第4章 狂気の街東京


疑惑

強制労働キャンプを脱出し、代々木公園駅から地上へ。ようやく都庁に戻ってこれた。悪魔の襲撃を受けた都庁がどうなっているか心配だったが、中の様子は以前と変わっていない。悪魔に占拠されたわけではなさそうだ。だが、ほっとしたのもつかの間、ペンタグランマの連中がやってきて、葛城たちを取り囲む。そして、一行は渡邊のもとへ連行されてしまう。

渡邊は、いつになく険しい表情で葛城たちをにらんでいる。いったいどうしたというのだろう。葛城と園田がそう思ったとき、渡邊が口を開いた。彼が語った内容は、恐るべきものだった。葛城たちは悪魔側のスパイであり、先の都庁襲撃は葛城たちと示し合わせたうえで行われたもの。しかも、渡邊の暗殺まで企てていたというのだ。

捕虜にした悪魔がそう証言したらしいのだが、根も葉もないデタラメである。そんな嘘っぱちを、どうして渡邊は信じたのだろう。やはりデビルバスターは信用していなかったのか――いろんな思いが脳裏をよぎるが、今はとにかくこの誤解を解かなければならない。

だが、渡邊はとりあってくれない。それどころか、葛城と園田を明日処刑すると言い渡す。ふたりは、牢獄代わりの詰所(B1F)に連れて行かれ、そこに監禁されてしまう。泪は、渡邊自身が尋問するということで、その場に残された。

あまりにも一方的な処刑宣告。死ぬような思いをして、ようやく帰ってきたらこの仕打ちである。どうにかしてここから脱出しないと、明日殺されてしまう。が、外側からロックされたドアはビクともしない。大声で騒いでも反応はないし、ほかに脱出できそうな個所もない。労働キャンプに逆戻りしたかのようだ。園田は半ば自暴自棄に陥っている。

そのとき、そっとドアが開き、猫娘をはじめ見知ったレジスタンスのメンバーたちが入ってきた。彼らは、声をひそめて話し始める。渡邊はあの襲撃以来すっかり人が変わってしまった。そのことに不満を抱くメンバーは少なくないが、彼らとしても恩のある渡邊を裏切れないので、やむなく従っているというのである。彼らは葛城たちのこともわかってくれていて、バエルを斃したおまえたちが悪魔の側につくはずがない、という。

マッドサイエンティストみたいな男から薬を渡され、飲むと全快する。ひそかに葛城たちを逃がしてくれるつもりなのだ。猫娘は泪も連れてきていた。あなたたちが逃げたら、この娘がどんな目に遭わされるかわからないから、といって。いま、この部屋のあたりから人を遠ざけているという。彼らに礼を言って別れを告げ、一行は外へ向かって駆け出す。用意してくれたジープで都庁を脱出。

さて、これからどうしようか。迷っていると、泪が、原宿シェルターへ行こうと言い出す。あそこはムールムールにやられて悪魔の巣窟になっているはずだが……。しかし、今はアドニスが支配しており、悪魔はそれほど現れないらしい(じゃあ、奴は代々木労働キャンプには何をしに来ていたのだろう?)。他に行くあてもないので、原宿シェルターへ。

アドニスの園

以前やって来たときは隔壁扉を開けることができなかったが、今回はすんなり入れる(1F)。入り口付近にターミナル回線とリンクした端末があるので、セーブしておこう。代々木労働キャンプの地下牢以来である。ゲームバランスを考えると、序盤はもうちょっとセーブポイントがあってもいいと思う。DOS修正版およびWindows版では、セーブのみならず休息も可能。MPを回復できるのでありがたい。逆に、DOS初期版ではレベルアップしないかぎりMPが回復できず、苦しい戦いを強いられる。自信がなければクリアを最優先するのが無難だ。

ちなみに、園田か泪が瀕死の状態でシェルターを出ようとすると、ひとりの少女が現れる。彼女はアドニスを倒してほしいと葛城たちに頼み、アドニスが持つ秘薬を差し出す。小瓶に入ったその液体は、瀕死者をも全快させる強力なものだった。彼女の話では、ほかの人たちはアドニスに薬を飲まされていいなりになってしまったが、自分は飲まなかったのだとか。そして、葛城たちが来たのに気づき、ずっと見ていたというのである。といっても、彼女もふくめて、いまこのシェルターにいる人々は、よそから連れてこられたのだろうが。

攻略を開始しよう。B5Fまではエレベータで直行するのがいい。階段で下りても余計な戦闘を増やすだけだからだ。屍鬼や悪霊、つまりシェルターの住人たちのなれの果てが、成仏できずに徘徊しているのである。なお、シェルター内のエレベータは、ここ以外すべて壊れていて、機能していない。

B5F。本格的な探索はここから始まる。まずは、邪鬼バーベガジと悪霊エンティティーを蹴散らす。泉があって体力の回復が可能だが、番人に金を要求される。葛城のレベル×50マッカと決して安くはないが、ほかに回復手段がなければ背に腹は代えられない。固定悪魔の傀儡ボーンゴーレムどもを撃破し、大広間に出ると、屍鬼マミーデッドと妖精マベルの大群がひしめいている。こいつらを片づけ、下り階段へ。

奥には階段が2つあるが、エレベータに近い側の階段が正解。しかし、間違った階段のほうも居住区につながっていて、住民が残したアイテムを拾える。なので、まわって損はない。ただ、原宿シェルターはかなり広い。初台では、原宿シェルターは初台よりも大きいという話を聞けたが、その大きさを体感できる。しかも、ANSがないのでナビゲーションも効かない。この状況で、悪魔と戦いながらアイテムを探索するのはちょっとつらい。そこで、まずは正しいルートでB6Fに下り、端末からAMSデータを入手しておこう。

居住区は、B6F〜B8F。あちこちの部屋にアイテムが転がっている。ハイパー軍手、職人の香、反魂香など。また、B6Fにはファームらしき場所があり、少女がふたり。すっかり怯えているが、アドニスに洗脳されており、助け出そうとしても拒否されてしまう。

アイテムを集め終わったら、正しいルートへ戻ろう。内部の構造はなかなか複雑である。道をひとつでも誤ると同じところをグルグル回らされるハメに。マップがあるとはいえ、慎重に進もう。B6Fには回復ポイントがある。また、リジェネレイト7を3個も入手できる。B7F。フルフェイスがある。一度B6Fへ上がって、またB7F。AK47が手に入る。固定悪魔として、バエル信者タランテラが出現。アドニスに洗脳された若者がふたりいる。ひとりがアドニスに侵入を知らせようとするので、泪が実力行使に出る。「私たちの用が済むまでお利口にしてないと、酷い目に遭うわよ!」といって(笑)。

B8F。ふたたび端末が見つかり、ここでセーブできる。また、嫌みなセリフをしゃべる男の子がいる。やはり洗脳されており、葛城たちをアドニスの新しい使用人だと勘違いする。なんでも、アドニスは明るい髪の色が好きで、美しいもの以外は嫌いなんだとか。ただし、使用人だけは別だという。

B9Fでは、邪教の館が初登場。最初にかぎり、館の主がいろいろと説明してくれる。まだこの段階では強力な仲魔は作れないだろうが、話だけは聞いておこう。ここにも洗脳された若者がいて、彼の話によると、アドニスはバエルの唯一の後継者を自称しているらしい。

