地上での冒険が始まる。原宿シェルターの救援に向かわなかった場合、地上に出るのは初めてだ。まずは、雨風をしのげるところを探さなければならない。脱出したはいいが野垂れ死にでは、シャレにもならない。
初台シェルターを出てしばらく進むと、遠くから足早に近づいてくる人影が見えた。それは、山瀬だった。「ひっさしぶりだなぁ!」と脳天気に声をかけてくる。彼はどうやって生き延びたのか。
山瀬いわく、ファームの結界が破れて悪魔憑依現象が始まったとき、さっさと逃げ出してしまったのだという。住民を守るというデビルバスターとしての使命を放棄して。しかもそれを、生きるための知恵だ、などとうそぶく。葛城の胸に怒りが込み上げる。目の前でニヤつく山瀬に殴りかかろうとしたとき、忽然とひとりの男が姿を見せた。長髪できちんとした身なりをしているが、冷たい目が印象的だ。
あなたをお迎えに参りました、と男は言う。自分についてくれば命の保証はする、とも。だが、人間に対しては決して吠えることのないニュートンが、険しく吠え立てる。すると、小賢しい犬だ、といって男は正体を現した。新宿労働キャンプの支配者、堕天使ダンタリオンがそこにいた。
ちなみに、3人で脱出している場合に男の正体を見破るのは、英美である。また、ニュートンは瀕死のときでも、男に対する敵対心を露わにして、けなげにも懸命に唸ろうとする。そのほか、瀕死になったキャラクターがいるときはセリフが微妙に変わるが、大枠としての展開は変わらない。
ダンタリオンは、優秀な人材を自分のキャンプに迎え入れるため、わざわざ出向いたのだ、と話す。だが事実上は、降伏を促しているのだ。降伏すれば、新宿にある強制労働キャンプに連れて行かれるだろう。そこで死ぬまでこき使われることは目に見えている。しかし、断ればダンタリオンと一戦交えることになる。仮に勝利したとしても、受け入れてもらえる場所が見つからなければ、東京中をあてどもなく彷徨うことになるかもしれない。地上には悪魔やごろつきどもがうようよしていることを考えると、殺されてしまう危険性は非常に高い。葛城は難しい選択を迫られることになった。
実は、ここで降伏するという選択をしても、ニュートンか、または早坂や英美が抵抗するので、ダンタリオンと戦闘になる。もちろん、ダンタリオンの言うことを聞かなければ、即戦闘。だが、このダンタリオンは、はっきり言って弱い。銃や剣に対する耐性がなく、火炎系魔法もかなり効くからだ。ただし、アギやジオの魔法で先制攻撃されると死人が出る可能性があるので、速攻あるのみ。撃破すると、トパーズを落とすことがある。
ダンタリオンは、悪魔学においてはソロモン王によって封印された72柱の魔神のひとりで、36個軍団の支配者である。老若男女さまざまな姿をとるところから、異相の公爵と呼ばれている。右手に分厚い本を持っていて、その本には、すべての生き物の過去、現在、未来にわたる思考が書かれている。だが、それを解読できるのはダンタリオンだけであるという。科学と芸術に詳しく、人の心の動きを映画のように映し出して、他人に見せることができるとされている。一説によれば、人間の考えを好きなように変えることができ、また、人間の幻覚を世界のどこにでも送り込むことができるとか。
ゲーム中でもその変身能力を披露してくれた。死霊魔術を駆使するムールムールといい、偽典は神話や悪魔学で説かれる悪魔の能力を、かなり忠実にストーリーに反映している。相当な凝りようである。バールゼフォンのコラムを参照してもらえれば、そのことがいっそうよくわかるだろう。
山瀬が語っているところによると、彼は対化学戦スーツの存在をダンタリオンに話している。葛城たちが必ず生き残ると思ったからそうしたのだという。だが、そのことが具体的な結果にどう結びついたのか、はっきりしない。
振り返ってみれば、スーツ室には5つのケースに対して3着のスーツしかなかった。つまり、あえて2着だけ抜き取られていたわけだが、これは本来ならおかしなことである。第2章4節のコラムに書いたように、悪魔側の当初の計画はシェルターの殲滅にあった。とすると、山瀬から話を聞いた時点で、スーツをすべて持ち去ってしまうのがふつうだろう。
ここに、悪魔のやり口がある。スーツをすべて奪うのでもなく、かといって全員分残しておくのでもない。これは紛れもなく悪魔が考えたことであり、山瀬のアイデアではない。おそらく、山瀬はこういってダンタリオンにもちかけたはずだ。葛城たちは優秀な労働力になるので、生き延びさせたほうが得だ、と。仲間たちを見殺しにするのは忍びなかったのだろう。それを聞いたダンタリオンは、人間を駒にしたゲームを思いついた。それはムールムールに伝えられ、実行に移された。だが、そこは山瀬が口出しできない領域である。彼にしてみれば、悪魔と巧みに交渉して、精一杯仲間の命を救おうとしたつもりなのだ。
後の章でもふたたび採りあげるが(第11章参照)、ここが厄介なところなのである。ストーリーから浮かび上がってくる山瀬は、決して極悪人ではなく、保身を考えつつも非情になりきれない、弱い存在だ。だから、その振る舞いが悲劇的な最期を招いたことに、釈然としないものが残るのである。
愚かしい選択を必ずや後悔させてやる、と叫んでダンタリオンは姿を消した。山瀬も、計画がおじゃんだ、と捨てぜりふを残して去っていく。そこへ、遠くから1台のジープがやってくる。ジープは葛城の前で止まり、ふたりの男たちが降りてきた。彼らの名は、
葛城が初台シェルターの生き残りかどうか尋ねてくる。さっきまでは獰猛だったニュートンも、すっかりおとなしい。信用してもよさそうだ。初台がたどった運命について語ることにする。すると、葛城のほかにも、初台の生き残りが男女ひとりずつ、ペンタグランマに保護されていると教えられる。そして、原宿シェルターもまた、DDMの侵入によって潰滅させられたことがわかる(これは予想された事態だったが)。園田は、葛城と同じくすべてを失って、なんとか原宿を脱出してきたのだ。
園田は、ペンタグランマに来ないかと葛城を誘ってくれる。渡りに船とはこのこと。同じ志をもつ者たちが集まった組織である。参加すれば、生活の拠点を確保しつつ、憎い悪魔どもと戦える。それに、早坂や英美とも再会できるだろう。彼の話では、ペンタグランマにはシェルター出身者がほとんどおらず、シェルターに籠もって安穏と生きてきた人々を毛嫌いしている。しかし、デビルバスターの悪魔に関する知識には一目置いているのだそうだ。申し出を快諾した葛城は、ジープの後ろに乗り込んだ。一行を乗せたジープは、ペンタグランマの前線基地へと向かった。
ところで、3人で脱出した場合、ダンタリオン戦に重大な秘密が隠されていることが近時の研究で明らかになっている。通常、この戦闘が楽勝であることはすでに述べたが、ここであえて全滅してみると、葛城は黄泉比良坂へ送られることになるのだ。そこでの展開は、第2章3節で触れた内容とまったく同じである。だが、この時点で葛城はDCSを入手済みだ。出現する悪魔と会話し、仲魔にすることができる。ここで水妖イヒカを仲魔にしておくと、あとあと役に立つだろう。
黄泉比良坂から舞い戻ったあと、葛城は覚醒する。スーツを着ることを選んだ場合でも、ちゃんと覚醒のチャンスは用意されていたわけだ。だが、このイベントが発見されづらい仕組みになっていることからも明らかなように、とってつけたような感じは否めない。イベントの展開にもう一工夫ほしかったところだ。
頬を叩かれる衝撃で目を開くと、園田と上河が目の前にいた。一時呼吸が停止していたが、ふたりの応急処置を受けて蘇生したのだという。あとの展開は、葛城とニュートンで脱出した場合とほぼ同じ。
