偽典は全体的に良くできているが、中でも初台シェルターのイベントは光っている。
ただ、ちょっと情報を詰め込みすぎたかもしれない。最初だけに、制作スタッフの人たちも気合いが入っていたんだろうけど。おかげで、このページが異様に膨れ上がってしまった――って人のせいにしちゃいけないが。