このあたりから、出現する悪魔に一定の傾向が見られるようになる。樹精ブルーベル、樹精ドリアード、樹精ジプシーローズ、妖魔プシュケ、水妖ニンフ……。妖精・女魔系の悪魔ばかりである。要するに、アドニス好みの美形をそろえているわけだ。洗脳された人間たちも美少年・美少女ばかり。まさにお約束通りである。洗脳された連中は、葛城たちのことを、まるで醜いものでも見るような目つきで眺める。そんな態度を繰り返されると、このままここで朽ち果ててしまえという気分になってくるが……。

B9Fから一度B8Fへ上がる。そこにも男の子がいる。またB9Fへ。固定悪魔として、降天使ヴォラクが出現する。B10Fが最下層だ。階段から少し歩くと、龍王メリジェーヌと戦闘になる。ここは、アドニスとその直属の悪魔どもの住処なのだ。

洗脳を免れた青年がひとり。特異体質で薬が効かなかったのだとか。アドニスを倒してくれと頼まれる。今日はどこにも出ていないはずだから、と。固定悪魔として妖精エルフが出現する部屋があるが、そこを通るのが正しいルート。目指すは、一番奥の部屋だ。部屋の前には夜魔リリムがいて、これを撃破しなければならない。

部屋に入ると、そこは豪奢に飾られていた。玉座に座ったアドニスは、美少年たちをはべらせ、ひとり悦に入っている。ここはアドニスにとっての楽園なのだ。こいつを追っ払えば、体を休める場所くらいは確保できるかもしれない。

例によってアドニスは自信たっぷりだ。「私のハーレムを汚い足で踏み荒らし、優雅な時間を台無しにした罪は重い」。甲高い声が響く。顔にセリフが似合っていない。ちなみに、葛城が代々木でイニシエーションを受けていた場合、「君のことを信じていたのに、戦わないといけないとは残念だ」などという。いずれにしても戦闘になるわけだが、やはり弱い。わずかながら腕を上げてはいるものの、こちらははるかに強くなっているのだから話にならない。強いていえば、怖いのはジオンガくらいだろうか。

アドニスを撃破すると、また逃げる。この借りは必ず返してやる、と捨てぜりふも忘れずに残していく。そして、洗脳が解けた人間たちもみな逃げ出してしまう。アドニスが呼び寄せた悪魔たちもいなくなる。ところが……。

突如として屍鬼と蠅の群が大量に出現し始める。まるで悪魔の生態系が一変してしまったかのようだ。実は、今までシェルター内にこれらの悪魔の姿がなかったのは、アドニスの魔力で抑えていたためだったのだ。これでは、とても住めるような状態ではない。ここも脱出するほかなくなった。

屍鬼ゾンビミックス、下魔ベルゼブブの下僕、悪霊・色情因縁霊……。こういった奴らとまともにやりあっていると大変だ。邪教の館で天使エンジェルあたりを造っておけば、ハンマやハリハラが使えるので戦闘は楽になる。蠅どもはアギ系魔法で焼き払おう。また、アンデッド系悪魔はうまく会話すれば成仏させてやることも可能だ。実入りはゼロになるが。

帰りは、一方通行の扉をうまく使って近道しよう。しかし、油断は禁物。狭い道で通せんぼするように悪魔が群れているからだ。ここでこっちがゾンビになってはシャレにもならない。1Fにたどりついたら、もう一度セーブしておくのが無難だろう。そして、ふたたび地上へ。

コラム:原宿シェルター

DOS初期版では、シェルターに入ってすぐのところで、マシン・T-92αとマシン・ビット・ボールが出現した。警備システムの一部が生き残っていて、護衛用ロボットのストックを動かしているのだと考えられ、いい設定だった。もとの主を失ってもなお、シェルターを守り続けるロボットたち。悪魔の襲撃は、シェルターを内部から潰滅させるものだったので、そのとき彼らの出番はなかったのだ。

あと、シェルターの構造も気になるところだ。初台シェルターもそうだったが、施設はすべてB5Fより下のエリアに集まっている。万が一を考えての放射線対策なのか、それとも悪魔対策か。おそらく悪魔対策だろう。エレベータを停止し、扉をロックすれば、侵入を受けてもかなり時間を稼げるはずだから。

満月の夜の怪事件

原宿シェルターをあとにして、今度こそ本当に行くあてがない。いままでは親切すぎるほど誘導してくれていたのに、ここではヒントすらない。広大な平野にいきなり放り出されたようなものだ。初めてプレイしたときはかなり迷うはず。

ただ、泪や園田が瀕死の場合、ヒントが出る。安全で、物資も豊富にある新宿に向かおうという会話が交わされるのだ。新宿駅のあたりにペンタグランマの居住エリアがある。が、前線にいるメンバーは来ていないので、まだ手は回っていないはずだ。

というわけで、闇雲に動き回ったりせず、まずはシェルターから北へ向かおう。すると、都庁の近辺にマイシテーという場所があるはず。ここで疲弊した体を休めることにしよう。

なお、マイシテーとアイシテーで表記が混乱しているようだが、ここではマイシテーで統一する。なぜなら、名前の元ネタが「MYCITY」だからである。

マイシテーに入ったら、左手に進む。そこにターミナルがあるので、AMSデータをダウンロードし、先にセーブしておく。初台以来のターミナルである。ここから、廃墟となった初台シェルターに移動することもできる。ちなみに、転送には相当のエネルギーが必要だと思われるが、ターミナルの動力源は謎に包まれている。

エレベータで8Fへ。病院があるので、ここで治療を受け、英気を養おう。同じフロアに武器屋と防具屋もある。装備を充実させておくべきだ。だが、武器屋は弾薬以外見るべきものがない。泪のために9mm強化弾あたりを買っておく程度でいいだろう。重要なのは防具屋。お金をケチったりせず、できるだけいいものを買おう。ラパイドVと鱗の籠手がおすすめだ。

1Fに降りる。道具屋、薬屋、それにコンピュータショップがある。道具屋では、緊縛を解除してくれる蜂蜜ケーキを、薬屋では、ポイズノンXやチャームザップαをいくつか買っておくといい。これまでに入手したアイテムも、ようやく売りさばくことができる。コンピュータショップで忘れてはいけないのは、ANS Ver1.0。ナビゲーションシステムを再起動させておかなくては。お金に余裕があればセーバーIもインストールしておいて損はない。

これで、ようやく本格的に動き回れる体勢が整った。住人たちから話を聞こう。まずは1Fの酒場から。情報を収集するには、必ず酒を注文しないといけない。ほろ酔い加減になることもあるが、しばらく経てば元に戻る。バーテンの話では、シャンシャンシティは悪魔の管理する牢獄になっているそうだ。また、他の人々から話を聞くと、六本木に大きな歓楽街があり、市ヶ谷にはサイバー手術をするすごい医者がいて、神田ではミュータントたちが学術研究都市を築いていることがわかる。

4F〜8Fにかけて、多くの住人たちが暮らしている。とはいえ、広いので、使われていない部屋もたくさんある。ペンタグランマの人々もいるが、葛城たちのことに気づいてはいない。公式発表では、すでに処刑されたことになっているからだ。彼らは、都庁を取り戻したことを自慢にし、吹聴しまくっている。そのため、他の住民からの受けはよくない。また、都庁襲撃後、渡邊はすっかり人が変わってしまったという話も聞ける。襲撃の際役に立たなかったという理由で、一生懸命調教していた犬たちも殺し始めたのだという。