ただ、ひとつだけ疑問がある。早坂と英美は一足先にペンタグランマに収容されているのだが、ダンタリオンにやられた際、3人は同じ場所に倒れていたはずだ。なぜ同時に発見されなかったのか。たしかに葛城は黄泉比良坂に行っていたが、それは霊魂(アストラル体+エーテル体)、言い換えれば「生霊」であり、肉体はそのままそこに残っていたはずなのである。
前線基地は、大破壊前の(落合)下水処理場跡にある。地下のスペースを利用し、外からはそれとはわからないようにカモフラージュされており、秘密基地になっている。初台の端末情報で、レジスタンスが先月都心部に進出してきた、というものがあったが、それがここにあたるのだろう。
薄暗く、湿っぽい通路を抜けると、壁を背にして武装したふたりの男が立っていた。園田たちが彼らに帰還の報告をすませると、壁のほうへ進んでいく。壁の一部はホログラフになっており、通り抜けることができるのだ。その先で、葛城たちは、オーラ測定器によって悪魔に憑依されていないかチェックを受ける。憑依されていると、オーラの数値が異常になるのだそうだ。なお、パーティーの誰かにコンディションの異常があるときは、治療室に運ばれて治療を受けたあと、簡易測定器で測定を受けることになる。
そのあと、ペンタグランマのリーダー、渡邊伸明に会いにいく(「健部伸明」と名前が似ているのは偶然か?)。中年といわれるくらいの年齢だろうが、日に焼けた精悍な顔立ちのため、若く見える。紳士的な人物で、葛城たちにねぎらいの言葉をかけてくれる。彼は、デビルバスターがもつ、悪魔に関する豊富な知識をかってくれているようだ。その能力を、地上で生きるすべての人々のために使ってほしいという。渡邊は、紹介のため詰所に幹部を招集した。葛城たちも詰所に向かう。ちなみに、葛城が初台でデビルバスターになれなかった場合(入隊試験に不合格でかつ特例合格にもあずかれないと、こうなることもある)であっても、以後デビルバスターとして扱われる。
詰所で幹部たちに紹介され、葛城が快く協力する旨を述べると、正式にペンタグランマの一員となる。渡邊としては、悪魔と会話して味方につけ、自在に操ることができるというデビルバスターの技能を、ゆくゆくはペンタグランマ全体で共有できるようにしたいらしい。
ニュートンと行動している場合、早坂そして英美と再会することに。渡邊や園田たちは気を遣って部屋を出ていく。詰所には3人と1匹。初台シェルターの詰所を彷彿とさせる光景だ。お互いに生き残れたことを、涙を流して喜びあう。だが、西野の姿はない。葛城の考えを察した早坂たちの表情が曇る。
聞けば、西野も含めた3人が地上に出たとき、やはりペンタグランマの偵察部隊に遭遇し、レジスタンスに参加するよう誘われたのだが、西野だけは断ったのだという。シェルターと家族を守れなかったこと、葛城を犠牲にしてしまったこと、そういった忌まわしいできごとのすべてを、彼は自分の責任だと思い詰めていた。だから、たったひとりで悪魔の跳梁跋扈する東京で生き抜く決心をしたのだ。それは、贖罪の旅。いや、むしろ贖罪のために何をすべきかを探すための、辛く苦しい旅だ。
西野の決意は固かった。誰も、彼を止めることはできなかった。その恐ろしい目が、引き止めることも、ついていくことも許されないと、静かに語っていたからだ。早坂と英美はそのときのことを後悔し、葛城に謝る。だが、葛城がその場にいたとしても、やはり止めることはできなかっただろう。
西野の安否は気になる。しかし、いつまでもくよくよしてばかりはいられない。新しい行動を起こさなければ。早坂によると、ペンタグランマは今、悪魔の手から新宿を解放すべく、さまざまな作戦を展開している。その中で最大級のものが、新宿労働キャンプの解放と都庁の奪回であり、近々決行される予定だという。ふたりは、渡邊に頼んで作戦に参加させてもらおうと思っている。とくに都庁にはバエルが籠城している。由宇香を喰らった悪魔たちの親玉であり、奴の命令によって初台は潰滅させられたのだ。西野隊長の思いを果たすためにも、バエルをこの手で討ちたい。早坂の気持ちは、葛城にもよくわかった。
あとでゆっくり話そう、といって早坂たちは部屋を出ていき、代わりに渡邊たちが入ってくる。葛城にも部屋があてがわれる。園田と相部屋だ。デビルバスターに対する風当たりが強いことを、考慮してくれたらしい。もちろん、空き部屋がなかったということもあるのだろうが。隣室には早坂と上河がいる。英美は女性専用エリアに。
しばらく自由に行動できるようになるので、あちこち回ってみるといい。中は案外広い。話をすべて聞いて回ろうとすると、かなり時間がかかるだろう。全体の位置関係をきちんと把握しておくこと。武器庫や食料庫のほか、薬屋がある。薬屋ではそれまでに入手したアイテムを売りさばくことができる。渡邊のいるフロアでは、いくつかのアイテムも入手できる。ただし、外に出ることはできない。危険だし、下手な行動をとると反感を買うことにもなりかねないからだ。
早坂や英美とも話をしておこう。あまりにもいろんなことが起こりすぎ、ふたりはうまく気持ちの整理をつけられないでいる。まともな感覚や感情が麻痺してしまった、という言葉にそれが表れている。辛いことは思い出したくないので、目先の新宿解放作戦のことだけを考えているそうだ。渡邊は参加を認めてくれそうなのだが、彼以外の幹部たちが難色を示しているという。
その理由は明らかである。園田や渡邊も語っていたように、ペンタグランマでシェルター出身者は冷遇されている。ぬくぬくとシェルターにこもって暮らしてきた、温室育ちのひ弱な奴らだと思われ、見下されている。シェルターが悪魔に滅ぼされていい気味だ、と露骨に言う者すらいるくらいだ。
ペンタグランマのメンバーはみな、つらい過去を背負いながら修羅場をくぐり抜けてきた連中ばかりである。行く所もなく、冷たいコンクリートの瓦礫の上にボロ布一枚で寝る生活。悪魔に怯え、食べる物にも困りながら、毎日ビクビクとネズミみたいに暮らし、死んでいく悲惨な人生。彼らはそんな地獄と訣別するため、ペンタグランマに身を投じた。彼らが信じるのは、「力」だけだ。強い者だけが認められる、徹底した実力主義の世界。エリートたちが法と秩序によって支配していたシェルターとは、まったく違う。彼らにしてみれば、悲劇の主人公を気取るんじゃねえ、と葛城たちに言葉をぶつけてやりたい気持ちなのだろう。
基地内の要所要所に、犬が配置されている。よく訓練されているので、人に対して吠えることも、逆にむやみに媚びることもない。犬は、悪魔に憑依された人間を、もって生まれた感知力で見抜くことができるのだそうだ。シェルターのようなハイテク設備がないこの基地では、その能力が役に立つ。渡邊のアイデアだという。
犬の霊的感知力といえば、伝説では、藤原道長の飼い犬のエピソードが有名である。法成寺建立の際、道長が現場を視察しようと寺の大門の前まで来ると、犬がしきりに吠える。不審に思った道長が陰陽師・安部晴明を呼ぶと、道に
そこで、晴明が紙を1枚取り出して鳥の形に折り、空に飛ばすと、白鷺に変じて飛び去り、1軒の家の前に落ちた。式神によって、呪詛を行った者を探り当てたのだ。これにより、晴明のライバル道摩法師(蘆屋道満)の仕業と判明。道摩法師は、道長の政敵藤原顕光の依頼で呪いをかけようとしたのだった。