もっぱら話題にのぼるのは、満月の夜になると、誰かが決まって行方不明になるという怪事件のことだ。実際に、身近な人がいなくなったという体験談を多く耳にする。あまり頻繁に続くうえ、事件のあと変な遠吠えが聞こえたという噂もあり、満月の夜には交代で見回りが出ている。が、犯人が捕まらないどころか、手がかりさえ見つからない始末。ペンタグランマのメンバーが加わっていても、そんな状況なのだ。次は自分なんじゃないかとみんなビクビクしている。他より安全だろうとここに移り住んできたのに、このありさまでは無理もない。

このマイシテーにも悪魔人たちがいて、ペンタグランマの人々との対立が日増しに激しくなってきているという。事件も血に飢えた悪魔人の仕業なんじゃないかと疑う人がいて、彼らはかなり頭に来ている様子だ。その対立に、ほかの住人たちも迷惑そうである。

あと、御田急ハルクに謎の兄妹が住んでいるという情報もある。悪魔がウヨウヨしている場所にふたりっきりで住んでいるというから、尋常ではない。事件とのつながりは……? 次の目標はどうやら御田急ハルクらしい。

コラム:食料・物資の生産と流通

地上で生活している人々は、何を食べ、また、その食物をどうやって調達しているのだろうか。まさか畑を作るわけにもいかない。土地は放射線で汚染され、あちこちで悪魔や悪党どもが跳梁跋扈しているのだから。

とすれば、郊外から輸送してきていると考えるほかない。が、この輸送は、相当な危険をともなう。そこで、傭兵組織の出番となる。第2章4節のコラムで、シェルター間を移動する際には傭兵をボディーガードにしたのではないかと述べたが、郊外から食料や物資を輸送する場合も、彼らは活躍しているにちがいない。

では、具体的に何を運んでいるのか。人々の主食はレーションだ、という意見があり、これに従えばレーションを輸送していることになる。しかし、レーションは非常用または携行用なので、常時食べているわけではないだろう。やはり、火を通せばすぐに食べられるレトルト食品が多いのではないか。生鮮食料品も流通していないわけではないだろうが、おそらく貴重品である。

最近鈴木大司教が発表したところによると、東京近郊の食料生産地は自警団が防衛しており、余剰生産物を都心部に輸送しているという。おそらくそのとおりだろうが、筆者はさらに、生産工場があるはずだと考えている。農作物だけでは都心の人々の胃袋を満たすことはできない。それに、生活必需品もどこかで製造しているはずなのだ。

工場は、自然エネルギーを利用した自家発電装置を動力源として稼働させる。こんなビジネスができるのは、出現する悪魔の数が少ないからこそ。それでもリスクは高いのだが、リターンも大きい。大手企業の寡占状態になっているかもしれない。

また、飲料水も問題だ。シェルターが地下水を汲み上げ、輸出しているというのが鈴木大司教の見解。それもあるだろうが、やはり工場でも製造しているのではないか。雨水を煮沸して特殊なフィルターで濾過し、瓶詰めにすれば、十分売り物になるだろう。

さらに、嗜好品が流通するルートもあるはずだ。都心部であれだけ酒場が繁盛しているのだから。ただ、酒はどれも同一価格になっている。天然ものでこんなことは考えられない。テイストこそ異なるが、すべて合成酒なのだろう。ちなみに、市ヶ谷シェルターで葛城たちに振る舞われたウィスキーは、天然ものだということが強調されていた。

時計台の兄妹

御田急ハルクは、マイシテーのすぐ近くにある。白い建物で、大破壊の際に爆風を受けたわりには、それほど崩れた様子はない。さすがに、窓ガラスはあちこち割れているが。見上げてみて目につくのは時計台だ。これは遠くからでもはっきりそれとわかる。だが、その針が時を刻まなくなってから久しい(追補A‐1第3節参照)。中へ。

1F。屍鬼クリスピーデッドと妖獣ヘルハウンドが主人と飼い犬よろしくワンセットになって大量に出現する。こいつらはアギヤードで焼き払うのが楽。端末でセーブ可能だが、ここでは無理にする必要はないように思う。回復ポイントもある。

階段だけでなくエレベータも使えるが、実は階段を順にのぼっていくほうが、悪魔と戦う回数は少なくてすむ。その差を実感できるのが3F。邪鬼レッドキャップと妖精ホブゴブリンがコンビで出現し、見かけによらず手強いのだ。シバブー、イビルアイズやジオなど、多彩な魔法・特殊攻撃を繰り出してくる。とくにシバブーは剣呑で、隘路で緊縛になると、撤退するしかない。そこで、ホブゴブリンは仲魔にしてしまい、レッドキャップだけを泪のムドで狙い撃ちにするという手もある。

1Fでエレベータを利用した場合。3Fから階段で4Fへのぼり、別のエレベータで5Fへ。噂の兄妹は5Fにいるからだ。なので、6Fへ行っても無駄足になる。一方、1Fから階段をのぼって4Fまで来た場合も、そのエレベータを利用することになる。ルートが合流するわけだ。ただし、水妖アズミや地霊フォーンに頻繁に遭遇する。アズミは宝玉を落とすので、こちらから戦闘をしかけるのもいいだろう。あと、このフロアのアイテムボックスには、貴重なサファイヤが入っている。取り忘れないようにしよう。

5Fのとある部屋に入ると、そこはたくさんの機械に埋め尽くされていた。時計台の機械室である。室内には静寂が広がっている。錆びついた巨大な歯車が、長らく動かされていないことを物語っていた。階段のほかに、いくつかの部屋もあるようだ。かつてはこの時計をメンテナンスするために使われたのだろう。

そのとき、奥のほうから可愛らしい少女が飛び出してきた。年は6〜7歳くらいだろうか。小柄なので幼く見えるのかもしれない。少女は、自分の兄が帰ってきたと思ったらしい。葛城たちの姿を見たとたん、怯えてしまった。そこで、優しく接してあげると、メイという名前だとわかる。

突然、少女が苦しそうに咳き込み出す。園田が気遣って声をかけたとき、背後の扉から長身の男がひとり入ってきて、ゆっくりと少女に向かって歩いていく。その表情は虚ろだった。だが、咳き込む少女を見て、男は突如正気を取り戻したようだ。「メイ! 発作かっ! 喋っちゃダメだ。いま薬をやるから、布団に行って寝てなさい」。少女は苦しそうに咳をしながら、奥へと消えていく。

男の鋭い眼が、葛城たちを睨みつける。怒りも露わに怒鳴り散らすと、葛城を乱暴に突き飛ばす。さらに、出ていかないと殺す、と脅してくる。気迫に満ちたその態度は、何を言っても無駄だと告げていた。葛城たちは、部屋を追い出された。

男のあの怒りようは、ただごとではない。詳しい事情を聞きたいところだ。そのためには、何度もここに足を運ばなければならない。一度建物を出て、月齢が進んだらまた入って、ふたりのいる部屋へ向かう。その繰り返し。途中で満月をはさむ必要はない。とにかく、5回はここに通うこと。

メイは、けっこうすぐにうち解けてくれる。葛城たちが怪しい人間ではないと勘でわかるのだろう。むこうから話しかけてくる。彼女は、自分が病気であることや、兄のカズミとふたりっきりで暮らしていることなどを教えてくれる。歳がいくつなのかは、自分でもわからないそうだ。

カズミが葛城たちに対して怒りをむきだしにするのは、メイを守るためだという。「お兄ちゃんがいなくなると、メイは生きてけないの。だから、お兄ちゃんはほかの人がくるとおこるの」。他の人が来るとカズミがいなくなる? どういうことなのか。「ほかの人は、お兄ちゃんのこと、わるいっておもうもん。そしたら、お兄ちゃん、メイのそばにいられなくなっちゃう」。カズミは、何か悪事に手を染めているのだろうか。それとも、巻き込まれているのか。

そのカズミは、なかなか警戒を解こうとしない。妹を守ろうとするひたむきな気持ちが、そうさせるのだろう。それでも、メイが葛城たちを気に入ったのを見て取り、いくぶんか穏やかな口調になっている。だが、その姿は前と比べ、酷くやつれて見えた。

彼の話では、やはり彼らに両親はいないらしい。子供のころから、ふたりでひっそりと暮らしてきた。また、メイは肺を患っていて、安静にしていないといけない身だという。「俺たちには構わないでくれ。俺たちのささやかな生活を、壊してしまわないでくれ」。哀しみを帯びた真剣なまなざしで、カズミはそう言った。

どうして、外部の人と接触すると、ふたりの生活を壊すことになるのか。そう尋ねても、話すわけにはいかないの一点張り。園田は、自分たちが力になれるかもしれない、と訴えた。「俺たちもまっとうじゃないんだ。身に覚えのないこととはいえ、組織を追われ、行く当てもなく、東京をさまようはぐれ者だ」。だが、カズミは首を横に振った。言ったところで何も変わらない、自分自身の問題だから、と。

カズミから忠告を受ける。満月の日にここに近づいたら、命の保証はできないというのだ。もし、この忠告に従わないと、どうなるか。満月のとき、御田急ハルクはいつもと様子が違う。どこからか遠吠えが聞こえ、黒い大きな影をあちこちで見かける。機械室に入ると、メイが血相を変えて葛城たちを追い返そうとする。満月が過ぎてから来てほしいという。疑惑は深まってゆく。やはり、彼らはマイシテーの事件について、何かを知っているのだ。

ふたたび、機械室へ。葛城たちを見てメイは喜んだ様子だったが、酷く咳き込んでいて、顔色も悪い。背中をさすって楽になるようにしてやり、奥の部屋から布団を取ってきて、メイを寝かせる。患っているのは喘息の一種らしいのだが、かなり重症のようだ。こんな環境では、病状は悪化するばかりだろうに……。

カズミが帰ってくる。メイの様子を見て血相を変えたものの、葛城たちからいきさつを聞いて、少し安心したようだ。園田は、カズミに真相を語ってもらいたがっている。いったい何に対して、ひとりで立ち向かっているのか。カズミを助けてくれと、メイにも頼まれた。それに、もし悪魔が絡んでいるとなると、デビルバスターとして見捨ててはおけない。

それでも、カズミの心は固く閉ざされたままだった。彼は、葛城たちがデビルバスターであることはわかっていたという。だが、こればかりはどうにもできないし、その理由も話せない、というばかり。そして、俺たちに構うな、といって、葛城たちを部屋から追い出した。

日を改めて、もう一度機械室へ。ふたりの姿がない。そのとき、柱の影に人の気配が。くぐもった声で、頼みがある、と話しかけてくる。カズミらしい。葛城たちが近づこうとすると、来るなといって拒否される。やむをえず、その場で話を聞く。

「メイを、次の新月まで預かってほしい」。奥の部屋から、メイが姿を現した。その両目は、泣き腫らして赤くなっている。次の満月が危険なので、メイをここに置いておくわけにはいかない。どこか安全な場所に連れて行ってほしい、ということだった。理由は、やはり言えないという。まるで、痛みに耐えるかのような、押し殺した声。カズミのことが心配だったが、これ以上は詮索せず、メイを預かってあげることにする。

ちなみに、このカズミのセリフ。現時点で月齢が後半に入っていると、話の辻褄が合わなくなってしまう。「次の満月が過ぎるまで預かってくれ」とするべきだっただろう。

メイを、どこに連れて行くべきか。安全で、しかも環境のいいところでなければ。が、病気で弱っているだけに、長旅は無理。となると、選択肢はそう多くない。マイシテーが良さそうだが、もしペンタグランマに葛城たちの正体がバレたりすると、面倒なことになる。

そこで、園田は、鬼子母神にいる知り合いの僧侶のところへ向かうことにした。雑司ヶ谷にあり、御田急ハルクからだと池袋方面だ。「入谷の鬼子母神」として有名である。なお、園田が瀕死の場合でも、メイが鬼子母神の場所を教えてくれる。カズミから聞いたのだという。そこのお坊さんは優しい人だから、と。

鬼子母神は、どっしりとした作りのお寺で、裏庭には池があり、殺伐とした東京には不釣り合いなくらい閑静なところだ。強い対魔結界が張られているおかげだと思われる。そこの住職であり、唯一の住人でもある僧侶は、温かく葛城たちを迎えてくれた。園田と知り合いだというくらいだから、原宿シェルターを何度か訪ねたことがあるのだろう。メイを預ってほしいという頼みも快く引き受けてくれ、これで一安心。

僧侶の協力も得て、メイの看病を続ける。が、兄と離ればなれになったせいか、発作が続き、容態はなかなかよくならなかった。そして、問題の満月の晩。葛城たちが、明日カズミのもとにメイを連れて帰ろう、と話をしていると、メイのうなされている声を聞く。その様子がふつうではなかったので、揺さぶって起こしてやると、目を覚ましたメイは、泣きながら訴えてきた。「お兄ちゃんを止めて!」。泪にメイを見ていてもらい、葛城と園田は御田急ハルクに戻って、カズミに会ってくることにする。

御田急ハルクに入ると、男の悲鳴が聞こえる。それに続いて、獣の咆哮が轟く。上のほうからだ。なにか異変が起こったようだ。急がなくては。

機械室の扉の奥から、男の啜り泣きの声が聞こえてくる。踏み込んでみると、中は床一面の血の海だった。屍体が転がり、喰いちぎられた腕や足が床に散らばる、凄惨な光景。吐き気を催すような血の臭いが鼻孔をつく。血の海の中に、狼男が一体、立っていた。2メートルを軽く超える巨体である。被害者の生首を抱え、嗚咽していた。なぜ、悪魔が泣いているのか。

狼男は、葛城たちの存在に気づくと、牙を剥いて襲いかかってきた。獣人ワーウルフと戦闘になる。ワーウルフは、腕力と体力が自慢の悪魔だが、魔法に対する抵抗力がないので、攻撃魔法を使えばあっけなく倒せる。だが、そのとき……。

「あくまめっ! メイのお兄ちゃんから出てけっ!」。突然、背後でメイの声がした。兄のことが心配で、病をおしてここにやって来たのだ。隣に泪の姿もある。泪の話では、ワーウルフの正体はカズミだという。ふたたび、咆哮が響き渡る。ワーウルフは立ち上がった。恐るべき回復力だ。「お兄ちゃんっ! お兄ちゃんを殺さないでぇ!」。メイの悲痛な叫び。だが、どうすれば元の姿に戻せるというのか。

ワーウルフと再度戦闘になる。しかも、さっきよりパワーアップしている。眠っていた獣性が呼び覚まされたのだろうか。それでも、修羅場をくぐり抜けてきた葛城と園田の敵ではない。大きなダメージを受け、ワーウルフの動きが止まる。見る間に、それがカズミの姿へと変化していく。全身に傷を負った姿が痛々しい。メイは、心配そうにカズミに駆け寄っていく。彼は、メイをしっかりと抱き上げ、そっと傍らに下ろしてあげた。