このエピソードからもわかるように、犬は昔から人には見えない霊的な存在を感知できるものとされてきた。渡邊は、こうした実践的な知識をもっているわけだ。彼と、彼が率いるペンタグランマには謎が多い。初台の端末情報によれば、ペンタグランマは非公式に米軍の援助を受けている、とのことだった。実際、基地内では米軍から援助された簡易ベッドを使っている、という話を聞ける。ペンタグランマと米軍とのつながりは、いったい何を意味するのだろうか(終章参照)。
何日か経つと、進展がある。葛城たちも、新宿労働キャンプ解放作戦に加わることになったのだ。英美が参加したがっていた、メインの都庁解放作戦でなかったのは少し残念だが、これでも渡邊が渋る幹部たちを説得してくれたのだろう。
詰所で、作戦会議が開かれる。葛城たちのほかに、渡邊と、他のメンバー2部隊が参加している。労働キャンプの内通者である猫娘の協力により、内部の大まかな地図を入手できたことで、作戦のメドが立った。解放作戦は、爆破部隊/解放部隊/陽動部隊の3部隊によって行われる。
葛城たちに与えられた役目は、陽動部隊。キャンプ侵入後、歓楽街を抜けて奥へ進み、管理者であるダンタリオンを弾薬庫爆破と同時に襲撃。ダンタリオンを引き止めておいた猫娘を逃がし、応援部隊が到着するまで持ちこたえろという。キャンプの最深部まで侵入しなければならず、かなり危険な仕事だ。要するに捨て駒である。だが、実力を認めてもらえるまたとないチャンスでもある。
作戦会議終了後、自室で待機するよう命じられる。休息して、翌日になると作戦開始だ。まずは、武器庫で装備を調える。モスバーグM500と64式自動小銃を選択でき、銃に合わせて弾薬も支給される。フリッツヘルムとサーベルももらえるが、サーベルよりはセラミックブレードのほうがよいので、上書きされないようにあらかじめ装備から外しておこう。出発直前には、傷薬セットと救急医療セットをそれぞれ3個ずつ受け取る。救急医療セットは体力を大幅に回復してくれるので、できるだけ温存しておくのが得策だ。
基地の外に横付けされたトレーラーに、変装して乗り込む。月に一度、キャンプ内に食糧を補給するためのものだという。作業員として、物資を搬入するフリをして潜入するのだ。一路労働キャンプへ。道中遭遇するザコ悪魔を蹴散らし、キャンプに到着。以前歌舞伎町があったところだ。入り口のところで見張りのバール兵に誰何されるが、適当にごまかして中へ。ちょっとヒヤリとさせられる場面だ。
しばらく進むと、予定通り倉庫には猫娘という悪魔人がいる。悪魔人とは、憑依された悪魔と融合した人間、もしくは悪魔と人間のハーフのことを指す。彼女は後者のほうだろう。ここで作戦を確認。メンバーは散らばり、任務を遂行することになる。ところが、葛城たちがバール兵に変装するための服が用意されていない。猫娘がいうには、危うくバレそうになったので、服を調達できなかったのだそうだ。
いったいどうするのか。兵士の詰所に案内される。力ずくで手に入れろ、という。そんな無茶な。が、ほかに選択肢はない。中にはバール兵がいて、当然戦闘に。見張りなどに正体を見破られそうになったときは、面倒なことになる前にその場で抹殺しろ、と命じられてはいたが、まさかこんなことをさせられるとは。
楽勝である。服を奪い、その場で着替える。英美は娼婦の服を着せられ、上河は稚児用の服を着せられて情けない姿に。準備が整い、ようやく本格的に作戦が始まる。ここからは猫娘とは別れて行動することになる。彼女はダンタリオンにうまく取り入って気に入られている。イニシエーションの儀式を終えたダンタリオンを足止めし、時間を稼いでくれるという。
固定悪魔(ガーディアン・デビル)を斃して奥へ進むと、そこはバール兵のための歓楽街になっている。歌舞伎町の名残だろう。猫娘の知り合いの悪魔人、バーバラの誘導にしたがって進む。化学プラントなどがあるエリアへ侵入したら、そこからは自力で進まなければならない。バーバラから薬をもらって体力を回復。変装を解く。出発後は地図を持っている園田が誘導してくれる。地図は、猫娘からの情報に基づいて作成されたものだ。
中は広いが、誘導にしたがえば迷うことはない。固定悪魔が多いのはうっとうしい。バエル信者タランテラや、邪鬼オークチーフなどとは何度も戦うことになるだろう。無駄な戦闘を避けるため、ワンダリングの悪魔を仲魔にしておくのもいい。樹精ジプシーローズや魔獣ケットシーあたりが候補になる。ちなみに、悪霊・色情因縁霊や屍鬼ボディコニアンも出現するのだが、こいつらは娼婦たちのなれのはてなのかもしれない。
行動の途中で、園田の警告を無視してあちこち立ち寄るとどうなるか。たとえば、香水の香り漂う部屋では、バール兵たちと戦闘になる。撃破するのは簡単だが、娼婦たちに恨まれてしまう。労働エリアでは、ろくな休息も与えられないまま発掘作業に従事させられている奴隷たちを見かける。一部の人は、精神に異常をきたしてしまっている。また、バール兵に化けた解放部隊のメンバーと出くわし、怒られる場合も。アイテム等はあまり手に入らない。さっさと作戦を遂行したほうがいいかも。
奥へ奥へと進んでいくと、園田が焦り出す。弾薬庫を爆破する時刻が迫ってきているのだ。さらに進むと、爆破部隊から通信が入る。定刻通り、爆破を始めるという。すると、遠くのほうから、爆発音が連続して聞こえてきた。寄り道していたから、というわけでもないのだろうが、葛城たちの行動が遅くて規定の時刻に間に合わなかったようだ。そうなるとダンタリオンを足止めしている猫娘の身が危うい。急がなければ。
ダンタリオンの部屋の前まで来ると、扉の向こうで聞き覚えのある声がする。「白々しい嘘はお止め! 薄汚い雌猫が!」。間違いなく奴である。裏切り者の猫娘を締め上げているようだ。部屋に突入すると、ダンタリオンは一瞬狼狽の色を見せたものの、さすがに次の刹那にはすべてを察したようである。猫娘は隙を見て逃げ、素早い動きで出口へと駆け出す。葛城たちは、彼女が助けを呼んできてくれるまで、ダンタリオンを食い止めなければならない。
ふたたびダンタリオンと戦闘。だが、今度のダンタリオンは、はっきり言って強い。剣・魔法ともに通じにくいうえに、体力も高い。せっかく与えたダメージも、ディアで回復されてしまう。逆にダンタリオンの魔法攻撃(ザンマ・アギラオ・ジオラ)は強烈で、一撃でパーティーに死人が出る。下手をすると全滅だ。剣・銃と戦闘補助系の魔法、それに回復用のアイテムを織り交ぜながら戦うのが基本だが、マホロギを使えるなら戦闘を有利に運べるかもしれない。
DOS版ですでに強敵だったダンタリオンだが、Windows版のダンタリオンIIは、恐るべき難敵になっている。対魔力耐性がアップしたこともあるが、それよりも相手の攻撃回数が多すぎるのだ。原因は、適切なウェイト処理がなされていないことにある。高速なPCほど、ボスが強くなってしまう。素人並みの設計のまずさだ。
そこで、やむなく多くの裏技が開発されることになった。ウェイト処理を加重するソフトを使う、初台のバーチャルトレーナーから装備を持ち出す、キャンプ内に出現する屍鬼ボディコニアンのゾンビバイツをわざと受けてゾンビになる、など。近時、デビルアナライズで時間を止めている間に味方のターンが回ってくるというテクニックも発見された。制作者側に問題がある以上、こうした裏技は必要悪といえる。
一方で、なんとか正攻法で斃したいという要求ももちろんあって、試行錯誤が繰り返されてきた。工夫は、防御方法に関するものに集中している。たとえば、黄泉比良坂で水妖イヒカを仲魔にし、水の壁でアギラオを無効化するという方法。いいアイデアだが、3人で初台を脱出し、しかも最初のダンタリオン戦でわざと全滅するというルートをとらないかぎり、この方法は使えない。