カズミは、ついにすべてを語り始める。カズミとメイが旅をしていたあるとき、廃墟で瀕死のワーウルフに遭遇した。興味に駆られたカズミがおそるおそる近づいていくと、突然そのワーウルフはカズミに憑依した。体を乗っ取って生き延びようとしたのだ。幸い、完全に支配されることはなかった。が、満月の夜、ワーウルフの力が最大になると、潜んでいたワーウルフの精神が表面に現れ、カズミは狼男に変身してしまう。

一度変身すると、まったくコントロールが効かなかった。意識が戻ったときには、カズミの周りには喰いちぎられた人間の屍体が散乱しているというありさま。ふつうの生活をあきらめたふたりは、御田急ハルクに住むことを余儀なくされた。しかし、満月の夜になるたびに、ワーウルフはマイシテーにいる人々を襲うのだった。

人を殺して喰らう恐怖――それでも、カズミは耐えた。すべては、メイを守り、生きるためだった。凶暴なワーウルフがいるとなれば、悪魔でさえもおいそれとは部屋に近づけなかったからだ。しかし、しだいに限界が近づいてきた。ワーウルフの力は、日増しに強くなっていたのである。奴は、いったん目覚めると、メイさえも襲おうとした。

ちょうどそのころ、ふたりは葛城たちに出会う。カズミは、葛城たちが信頼するに足ると思った。だから、メイを預けることに決めた。これ以上犠牲者を増やさないようにするため、自ら命を絶とうとしたのだ。だが、ワーウルフの強さはカズミの予想を超えていた。彼の努力もむなしく、新たな屍が生まれることになった。狼男の嗚咽は、カズミのそれだったのだ……。

だが、今カズミは元の姿に戻っている。泪の見るところ、カズミはワーウルフの精神に勝った。つまり、ワーウルフと融合したのだ。本当なら、カズミは瀕死の重傷を負っているはず。それがこの程度のケガですんでいるのも、ワーウルフの生体マグネタイトを吸収したためだと考えられる。おそらく、カズミにはもともと悪魔使いとしての素質があり、いままで完全に支配されずに済んだのも、そのおかげなのだろう。

人間の姿のままで、ワーウルフの特殊能力を使えるようになったカズミ。訓練しだいでは、望むときにワーウルフに変身することもできるという。この狂気の街東京で、ひとりで妹を守り抜いていくためには、願ってもない力だ。

もう、この牢獄に縛られる必要もなくなった。カズミは、メイを連れて旅に出ることに決めた。自分が奪った命を償い、また、自分を鍛えるための旅だった。旅支度は途中の街でするという。「君たちにはいくら感謝しても、感謝し尽くせないよ」。カズミの顔から、笑みがこぼれた。初めて見る笑顔だった。

「強くなりなさいね。男は強くなきゃ、生きてく価値はないわ」と泪がいう。「ああ、努力するよ。またどこかで会おう!」。「お兄ちゃんたち、バイバイ!」。ふたりは、機械室を去っていった。彼らなら、この先に待ち受けるさまざまな試練を、きっと乗り越えていくことだろう。その確信を胸に、葛城たちもその場所を離れた。

コラム:泪のセリフ

このエピソード中で泪が語る言葉に注意しよう。あちこちに伏線が張られていて、ニヤリとさせられる(第12章参照)。たとえば、カズミの瞳の奥に光るものは私と同じだ、という言葉。ワーウルフの正体がカズミだと気づいていたくだり。デビルバスター以上に、彼女は悪魔についてよくわかっているようだ。かくして、謎は深まっていく(笑)。

「たいした精神力よね。人間もまんざら捨てたモンじゃないわ」というのもちょっと変ではある。自分が人間じゃないみたいな言い方だ。そして、極めつけは、カズミに憑依したワーウルフも悪くない、と語るシーンだろう。「子供に憑依してでも、ワーウルフは生きたかったのよ」。憑依するのは許せるとして、人を殺しまくってもいいというのか?

ただ、こうした感覚を持っている一方で、労働キャンプでは葛城たちを助けてくれたし、鬼子母神ではメイの面倒も見てあげたわけだ。この性格の二面性はどこから来るのか――それも、あとで明らかになる。

コラム:悪魔の形態変化

初台の端末情報によれば、悪魔の形態変化、変身能力、異常増殖する非自己破壊細胞の存在は、数種のウィルスによる働きだという。本来、細胞には寿命があって分裂できる回数は決まっている。しかも、分化すると全能性を失ってしまう。つまり、特定の細胞はその部位の働きしかできない。筋肉細胞は肝細胞の代わりにはならないのである。だが、ウィルスの力を借りて、悪魔はこの生物としての限界を乗り越えている。

分裂回数に制限がない細胞として、ガン細胞がある。この細胞は、限定的ながらも全能性を回復しているらしい。だが、コントロールが効かず、異常増殖してあちこちに転移するため、生物にとっては害悪にしかならない。これに対して、悪魔はコントロール可能な、不死かつ全能の細胞を持っている。まさに、小説『パラサイト・イヴ』や『らせん』の世界である。

このウィルス説がうまいのは、伝説をうまく説明できる点である。それは、狼男などのライカンスロープは一種の病気で、噛まれたりすると感染する、というものだ。メガテン的にいえば、悪魔に憑依されると同時にこのウィルスにも感染し、だからこそ獣人に変身してしまうのだ、ということになる。ただし、この場合、自分の変身をコントロールする術はない(例:興奮すると変身する)。悪魔が主導しているからだ。

一方、カズミは、このウィルスの働きを制御できるということらしい。カズミの場合、通常の悪魔人と違い、人間ベースのままで悪魔の能力を手にしたという、かなり珍しいパターンである。こうしたケースは、『真・女神転生I』のカオスヒーローなど、数えるほどしかない。そのため、どういうメカニズムになっているのかは、よくわからない。ただ、はっきりと言えるのは、この能力を使うには、大量のエネルギーが必要だということ。つまり、生体マグネタイトが十分にないといけない。MAGバッテリーのような装置を持たないカズミは、どうやってマグネタイトを貯めておくのだろうか。

グラウンド・ゼロ

これで一件落着――と思いきや、御田急ハルクを出る直前のところで、ひとりの悪魔人が忽然と現れた。アドニスの使いだという。手渡されたのは、挑戦状だった。葛城に一騎打ちを申し込む、という。場所は新宿爆心地にあるコロシアム。例のICBMが落ちたところだ。もし来なければ、1日遅れるごとに人質を磔にし、コロシアム入口前に並べておく、とも。汚い手だ。だが、応じざるをえない。

人の命がかかっている以上、急いで行くべきなのだろうが、慌てず傷を癒し、セーブもしてからにするのが正解。さもないと、この先に待ち受ける厳しい戦いで、後悔することになる。ただ、3日以上粘ると園田にせっつかれるが。新宿爆心地は、直線距離ではあまり遠くないが、ぐるっと道を回らないといけない。必ず何日かは経過することになる。

余談だが、メイを預かる前に原宿シェルターでセーブしておき、トラポートで飛ぶという手もある(トラポートを使える仲魔が必要)。こうすると、日にちのロスを最小限に抑えられる。ロスが少ないと、属性がLIGHTに傾くようだ。だがこれは、あくまでもお遊びと考えたほうがいい。ふつうのプレイでこれをやると、後がつらくなるので。