ほかにも、初台で妖精レプラホーンを仲魔にし、装備している妖精の槌を戦闘中に使うとテトラジャの効果が発生するので、これでタルンダを防ぐという方法がある。地味だが、初台でどのルートを選択していても使えるという点で優れている。また、初台の道具屋で売っているブレスレットはディの倍以上の回復効果があるので、これを使うのがいいという意見もあった。ただ、450マッカもするだけに、大量に購入することは難しいだろう。
最近編み出されたテクニックとしては、店でおまけとしてもらえる、黒のタリスマンを使うというものがある(第7章2節参照)。マグラの魔法の効果が発生し、タルンダもふくめた一切の魔法攻撃を防ぐことができる。一方、カジャ系魔法は無効化されないので、パーティーの戦闘力を上げることは可能だ。たいへんスマートなアイデアだが、黒のタリスマンを手にできる確率は相当低い。ひたすらアイテムを売り続けても、数時間はかかるという。
いずれにせよ、初台のバーチャルトレーナーで十分すぎるほどレベルアップしたうえで、さらに労働キャンプ内でもレベルを上げるという手間をかけなければ、勝利はおぼつかないと思われる。加えて、月齢にも注意しておかなければならない。ダンタリオンの攻撃力は、満月のとき最高になり、新月のとき最低になるからだ。ちなみに、満月のときは葛城たちの攻撃力も高くなるが、それを差し引いても、なるべく新月に近いときにダンタリオンと戦うのが賢明である。
なんとか斃すことができた――と思ったら、ダンタリオンは煙のようになって逃げ出していく。いまに後悔させてやる、といって。前にも聞いたセリフだ。そこへ、猫娘が呼んできた他の部隊が到着。彼らは、ダンタリオンを撃退した葛城たちを賞賛する。応援が来るまで持ちこたえるのが任務だったのに、強敵をやっつけてしまったのだから。ようやく、ペンタグランマから信頼を勝ち取ることができた。
秘密基地へ帰還し、しばしの休息をとる。翌日、基地内をふたたび巡ると、周囲の評価はずいぶんと良くなっている。渡邊からもよくやってくれたと感謝される。また、いろいろと新しい情報も聞ける。ひとつは、ダンタリオンを撃破したあとの労働キャンプの顛末について。もうひとつは、都庁解放作戦についてだ。
労働キャンプは、葛城たちをふくめた3部隊の潜入部隊が任務を遂行したあと、突入部隊によって制圧された。弾薬庫の爆破と同時に突入したものと思われる。猫娘が呼んできた応援は、他の潜入部隊ではなく、この突入部隊だったのかもしれない。
キャンプ内では、元ペンタグランマのメンバーも含め、多数の人々が奴隷として働かされていた。彼らはすべて解放されたのだが、ハッピーエンドというわけにはいかなかった。みな精神をやられ、廃人同様になっていたからだ。なかには、バエルに心酔している者もいて、解放後自殺してしまったケースさえあるという。
一方、新宿都庁解放作戦は、思いのほか手こずっているようだ。バエルは、部下のアドニスを従え、最上階に籠城しているのだという。悪魔たちはいたずらに戦線を広げず、ペンタグランマを都庁で迎え撃つことにしたのだ。いわば戦略的撤退である。
ところが、ペンタグランマのメンバーたちは、悪魔がこんな高等戦術を使うとは思わなかった、などと言っている。葛城たちには信じられないような発言だ。ムールムールの知性の高さは、恐るべきものだった。初台シェルターや原宿シェルターは、奴が放ったDDMによって潰滅させられたのだから。
ペンタグランマはいままで、そのつど犠牲を出しながらも勝利しつづけてきた。それが、悪魔に対する油断につながってしまっている。なまじ、下級悪魔と接してきて実戦経験が豊富なだけに、悪魔に対する知識を軽視する傾向が生まれているのだ。渡邊が危惧しているのもその点で、元デビルバスターのシェルター出身者を積極的に受け入れているのも、なんとか知識と経験の融合をはかりたいと考えているからだろう。
ただ、初台のことを振り返ってみると、シェルターは知識に溺れ、実戦経験を軽視するところがあった。だからこそ、悪魔の奇襲にうまく対処できなかったのだ。すると、傾向の違いこそあれ、ペンタグランマとシェルターは、悪魔を見くびっているという点では、瓜二つだといえるのかもしれない。
応援部隊の要請がいつ入るかわからないので、葛城たちは出動に備え、自室で待機することに。応援部隊への参加は、望むところだ。初台を潰滅させた悪魔どもの親玉、バエルと対決できるのだから。渡邊に会いに行くと、一睡もせずに、難航する作戦を指揮する彼の姿を見ることができる。部下のため、我が身を削っての労力を惜しまない姿は、西野を彷彿とさせるところがあった。
仲間たちと話をし、自室で休息する。これを数日繰り返すと、渡邊からまた呼び出しがかかる。至急、都庁へ出動してもらいたいとのこと。事態はまったく思わしくなく、作戦失敗どころか、部隊が全滅しかねない状況なのだという。武器庫で弾薬を補充して準備を整え、集合場所のB1Fへ。
都庁へ出発。例によって自動的に移動し、しばらくすると到着。大破壊前には駐車場だったとおぼしきホールに足を踏み入れる。そこには血と硝煙の臭いが充満しており、激しい戦闘があったことをうかがわせた。その先は、まさに修羅場と化していた。数多くの遺体が安置されているばかりか、喰い荒らされた死体も転がっている。
ペンタグランマは、消耗戦が苦手なようである。時間が経つにつれ戦況は悪化の一途をたどっている。それが焦りを生み、さらに泥沼にはまっていく。悪循環である。戦闘のあまりの激しさ、被害の大きさ、そして多くの仲間の死は、百戦錬磨のはずのペンタグランマにとっても、想像を絶する衝撃だった。もはや戦意を喪失し、隠れている人々さえいる。
それでも、なんとか3Fまでは制圧した。だが、そこから上では相当苦戦を強いられているらしい。上層は南北のタワーに分かれており、南のタワーには精鋭部隊が攻め込んだという。応援部隊は、この第一次討伐隊と合流して、タワーの攻略に参加する予定だ。
救援に向かう前に、2Fで端末をチェック。ターミナル回線とリンクしている端末では、セーブが可能。もうひとつの端末では、マップデータがダウンロードできる。こちらも忘れずに。
3Fの中央で、先遣隊から作戦の確認を受ける。南のタワーが受け持ちである。どちらかの最上階にバエルがいる。エレベータで上へ。しかし、33Fより上にはエレベータでは侵入できない。なので、歩いて階段をのぼっていくしかない。33Fで降りると、出たところはいきなりダークゾーン。視界ゼロである。しかも、ANSが効かない。ダークゾーンは、光のみならず、赤外線や電波などもすべて吸収してしまう魔法の闇。そのため、センサーが働かず、衛星からの情報も届かないのだ。ここより上はマップデータもない。
ただし、ここでちょっとしたテクニックがある。階段やエレベータのある場所ではANSが働くので、出たところから一歩下がればいい。そうやってその階の構造をつかんでから攻略を始めよう。実際のところ、都庁は初の本格的なダンジョンなので、この手を使わないとなかなか先へ進めないだろう。あと、ダメージを受けたら一時退却するのも手だ。一方通行のドアがあって、帰るのは楽。3Fまで戻ると、ペンタグランマの仲間が傷を癒してくれる。
33F〜38F。どの階でも、上りの階段付近では必ず固定悪魔が出現する。妖獣ヘルハウンド、マシン・T-92α、傀儡ボーンゴーレム、降天使ヴォラクなど。それらを蹴散らしながら、上を目指す。落とし穴などのトラップもあるので注意。あちこちで、魔物に殺されたレジスタンスたちの無惨な死体を目にする。ちなみに、香が入った宝箱などもあるが、回収のために無理をするのは禁物だ。