爆心地では、葛城たちの到着が遅れたために、すでに殺された人々が磔になっている。地下につながる階段があり、降りてみると、場違いに明るい女悪魔がふたり。彼女たちから、園田と泪は待っているようにといわれる。決闘は一対一でやるものだから、と。園田は悪魔と人間が一対一では不利だと反対するが、泪は葛城なら大丈夫だという。ふたりは別室に連れて行かれる。別れ際、園田が言葉をかけてくる。「必ず勝てよ。俺はおまえの勝利を信じて、待っているからな」

悪魔に案内されて階段を下りると、そこは闘技場コロシアムのあるフロアである。闘技場はフロアの中央に位置し、アドニスはそこで待ち受けている。周りには宝物が配置されており、それを集めながら行ってもいいそうだ。ただし、仲魔を使うことは許されない。また、逃げだそうとしても出口で制止されるので、これもできない。

通路には悪魔がウヨウヨしている。傀儡ボーンゴーレム、狂人クランキー、邪鬼オークチーフなどが主なところ。パーティーは葛城ひとりなので、行動不能はそのまま死を意味する。状況はけっこう厳しい。欲張ってアイテムを狙わないこと。アイテムは隘路に配置されていることが多く、最悪の場合挟み撃ちにされてしまうからだ。

一本道なので、迷うことはない。途中で精神の香や学人の香を拾ったら、闘技場入口の側にある回復ポイントで焚いて、回復しておこう。ただ、セーブできる端末は、その入口よりさらに奥に進まないと見つからない。ちなみに、丹念にまわっていくと、千呪万病撃滅内服薬(「瀕死」を回復する効果)やベルゼブリーなどを入手できる。

闘技場に足を踏み入れると、そこは興奮のるつぼと化していた。悪魔や悪魔人だけでなく、奴隷たちも見物を許されているらしく、これから始まるであろう残酷な血の宴を想像して、大いに盛り上がっている。また、貴賓席にはアバドン、ラマシュトゥという大物悪魔が座っていた。由宇香を引き裂いて喰らった、あの悪魔たちだ。ラマシュトゥは、慈しむような瞳で、コロシアムの中央に立つアドニスを見ていた。

「ちゃんと来るなんて感心だな」。例によってアドニスの高慢な口調だ。いままでは(数人がかりで)一方的に不利な戦いだった、一騎打ちでどちらが上か決めよう、という。だが、余裕を見せて戦いを挑んできたのはアドニスのほうなのだから理不尽である。とにかく、一対一なら負けるはずがない、といった風情だ。

アドニスが不敵な笑みを浮かべ、指を鳴らすと、戦いの女神を模したデミ・ヒューマンが、3体現れる。「古代よりの決闘の儀礼」により、悪魔の使役と銃の使用は禁止されることが告げられる。また、一時的に装備・アイテムの類はすべて剥奪される。それでは何のために途中でアイテムを拾ってきたのか、ということになってしまうが、そういうルールだから仕方がない。代わりに与えられたのは、軽量の防具と魔石が5つ。武器は、剣・槍・斧の中から選べる。それぞれ、グラディウス、バトルスピアー、バトルアクスに対応する。剣を選ぶのが無難だろう。アドニスは槍を取る。

アドニスが場内の観客に宣誓したあと、戦闘開始。アドニスの実力は、原宿シェルターのころよりも少し上がっている。臥竜刹などの技を身につけており、魔法攻撃もやや効きにくくなっているようだ。それでも、こちらが魔道に覚醒していて魔力が十分なら、アギラオンの連発で楽勝である。また、魔法に頼らなくても手こずるというほどではない。負けることはまずないはず。

万が一負けてしまった場合。アドニスが勝利を宣言すると、場内がブーイングに包まれる。人間ごときに勝ってあたりまえだ、というわけ。床に倒れ伏した葛城の耳に届く人々の声。意識が薄れてくるにしたがって、だんだんと声も遠ざかっていき……。3Dダンジョンに戻ったところで全滅となる。

アドニスを倒すと、闘技場コロシアムは意外な結果に静まり返る。アドニスに賭けていた連中は、きっと蒼ざめた顔をしていることだろう。しかし、沈黙は一瞬のことだった。歓声とブーイングが津波のように広がっていく。アバドンはその醜悪な顔で嘲笑していた。普段からアドニスをかわいがっていたラマシュトゥは、信じられないという面持ちだ。

「こんな大勢の前で……恥をかかされるなんて……!」。屈辱にまみれ、プライドをズタズタにされたアドニス。ここで、とどめを刺すかどうかを選択。武士の情けでとどめを刺さないことにすると、葛城はアドニスに背を向けて去っていく。うしろからまたまた捨てぜりふ。借りていた装備を渡し、自分の装備類を返してもらって闘技場を去る。

とどめを刺そうとすると、ラマシュトゥが雷撃を放って制止する。もう勝負はついた、わざわざとどめを刺すこともないでしょう、と言って。ラマシュトゥは、アドニスもなだめる。「私の可愛いアドニス。まずは傷を治さなくては。美しい貴方が台無しよ」。アドニスもこの場は引き下がる。「次に会ったときは命は無いと思え! せいぜい、束の間の勝利を味わっておくがいい!」。そんなセリフを残し、ラマシュトゥと共に去っていった。

なお、ここでアドニスにとどめを刺せるパターンがあるとの情報もあったが、筆者が調べたかぎりでは、そういうことはないようだ。

コロシアムを埋め尽くしていた観客たちも、ぞろぞろと帰り始める。葛城がコロシアムを出ようとすると、泪が飛び込んできた。だが、園田の姿はない。聞けば、葛城を待っているあいだに悪魔に襲われ、死んだという。なんてことだ。だが、泪は平然としている。「死んでしまったものは仕方が無いわ。私が悲しみに満ちた声で言えば、生き返るとでもいうの?」

そういう問題じゃないだろう。慌ててふたりが待機していた部屋に戻ると、たしかに園田は帰らぬ人となって横たわっていた。しかも、心臓を抉り取られて。たしかに、悪魔の仕業だろう。だが、それならなぜ泪は無事だったのか……?

ここで、園田を弔ってやるかどうかを選択する。泪は、死んでしまったあとの肉体はただの肉にすぎないから無意味だ、といって弔うことに反対する。(シェルターの)外の世界ではそんなことにかまってなんかいられないのだ、と。シェルター育ちとは感覚が違うということなのかもしれないが、それはちょっとひどいだろう。

弔ってやることにする。しかし、ここに埋めたのでは悪魔に掘り返されないともかぎらない。そこで、鬼子母神へ。住職は園田の知り合いだ。彼に頼むことにしよう。シートに包まれた園田の亡骸。それを見た僧侶も、突然の死を嘆き悲しむ。しかし、彼も失われた魂を呼び戻す術は知らないようだ。園田は荼毘に付され、墓に入れられた。その間、葛城はずっと僧侶についていた。そして、泪も。

すべてが済んだあと、僧侶が葛城に話しかけてきた。心臓を抉り取られるというむごい死に方をした園田の魂は、本当に安らぐことはないだろう。どうか、あいつの仇を取ってやってほしい、と。鬼子母神を出る。以後、泪とふたりで旅を続けることに。

長い長い旅の始まり

これ以降、より本格的な東京の探索が始まる。かなり自由に動き回れるようになるのだ。そのいくつかのポイントについて、この段階で行けるところに限定して触れておこう。

まず、初台・原宿シェルターと、新宿・代々木強制労働キャンプ。この中で、代々木労働キャンプだけは戻ることができない。また、ほかのところも、行っても基本的に何もない。取り残したアイテムを集めるくらいか。ただ、初台のB8Fで、DEバーニンガーをダウンロードできるようになっている。