39F。このあたりがペンタグランマの到達した最前線らしい。少し進むと、幾人かの死体が転がっている血溜まりの中に、虫の息で倒れているひとりの男を発見する。男は、3種類の弾薬を差し出してくる。そして、傍らに落ちているセラミックブレードとバトルチェーンソーを指さすので、葛城たちはそれを拾う。死んでいった仲間たちの仇をとってくれ、と男に懇願される。ここで入手したSS光子弾は、対バエル戦で役立つはずだ。
男は、最上階は目の前だというのだが、ここから先もけっこう道のりは長い。戻って回復することも必要になるだろう。ただし、その瀕死の男に呼び止められてしまうので、エレベータを使って戻ることに。もちろん、そのときはもう一度33Fからのぼり直さないといけない。なぜか固定悪魔も復活している。
40F以降、ダンジョンはますます複雑になってくる。慎重に進もう。43Fあたりで落とし穴に落ちると、MAGを大量に入手できる場所が見つかることも。敵もなかなか強力だ。気をつけたいのは、堕天使アンドラス。その攻撃をまともに喰らうと、パーティーに死人が出る。だが、まれに炎の剣を落とすことがあり、これを入手して仲魔に装備させれば、対バエル戦を優位に進められる。
無駄な戦闘を避け、会話で仲魔を増やすのもひとつの手だ。とくに、妖魔プシュケは魅力的。リカームが使えるからだ。斃すとリジェネレイト7を落とすが、仲魔にしたほうが得策なのはいうまでもない。リカームがあるのとないのとでは、対バエル戦の厳しさがずいぶん違ってくる。
最上階は45F。フロア中央の十字路まで来ると、ひとりの青年と、悪魔たちが立っている。青年は、アドニスという悪魔だ。あまり強そうには見えないが、知性は(ムールムールほどではないにせよ)なかなか高いらしく、人間の言葉を操る。彼は葛城たちの力を見くびっており、戦いをゲームとして楽しもうとする。自分が戦うまでもない、と下僕の悪魔たちと戦わせようとするのだが、その前にわざわざこちらの傷を癒してくれるのだ。ボロボロになった者を倒しても、おもしろくないからと言って。
アドニスの背後に控えていた悪魔たちが襲ってきて、3連戦となる。2体ずつ、計6体の悪魔と戦う。まずは堕天使ガミジンと妖魔プシュケ。次が樹精ドリアードに妖魔クピト。そして最後が、龍王メリジェーヌと妖精ホブゴブリン。魔法攻撃や、魅了などの特殊攻撃には注意しよう。
すべて斃すと、アドニスはかなり驚いた様子。だが、懲りずに葛城たちを全快させたうえで、戦おうとする。魔人アドニスと戦闘に。だが、こいつは弱い。めちゃくちゃ弱い。軽く撃破。すると、捨てぜりふを残して逃げ出してしまう。死者さえ蘇らせるという宝珠を残していくので、それを使ってふたたび全快(ほとんどその必要もないだろうが)。奥の部屋にいるのが、都庁の主バエルである。葛城たちがのぼってきたほうのタワーにいるあたり、因縁を感じる。いよいよ決戦のときだ。
広間の中央奥にある玉座に君臨する魔王バエル。不敵な笑みを浮かべている。アドニスごときを破ったくらいで私に勝てると思うな、そう言ってバエルは立ち上がった。「せめてもの褒美に、貴様らをまとめてあの世に送ってくれるわ!」。室内に重低音が響いた。それが、戦闘の合図となった。
バエルは、かつては「雲に乗る者」「強き者」などの称号をもつカナアンの神バールであり、嵐や雷を司っていた。このことはふたたび取りあげることになるので注意しておこう(第11章参照)。バール神は「王子バール」を意味する「ベルゼブル」とも呼ばれていたが、唯一神を崇拝するヘブライ人によって貶められ、「ベルゼブブ」(蠅の王)と呼ばれるようになった。カナアンの伝承や聖書によれば、バールの配偶神はアスタロスである。
中世の魔術書では、バエルはソロモン王に封印された72柱の魔神のひとりで、しばしばその筆頭として挙げられるという。66個軍団を率いる魔界の有力者で、「東の王」として地獄の東方を治めるとされる。魔神の中でももっとも醜い者といわれ、人間、猫、ヒキガエルの3つの頭に蜘蛛の胴体と8本の足をもった姿が一般的。その声はしわがれているそうだ。人間を透明にする術を教えてくれるともいう。
この大悪魔が弱かろうはずがない。実際、相当苦戦するはずだ。初めてプレイしたときは、ダンタリオンかこいつかのどちらかにやられてしまってゲームオーバー、というパターンが多い。マハザンマやフロッグタン攻撃で、パーティーのメンバーが次々と殺されていく様は、見ていてつらい。パーティー内で最低ひとりは回復役に徹する必要がある。蘇生手段も確保しておきたい。それでも、マカジャマでこちらの魔法を封じてくるほか、ディアラマでダメージを回復してしまう。難敵である。反撃に転じるときは、魔法よりも剣や銃を使うこと。SS光子弾をありったけぶつけてやろう。
しぶといバエルをなんとか斃すと、葛城は覚醒する。ここまででまだ覚醒していなかった場合は愚者から異能者に、すでに覚醒していた場合は、覚醒者になる。新しい技能を覚えるほか、覚醒の影響で身体はまったくの無傷に。ここでの覚醒もまた、因縁が絡んでいるのだが、そのことはずっとあとになってから明らかになる(第10章参照)。
勝利の余韻に浸る間はなかった。虫の息のバエルは、最後の力を振り絞り、葛城めがけて鋭い突きを放つ。そのとき、葛城をかばって飛び出したのは上河だった。上河は胸を貫かれてしまう。静かに微笑み、目を閉じる彼の体から、すべての力が抜けていく。
そこへ、ペンタグランマの戦士たちが救援に到着。だが、バエルはすでに斃されたあと。彼らは驚喜するが……。上河の死は全員に大きなショックを与えた。ただ、そこは修羅場をくぐり抜けてきた彼らのこと、立ち直りも早い。葛城たちを励まし、基地へ帰還する。上河は、基地で手厚く弔ってやることにする。
アドニスは、もともとギリシャ神話に登場する美少年で、穀物および死と復活の神である。だが、アドニスの神話的背景は奥が深い。しかも、穀物神が持つ「死と再生」という性質・イメージは偽典の主題でもある(第2章3節のコラム参照)。そこで、このコラムではアドニスの神話的背景について、やや詳しく述べてみたい。なお、あえてその「正体」について伏せてある部分もあるが、この点については第10章を参照していただきたい。
アドニスは、キプロス島のパポスという町の王キニュラスと、その王女スミュルナとの間に生まれた子である。近親相姦によってスミュルナは身ごもったのだ。美の女神アフロディテの呪いのためである。不義の子の存在を知った王はスミュルナを殺そうとするが、スミュルナは
美しいアドニスは、美を愛するアフロディテに愛された。だが、一時アドニスが冥界の女王ペルセポネに預けられたとき、ペルセポネもまたアドニスの美しさに夢中になってしまう。ふたりの女神はアドニスを巡って争ったが、主神ゼウスが仲裁に入り、結局1年の2/3はアフロディテと地上で暮らし、残りの1/3は冥界でペルセポネと暮らすことになったのである。これは、春に芽吹き、冬には枯れる植物のサイクルを象徴しており、アドニスが穀物および死と復活の神とされるのは、このことによる。
のちに、アドニスは狩りの最中にイノシシに突き殺され、アフロディテを大いに嘆かせた。アドニスから流れ出た血から生じた花は、今ではアネモネと呼ばれている。一説によれば、アドニスが殺された際に切断された男根から、プリアポスという神が生まれたという。このプリアポスは、エジプトのオシリスと同一視されたそうだ。