マイシテーから少し南に行くと、新宿地下街がある。B1Fには、武器屋、防具屋、道具屋と薬屋が存在するが、品ぞろえはあまりよくない。防具屋は、悪魔用のものが多く売られている。ただ、道具屋にある手榴弾はちょっとおもしろい。これは、追加効果が「瀕死」だというのが特徴で、うまくいけば広範囲の敵を一掃できる。安いので、大量に買っても懐が痛まないのもうれしいところ。

また、魔性の香のほか、時だましの香×3を入手できる。この時だましの香は特殊なアイテムで、能力値を上げたり、HPやMPを回復したりする効果はない。焚くと、しばらく意識を失い、気づいたら月齢が満月になっている。魔法の宝箱から宝石を得るときに重宝するだろう。

B2Fには邪教の館もある。ここを利用すれば、いちいち原宿シェルターに潜らなくてもいいわけだ。これまでに仲魔にした悪魔たちを、どんどん合体させていこう。高位の悪魔は、戦力としても強力だが、貴重なアイテムを装備している点でも重要だ。たとえば、妖魔ペリを作り、風塵剣を奪取して葛城に装備させてやる。これで、パーティーの戦闘力は格段に向上することになる。

地下街の先は新宿地下道。そこには邪龍ワイバーンが出現するポイントがある。ワイバーンは攻撃力と体力が極めて高く、いまのレベルで正面から戦いを挑むのはつらいだろう。ただ、泪のムドで斃せば、けっこう稼げるのだ。

やはりマイシテーの近くに、慶王ルミネがある(京王百貨店とLUMINEを合わせた名前らしい)。アンデッドの巣窟と化しており、もとが百貨店だったとは信じられないくらいだ。本当に大量に出現するので、なめてかかるとひどい目にあう。

1F。回復ポイントがある。幽鬼ハクマ・ブ・トゥーが守っているのは、マハアギストーン×3。2F。毒の泉の水を飲んではいけない。屍鬼ボディコニアン、悪霊ラルウァイがつぎつぎに襲いかかってくる。また、固定悪魔として出現する幽鬼マンイーター。これは手強い。セクシーダンスで魅了され、身動きがとれなくなったところをデスハンドが襲う。HPを大量に持っていかれる。しかも、悪魔のキスのエナジードレイン攻撃まである。防御力も高く、ボス並みの相手だと思って戦わないと返り討ちにあうだろう。

3F。屍鬼ゾンビミックスと下魔ベルゼブブの下僕が徘徊している。屍鬼ボディコニアンをダウンロードできる端末がある一方、ウィルスが侵入する端末や、毒のトラップも存在する。また、狂人クランキーと悪霊色情因縁霊が大量に出現する広間の奥には、ローズクォーツと貴人の香がある。さらに、一方通行の扉を通って進んでいくとシュートがあり、2Fから転送装置で1Fに飛ぶと、大地の香を入手できる。

新宿から南のほうへ下っていくと、明治神宮がある。初台の端末情報によれば、魔界の植物が神宮の森を脅かしていて、伐り倒そうとする人に襲いかかってくるということだったが、そんな様子はないようだ。だが、情報どおり悪魔がいる。邪鬼オークチーフだ。魔界植物を守っているのか。斃して先へ行くと、鬱蒼とした森が続く。どこからともなく、低い唸り声が聞こえてくる。無視して進むと、妖獣ガルムが出現。有無をいわさず戦闘に。これを斃し、また進むと、ふたたび唸り声。今度は複数だ。それでも前進。今度は、ガルムが3頭。いまのレベルだとけっこう手強いが、撃破して奥へ。すると、葛城たちの体は光に包まれ……。

気がつくと、そこは明治神宮の外。いったいどうなっているんだ? 今はまだ、謎のまま。そのからくりは、ずっとあとになってから判明する(第9章3節参照)。

原宿シェルター付近にある東郷神社では、榊が手に入る。これはのちのち重要な役割を果たすことに。戦闘中に使用すれば、榊についた聖水が悪魔にダメージを与えるが、威力は期待しないほうがいい。奥へ進むと社殿があって、ひとりの老人がいる。神主さんにしては変な格好だ。彼は、子供のころ日露戦争があって、東郷平八郎がバルチック艦隊を沈めて云々……などと語るのだが、いったいいつの時代の話だ? とにかく、東郷神社は明治神宮を支える存在として、秘密の道でつながっているのだという。証をもっていればその道を使わせてもらえるそうなのだが、その証とは……?

もう少し進んで、代々木オリンピックプール。ここは、最初に入ったときと2回目以降でちょっと様子が違う。1回目は、妖精ジャック・フロストにこれでもかというくらい遭遇する。床が凍っていて滑るので、思うように動けない。魔石や、運の香などを入手。奥に小部屋がたくさん並んでいて、宝箱があるが、爆発や悪魔出現のトラップも混じっている。

2回目以降は、シュートが出現。落ちた先(B1F)にはワープゾーンがあり、これで移動する。B2F。魔法の宝箱があり、満月ならばオニキスが手に入る。ただ、ここで重要なのは泉のほう。ここもちょっとしたからくりがあるのだが、その話はまたあとで(第6章1節のコラム参照)。泉の近くには、回復ポイントもある。

さらに南下して渋谷方面に行こうとすると、目に見えない力に阻まれて進めない。千代田線に乗ってもこのエリアから抜け出すことはできないし、六本木方面は瓦礫が積み上がっていて進めない(先に進めないほどの瓦礫の山って、どんなのだろう?)。つまり、行き止まりということ。北上するしかないわけだ。

しかし、北上しても市ヶ谷方面はやっぱり瓦礫で行き止まり。というわけで、まずたどり着くのが戸山シェルターである。

戸山シェルターは、奇妙なところだ。もともとは軍の施設だったという。いまや廃墟同然ではあるものの、悪魔の生態系が明らかに他と違う。遭遇するのは屍鬼の類ではなく、デモノイド。つまり人造悪魔である。アルラウネばかりか、妖樹マンドラゴラ?も、いちおう妖樹ということになってはいるが、これもおそらく人造悪魔だろう。つまり、ここには人の意志が感じられるのだ。

螺旋状の回廊を進んでいく。一本道だが、ダークゾーンやターンフロアなどのトラップもそこかしこにあり、侵入者の行く手を阻もうとする。アイテムも多少は拾える。マッカにマグネタイト、ナイルの水など。泉があり、水を飲むと体力が全快する。また、端末から、妖樹マンドラゴラ?のDDSデータをダウンロードしておくと(ただし、V1型ウィルスが侵入する)、以後、会話でマンドラゴラ?との戦闘を回避できる。

苦労するのは、やはり護衛であるデモノイドたちとの戦闘だ。体力があるので、攻撃魔法を連発しないといけない。ところが、MPの回復はレベルアップに頼るほかないのだ。葛城と泪だけではつらい。強力な仲魔がほしい。おすすめは地母神ヴェスタ。3身合体で造れる。これから先も育てていくことを考えると、相当使える。あと、アルラウネを斃して舐める鞭を手に入れたら、すぐに泪に装備させよう。攻撃力がかなりアップするはずだ。

一番奥まで進むと、別のエリアへ。そこは、うってかわってのんびりした雰囲気のところである。中央の部屋に入ると、初老の学者風の男性がひとり。葛城たちの傷を癒してくれるのだが、その鮮やかさはまるで神業だ。