アドニスは、シリアを通って、キプロス島そしてギリシャにもたらされた穀物神である。そのことは、今挙げたエピソードにおいて、その誕生と死に何らかの形で植物がかかわっていることからもわかるだろう。そして、アドニスという名は、セム語の「アドーン」すなわち「主」を意味しており、ヘブライ語の「アドナイ」に対応する。つまり、もともとは主神級の神だったのだ。このルーツの影響は時代が下っても残っていた。『魔術パピルス写本』(初期キリスト教時代に広く流布していた悪魔祓い、祈願、まじない、呪文を集めた魔術本)によれば、イエスとアドニスの名前は魔術的には同じ効果を発揮したという。言い換えれば、本質的に同じ存在だと考えられていたのである。
こうして、オシリス――アドニス――イエスというつながりが見えてくる。とすると、このラインに対応して、イシス――アフロディテ――聖母マリアというラインもありそうだと推測できる。そして実際に、このラインはあるようなのだ。この点については別のところで書きたいと思う(第6章4節のコラム、第12章参照)。
ひとつ付け加えておくと、アドニス崇拝において『アドニスの園』というものが儀式に用いられた。土を入れた籠または壺(小さな壺を数多く結合した祭儀用陶器だったという)に、小麦や大豆、キビなどいろいろな草花の種を播きつけ、女たちが8日間栽培したものである。復活祭(イースター)の時期に芽が出るようにするのだが、根がないのですぐに萎れる。その籠または壺は、死せるアドニスの像と一緒に海か泉の中に投げ込まれた。これは、植物が芽吹いて適度な水(雨)を得ること、つまり豊作を祈願する儀式であった。共感魔術に分類される魔術の一種である。壺は子宮を表し、海は太母神を象徴するとされる。こうした儀式は、アレクサンドリアの巫女たちが行った記録が残っているほか、地中海沿岸諸国で広く行われたようである。
「それがどうした?」と思う人は、『真・女神転生RPG基本システム』の、「ブフ系攻撃魔法」の解説を参照してほしい。そこには、「この魔法は『還らぬアドニスの園の書』に記されており……」という記述があるはずだ。おそらく、『アドニスの園』――水――ブフ系魔法という連想がはたらいたのだろう。
基地へ凱旋する。バエル打倒のニュースはすでに伝わっており、中は色めき立っていた。渡邊のもとへ行き、ねぎらいの言葉を受ける。明日からは、都庁が新しい前線基地になるのだそうだ。そして、上河はペンタグランマが責任をもって弔ってやるとのこと。
これからも、ペンタグランマは、新宿を拠点としてさまざまな活動を続けていくことになる。バエル亡きあとも、その権威は消え去っていないからだ。たとえば、バエルの部下バールゼフォンが、代々木に新たな労働キャンプを建設したという。こうした悪魔の拠点を、片っ端から潰していく必要がある。戦いはむしろこれからなのだ。「今後も、君たちの活躍を期待している」と渡邊は言葉を締めくくった。自室に戻って休息。
翌日、基地内を歩き回ってみると、葛城たちは一躍英雄になっていた。称賛に羨望が混じった言葉をつぎつぎと贈られる(ご褒美のキスをくれる女性も)。都庁解放作戦で功績を挙げた者だけが、都庁に移れるらしいのだ。悪魔を自在に操るデビルバスターの能力も、高い評価を受けるようになった。ちなみに、都庁解放作戦の負傷者は、大破壊前のデパート跡を利用した居住区で休養しているようだ。
早坂や英美の話も聴こう。ふたりとも、まだバエルを斃したという実感が湧かないと言っている。上河を失ったこともそうなのだろう。それでも、シェルターで犠牲になったみんなの仇を討てたことの喜びは大きい。また、シェルターにいたころには味わえなかった達成感を感じるのだという。たぶん、地上の開放に貢献しているからだろう。ただ、これから先、できれば隊長を捜しに行きたいと英美は考えているようだ。
その後、葛城たちは新拠点の都庁に移ることになる。ジープに乗って移動し、都庁へ。中は、基地として使えるように一応整備されていた。まるで何ヶ月も経ったかに思えるその様子を見て、メンバーにはようやくバエルを斃した実感が湧いてきた。そこに猫娘がやってきて、いっしょに渡邊のところへ。彼は一足先にこちらに来ていた。渡邊からあらためて礼を言われ、活躍を期待していることを伝えられる。
用意してくれた新しい部屋へ、猫娘が案内してくれる。葛城は、北塔38Fに個室を与えられた。そのフロアの一番北に早坂と園田の部屋があるのだが、ヒーローとなったはずの彼らがなぜ個室をもらえないのかは、謎だ。英美は南塔38Fの一番南の部屋に。ちなみに、北塔は男性居住区、南塔は女性居住区というふうに、きっちり分かれている。秘密基地でもそうだったが、トラブルを避けるため、このあたりの規律は厳格なのだろう。
自由に行動できるようになるので、あっちこっち回って酒宴に参加してもいい。が、聞けることのほとんどは酔いどれのタワゴトである。みんなバエルを斃したことで浮かれまくっている。あとの悪魔どもは余裕だとか、地上解放も夢じゃないとかいっている。ほんの数日前までここが戦場だったとは、信じられないくらいだ。
労働キャンプから連れてきた悪魔人たちも多数見かける。前述のとおり、彼らは悪魔からは蔑まれ、人間からは忌み嫌われる存在だ。実際、ペンタグランマからもかなり警戒されている。もともと悪魔側についていたということもあり、反乱を起こすんじゃないかと疑われているのだ。悪魔人の側の反応も複雑である。悪夢のような労働キャンプから解放してくれて感謝している、という者もいれば、腹の底では好ましく思ってないくせに、とペンタグランマを偽善者呼ばわりする者もいる。ただ、渡邊は人類と悪魔人との共存を望んでいるという。なかなか斬新な発想だといえるだろう。もっとも、お人好しすぎるという批判もあるのだが。
2Fの端末から、AMSデータと水妖ネレイドのDDSデータをダウンロードできる。B1Fでは新しい装備に交換してくれる。ボディーアーマー、メタルグラブ、アタックブーツを入手。形見のDBブルゾンが消えてしまうので、残したいなら装備から外しておくこと。弾薬の補給も可能だし、食料庫もある。設備はひととおりそろっているようだ。なお、宝箱からは物夫の香や宝玉を回収できる。
酒宴は3日3晩続く。早坂と園田もけっこう呑んでいる。酔いつぶれたり、二日酔いになったり。さすがに英美はしっかりしたものだが。とはいえ、あの渡邊でさえ、「年甲斐もなく興奮してしまって、なかなか寝つかれなかった」なんていってるくらいなのだ。ほかは推して知るべし。戦勝気分がなかなか抜けない。バールゼフォンらに対抗すべく、新しい作戦会議を開かなければならないのだが……。そういえば、親玉を斃されたわりには悪魔どもの動きは静かである。ふつうならもっと混乱するか、そうでなかったら報復してくるはずなのに。
葛城たちが主要な作戦に参加して深く関わっているとはいえ、ペンタグランマはやはり謎めいた集団だ。どういう経緯で生まれ、どんな戦いを経て新宿まで進出してきたのか。資金源はどこにあるのか。集団戦のノウハウをどうやって会得したのか。渡邊が教えたのだとすると、彼はそれをどこで学んだのか。わからないことだらけだ。
そもそも、「ペンタグランマ」という名称も意味深である。これは「ペンタグラム(五芒星)」と同じ意味であり、実際五芒星がペンタグランマのシンボルマークになっている。南塔最上階の会議室にも、タペストリーみたいに巨大な、この紋章入りの旗が掲げてある。しかし、五芒星といえば魔法陣でもおなじみの、魔術的なシンボルでもある。
5という数は錬金術において重要な意味をもつ。2という偶数と、3という奇数を結合させた、完全な数だからだ。錬金術の究極の目的である賢者の石も、第5元素と呼ばれていた。ところで、薔薇の花びらは多く5弁である。かつて、この薔薇をあしらったシンボルマークをもち、白魔術の奥義を究めたとされる秘密結社、薔薇十字団が存在した。その奥義は、フリーメーソンの一部に受け継がれたという。ペンタグランマは、米軍の援助を受ける過程で、こうした魔術の継承者と接触していた可能性も考えられるのだ。
その証拠とまではいかないが、ペンタグランマの結社的性格はストーリー中でも見て取ることができる。たとえば、渡邊が自分のことを「渡邊さん」、またはたんに「リーダー」と呼ばせている点だ。おそらく、ペンタグランマは全体で数百人規模の集団になっているはず。しかも軍事組織である。それにもかかわらず、かなりフラットな関係を目指している。それに、都庁の会議室には円卓が置かれていた。アーサー王伝説にもあるように、円卓は対等な関係の象徴だ。悪魔が力による序列にこだわることに、対抗する意味もあるのかもしれない。渡邊の理念もあるだろう。が、筆者はここに、秘密結社としてのペンタグランマを垣間見る気がするのだ。
酒宴が始まってから3日後。葛城がベッドでまどろんでいると、突然、下のほうでものすごい爆音が。慌てて起きあがると、園田が部屋に飛び込んでくる。悪魔の奇襲だという。百戦錬磨のレジスタンスたちも、虚をつかれてはひとたまりもない。園田とともに部屋を飛び出し、応戦に向かう。
部屋を出てすぐ、いきなり正体不明の強大な悪魔が姿を見せる。葛城が鋭い一撃を浴びせようとすると、剣が当たる寸前に悪魔は姿を消してしまう。そこにペンタグランマの人々がやってくる。アドニスが、悪魔の軍勢を率いて正面から襲ってきたため、下の階は大混乱に陥っているらしい。渡邊の指示を仰いできてくれと言われるので、渡邊の部屋へ。
部屋の前まで来ると、扉の先で何発かの銃声が響く。急いで部屋に入ると、渡邊が銃を手にして立っており、足下には1人の男が死体となって転がっていた。顔を撃ち抜かれ、もはや誰なのか判別がつかない。渡邊は無事だったようだ。悪魔に憑依された若者が襲ってきたのだという。戦況の確認をしなければ、といって葛城たちには目もくれず、彼は部屋を出ていく。
そこにふたりの男女が入ってきて、応援の要請を受ける。3Fまで悪魔の侵入を許し、防ぎきれないというのだ。だが、3Fに降りてみると、なぜか誰もいない。ひっそりと静まり返っている。大混乱のはずではなかったのか。ふたりは、葛城たちに待機しているように言い、様子を調べに行くが、それっきり戻ってこない。おかしい。いくら何でも連絡くらいは入れるはず。葛城たちが不審に思い始め、俺たちも行こう、と園田が声をかけたとそのとき……。
バエル様の仇、と叫んでアドニスが攻撃をしかけてきた。だが、その背後から謎の声。「バールハダド」という名の悪魔らしい。その声を聴いた瞬間、葛城たちは身動きがとれなくなってしまった。声は、アドニスの軽率な行動を戒める。アドニスは、貴様の命令など受ける筋合いはない、と不服をいいながらも、声の主の力を恐れているようだ。
ここで殺してしまうよりも、労働力の足りない代々木労働キャンプに奴隷としてぶち込み、そこで働かせつつも、いたぶってやればよい。そのほうが高貴な選択だ、とバールハダドはいう。アドニスは、自分もそう思っていた、と強がりをいいつつも、しぶしぶ香水瓶を取り出し、葛城たちに香水を振りまく。漂う香りをかぐと、身動きのとれないふたりは、なす術もなく意識を失った。
葛城は、代々木労働キャンプの牢獄に放り込まれる。朦朧とした意識を振り払い、体を起こすと、気絶しているあいだに装備をすべて奪われたことに気づく。まずは、周囲の状況を把握してみる。牢の中に窓はなく、入口には鉄格子がはまっている。鉄格子の向こうには、廊下に続くドアがある。鉄格子とドアで二重にロックされているわけで、力ずくでこじ開けることは不可能だ。それに、たとえ開けることができたとしても、施設の構造がわからなければ脱出もままならない。園田も、葛城と同じように監禁されているのだろうか。無事を祈るほかない。
暴れてみたら何かあるかも。大声を出し、鉄格子を揺さぶる。すると、扉が開き「うるさいっ! 大人しくしていろ!」と言って、なんと山瀬が入ってきた。彼は、今度は代々木の支配者バールゼフォンに取り入っているという。葛城に怒りがこみあげる。だが、山瀬はひょうひょうとした様子。「俺は生き残るために、ちょいと知恵を使っただけだぜ」などとうそぶく。
山瀬は、葛城にアームターミナルを返してくれる。ただし、マッパー(ANS)は調子がおかしくなっていたので、入っていないという。それに、「ちょいと改造しといてやった」とのこと。言いたいことだけ言うと去っていく。
入れ替わりに、バール兵がふたり入ってくる。両脇を固められ、キャンプの中を引き回されてバールゼフォンのもとへ連行。部屋には、園田もいた。無事でよかった、とお互いに声をかけようとするが、バール兵におもいっきり脇腹を小突かれ沈黙する。
バールゼフォンが口を開く。「おまえたちはあの偉大なバール様にたてつき、あまつさえ、手にかけるという重大な罪を犯したのだ」。だが、この労働キャンプに来たからには、一介の労働力にすぎない。脱走しようとすれば、死が待っていると奴は脅す。園田が歯向かう。「まじめに労働しても、用済みになったら捨てられるだけだ」。すると、脇のバール兵に殴りつけられ、苦痛のあまり彼はうずくまってしまった。くやしいが、抗おうにも武器ひとつないのではどうしようもない。またバール兵に連行される。
途中で、バールゼフォン様に確認したいことがある、といってバール兵のひとりが去り、しばらくその場に待機することに。そのとき、泪という名の謎の女性に出逢う。彼女も囚われているようなのだが、労働者ではないらしい。少し会話しただけで、また今度といって去っていく。葛城を知っているふうだったところが気になる。人違いだといってごまかされたが。さっきのバール兵が戻ってきて出発。
B6F。持ち場とやらに連れて行かれる。おびただしい量の土砂が堆積しているその場所で、ひたすら穴掘りをさせられる。手が痺れながらも、ひたすら掘る。固い岩が崩れ、少し先に進めるようになると、また掘って掘って、掘りまくる。当然体力を消耗する。1回掘るごとにHPが1ポイントずつ減少。
このとき、仕事をさぼってあちこち歩き回ることも可能だ。ただし、バール兵に見つかると鞭で打たれ、HPが3ポイントずつ減少してしまう。アームターミナルがあるのだから、仲魔を召喚すればバール兵ぐらいならなんとかなりそうなものだが、なぜかDDSが使えない。山瀬がいっていた「改造」とは、このことを指すものだったのか。
人々の様子を見れば、労働者とは名ばかりで、実体が奴隷であることは明らかだ。ある者は、作業中に不発弾を掘り当ててしまい、爆発で目をやられた。またある者は、まるで死んだ魚のように虚ろな目をしている。死体が放置された無惨な光景も目にする。誰もが、死んだほうがマシだというような苦痛を味わっているのだ。そればかりか、精神がおかしくなっている人も少なくない。バエルに忠誠を誓う声も耳にする。どうやら、食事に変な薬が混ぜられていて、そのせいらしい。
この労働キャンプの目的は、古代の鏡を見つけることだという。古代の鏡とはいったいなんなのか。鏡を見つけた者は解放してもらえるらしいが、掘っても出るのはガラクタばかり。
一定のところまで掘り進むと作業終了となり、集団で食堂へ連行される。そこは労働者たちでごった返していた。テーブルの脇に一列に整列し、配給を待っていると、食事入りの容器をもったバール兵たちが現れる。奴らは、バエル様を称え、万歳を唱えよ、という。食事にありつけるのはバエル様のおかげ、というわけだ。だが、バエルは死んだはずじゃなかったのか?