男性がパチンと指を鳴らすと、おとぎの国の住人のような、トランプの兵士がテクテクと歩いてくる。機械仕掛けの人形が動いている、といった感じだ。男性がハーブティーとスコーンを持ってくるようにいうと、兵士はうやうやしく一礼したあと、奥へ引っ込んでいった。

葛城たちが驚くのを見て、男性は、今のはデミ・ヒューマンだと説明する。実は、この人物は平沢晋博士といい、デミ・ヒューマンの権威なのだ。泪が名前を知っているくらいの有名人である。現在ではこうしてシェルターにこもって、悠々自適の生活を送っているらしい。迷宮内に配されたデモノイドたちも、研究成果の応用というわけ。

そこへ、トランプの兵士が、ティーセットを持って入ってくる。山盛りのスコーンを入れたバスケットを運んでくるのは、タキシードを着たウサギだ。これらデモノイドの動きもどことなくユーモラスで、博士の性格が表れているようだ。世間からはマッドサイエンティストだと思われている博士だが、本人はいたって穏和な人なのだ。自家製のハーブを使っているという紅茶を飲み、ふっくらとしたスコーンに薔薇のジャムを塗って頬張る。珍妙なティータイム。ひとときのくつろぎ。

ところで、つい数ヶ月ほど前にも、制服姿の男性が迷い込んできたという。葛城たちと同じく傷つきながら迷宮を突破してきたその人物こそ、誰あろう西野であった。西野は、その後秋葉原方面に向かったそうだ。会えなかったのは残念だが、無事を確認できただけでもよしとしよう。

平沢博士は、弟子の日下章人くさかあきひとの話もしてくれる。研究所が市ヶ谷にあり、サイバネティック医療を中心に、かなり派手な研究をしているという。マイシテーの酒場で聞いた、市ヶ谷にいる凄腕の医者というのは、この日下のことだったのだ。ただ、博士いわく日下は偏屈な性格なので、簡単に招き入れてくれるかどうかはわからないとのこと。

一度戸山シェルターをクリアすると、以後は近道を使えるようになる。アウトサイダーである葛城たちのことを、平沢博士が気に入ってくれたからだ。入り口付近の扉を開けて先に進むと、博士のいるエリア(平沢研究所)に直行できる。あとで何度か利用することに。

さて、戸山シェルターから北へ行くと、いくつか見知った場所もある。たとえば、ペンタグランマの秘密基地。ただ、ここには都庁から情報が伝わっており、葛城たちは裏切り者として入れてもらえない。あらかじめ言っておくと、どれだけイベントが進んでも、ここに入れるようにはならないのだ。

もう少し北には、鬼子母神。境内には、本殿の奥に庭池があるので、チェックしておこう。池の中央と正面の陸地に、小さな祠がひとつずつ。池の中央に建つ祠は「ざくろのほこら」と呼ばれており、ざくろの形をした鍵が扉につけられていることから、その名がある。もうひとつのほうは、「加護目のほこら」と呼ばれている。名前のとおり、加護目の紋が刻まれている。また、鶴石・亀石という、特徴的な形の石も置かれている。

住職の話では、それらにはもともと深い由来があったのだが、大破壊によって失われてしまったのだという。伝承によれば、「ざくろのほこら」には御神体であるカリテイモが封印されているそうなのだが、扉を開く方法はわかっていない。また、大破壊前に子供たちが歌っていた「かごめの歌」ともつながりがあるらしい。これらの謎は、物語の後半に解き明かされることになる(第8章3節参照)。

鬼子母神の近くには、目白不動がある。目をくりぬかれた不動明王の像が置かれているだけだ。謎めいたこの場所も、やはり、かなり先のイベントと絡んでくるのだ(第6章5節、第10章参照)。

東池袋駅から有楽町線に乗ると、瓦礫があって先へ進めない。結局、シャンシャンシティが次なる目標ということだ。この高層ビルは、いまや「悪魔側勢力による巨大なプリズン」になっているらしい(初台の端末情報)。マイシテーの酒場でも同じ話を聞いた。また、ほかの情報筋によれば、悪魔どもが人間を捕らえては血祭りにあげているという。

というわけで、次回、シャンシャンシティから。今回はこのへんで。

補足

最後に、恒例の補足を。小ネタが1つと、コラムを2本お送りする。

まずは小ネタから。本章でちょくちょく出てきた鬼子母神。雑司ヶ谷に実在するこの場所が、なぜ偽典に登場することになったのか。

鈴木一也大司教がまだ司教だったころ、猊下は『真・女神転生』シリーズの制作スタッフであった。そして、アトラスのスタッフは、制作前に必ずこの鬼子母神でお祓いをしてもらっていたのである。

この「行事」は、あるエピソードがもとになっている。こんな話だ。永井豪氏が『デビルマン』を連載していたとき、突然スランプに陥った。ほかの作品を切っていっても描けないという状態が続いた。だが、鬼子母神でお祓いを受けると、嘘のように描けるようになったという。

かつて鈴木大司教も、ここでお祓いを受けたんだろう。思い入れのあるこの場所を、偽典に登場させたかったんだろう。そんなわけで、鬼子母神はストーリー中けっこう重要な役割を与えられているのである。

コラム:泉

番人が守っている泉は、ちゃんとお金を払って使わせてもらおう。番人の質問に対して泉を汚す者だと答えると、戦闘になる。斃すのはたいてい簡単だが、泉は番人の血で染まり、水質が有害なものに変わってしまう。だから、戦うのは得策ではないのだ。ただし、一度そのダンジョンを出ると、泉も番人も元に戻っている。

泉によっては、アイテムを投げ込むとイベントが発生する場合がある。落とした斧は金の斧でも銀の斧でもなく、ふつうの斧です、と正直に答えて全部の斧をもらった木こりの話があるが、あの要領で選択肢を選ぶと、いいアイテムをもらえる。ただし、属性がCHAOSのときは、逆の選択肢を選ばないといけないらしい。

コラム:邪教の館

悪魔合体を行うこの場所は、荘厳な雰囲気を漂わせてはいるものの、宗教的な施設というには少し異質な印象を訪れる者に与える。それは、「邪教」が何らかの神を奉じる宗教団体ではなく、秘術を追究するいわば秘密結社だからであろう。

この結社の頂点に君臨する人物は、かつて世界の覇権を握ろうとした日本の指導者のひとりであり、戦犯として処刑されたあと、秘法により肉体を再生したのだ、と成沢大輔氏は述べている。大洪水後、カテドラルで決戦が行われる時代のスガモプリズンに、その老人は姿を現した。

偽典にこの人物は登場しない。しかし、彼の弟子たちは東京全土に散らばり、各地の邪教の館において、それぞれが秘術の研究を進めている。より多くの実験を重ねて技術を完璧なものにすべく、悪魔使いたちの協力を求めているのだ。その総本山は「邪教の殿堂」と呼ばれる。おそらく、この殿堂の主は、スガモプリズンの老人の高弟なのだろう。

秘術の中には、悪魔を剣と合体させる高度なものもあるというが、偽典でそれを見ることはできない。ただ、館の主は呪われた品の呪縛を解き放つ術を身につけている。このことから、魔法の品々をよく研究しているらしいとわかる。なぜなら、その品の正体を識別できなければどんな呪力をもつのかを判断し得ず、したがって解呪することもできないはずだから。

なお、あまりに状態の悪い悪魔は合体の秘儀に耐えられないということから、悪魔の治療も行ってくれる。癒しにたいした研究価値はないそうなので、これは秘術の中でも初歩的な部類に属するようだ。


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