唐突に、葛城の目の前の風景が一瞬にして歪み、強烈な耳鳴りとともに、まばゆい光があたりを包んだ。真っ白な空間の中から、しだいに由宇香のヴィジョンが現れる。白いゆったりとした服を着ていて、まるで女神のようだ。由宇香は、葛城に何かを伝えようとしているようなのだが、その声はとぎれとぎれではっきり聞き取れない。どうやら、食事を摂ってはいけないと言いたいらしい。超自然的な存在がヴィジョンによって隠された真実を語る――こういう現象を黙示という。『ヨハネの黙示録』の黙示である。
ここで万歳を唱えるかどうかで、展開が変わってくる。ここでは拒否することにして進める。同じく拒否した園田は拷問室に連れて行かれた。バール兵から再考を促されるが、それでも断固拒否すると、鞭打ち50回の刑を宣告される。葛城も拷問室へ。そこには、壁に吊されて鞭打たれ、全身が腫れ上がった園田の姿があった。だが、彼は気丈にも、降伏するより百倍マシだ、と声を絞り出す。すると、さらに過酷な鞭の連打が襲う。葛城も同じ目にあうことに。もちろんかなりのダメージを受ける。ふたたび牢獄に連れ戻され、独房に放り出される。
当然メシ抜き。鞭で打たれた個所がひどく痛む。喘ぎながらもなんとか体を起こそうとすると、泪が牢の中に入ってきた。葛城に、隠し持っていた食べ物をそっと差し出す。奴隷たちの食事とは違うから安心していいという。その目を見つめると、「信用できない?」と聞かれる。正体も動機も明らかではないが、味方と思ってもいいようだ。泪は、バール兵が来るとまずいから、と足音を忍ばせて帰っていった。
彼女が置いていった食べ物を食べると、全快とまではいかないものの、体力が回復する。ちなみに、敏捷値も上昇するらしい。泪が去ったあと、いろいろな想いが葛城の脳裏をよぎる。園田のこと、泪のこと、山瀬のこと……。そうしているうちに、葛城は眠りに落ちていくのだった。
2日目、3日目も同じことの繰り返し。持ち場こそ変わるが、穴を掘りつづけ、終わったら食堂へ。餓死するだけだぞ、とバール兵に脅されてもあくまでも万歳を拒否すると、拷問室で鞭打ち。園田の様子は見るに耐えない。その皮膚には、鞭の跡が縦横無尽に刻まれ、痛々しい。俺は平気だとうそぶくが、最後には激痛のあまり気絶してしまった。
いつまでこんなことが続くのだろう。はたして、ここを生きて出ることができるのか。体の痛みよりも、不安のほうが苦痛だった。ふたたび独房に泪がやってきて、食事を差し出してくれる。引き止めて話を聞いてみると、なぜ助けてくれるのかは、彼女自身にもわからないという。自分の行動を馬鹿だと思いつつも、なぜだか放っておけないのだ、と。葛城にとってはありがたい話だ。だが、3日目になると泪もマークされ始めたようだ。これ以上は助けられない、あとはあなたの運次第ね、と彼女は言った。
そのあと、山瀬が入ってくる。新宿の一件もあり、もともとまずい立場にある葛城たち。しかも、反抗的な態度をとり続けていることに、バールゼフォンもかなり苛立っているという。このままいけば、労働が厳しくなるばかりか、見せしめのため処刑ということもありうる。意地を張るのはやめたほうが身のためだ、というのが彼の「忠告」だった。
不安を抱えたまま、3日目の夜になる。葛城が浅い眠りにまどろんでいると、誰かが耳元で小さく名前を呼んでいるのに気づく。目を開くと、園田がいた。作業中に見つけた針金で鍵を開け、ここまで来たのだという。彼もまた、泪からこっそり食事をもらっていた。園田は、恩人である泪も助け出したうえで、キャンプから脱走しようと考えている。自分たちだけでも危ないってのに、まったくデビルバスターってやつは……。
牢獄エリア(B5F)は悪魔がうようよしているので、逃げ出すのも一苦労である。なにしろ、装備がないのだ。魔法だけが頼りである。葛城が格闘戦タイプだった場合、事実上戦えるのは園田だけになるので、MPを使いすぎないように注意しよう。ただ、邪鬼オークがブッチャーブレードを落とすことがあり、これを装備すれば多少マシになる。また、うまく会話して、戦闘を回避するのもひとつの手だ。出現する悪魔は、バエル信者バール兵など。
あちこちの独房に人々が囚われている。薬物にやられて正気を失った人が大半だ。アトランティスの女王を名乗る女性。バエルに心酔し、人類の未来は悪魔との共存にあると考える男性。助けを求めてくる人もいるが、足をやられたその人を連れて逃げるだけの余裕はなかった。なお、端末が見つかるのでセーブしておこう。
牢獄エリアに「キョウコ」という女性がいる。その正体を巡って、研究者の間でさまざまな憶測が飛び交ったことがあった。というのは、偽典の語られざるバックグラウンドとして、コミック版の『真・女神転生』があり、その中に同名の女性が登場していたからだ。また、ストーリーの中盤以降に登場する相馬三四郎も、「キョウコ」という女性を捜していた(第7章5節参照)。
コミック版に登場する女性は、その名を渋澤京子という。ガイア教団に所属しており、ジャック・オ・ランタンが封魔されたテディベアを所有する。相馬三四郎の兄、小次郎の高校のクラスメイトで、彼にアセイミーナイフとヒランヤを渡すシーンがあったという。
偽典の没アイテムに『熊のぬいぐるみ』なるものがあったことから、偽典の「キョウコ」は同一人物だという説もあった。だが、その後の研究により、代々木労働キャンプの「キョウコ」は相馬三四郎が捜している人とは別人だが、関連はしていることが判明したという。その根拠や、いかなる関連なのかは不明である。
おそらく、ゲームの構想段階では、何らかのイベントを予定していたのだろう。コミック版とのつながりもその中で明らかにされるはずだったのだろう。そのイベントが実現しなかったいまとなっては、知りようのないことではあるが。
さて、どの道を通って進むべきか。場所によっては園田が誘導してくれるが、自分で道を探さないといけないところもある。ここでもし闇雲に歩き回ったりすると、あっという間に悪魔の餌食になってしまう。防具がまったくないのはやはり厳しい。正解は、AMSに記録された道を進むこと。アームターミナルを装備して、あっちこっち引き回されたのが幸いした。
泪は特別牢に入れられているらしい。場所は、バールゼフォンの部屋のそば。そこへ向かう途中で、マシン・アイボールが出現する。不審者を監視していたようだ。戦闘になるが、楽勝である。特別牢のあるエリアには、オルトロスとツチグモも捕まっている。助けると、オルトロスは疾風の香を、ツチグモは物夫の香をくれる。ただし、泪より先に助けないといけない。
ちなみに、このオルトロスとツチグモには、ちゃんと背景設定が用意されていたらしい。オルトロスは、代々木周辺でバールハダドに捕まり、飼い慣らすためにこのキャンプに送られたという。また、ツチグモはコミック版『真・女神転生』で死んだ土蜘蛛の息子であるそうだ。相馬三四郎に命じられ、キョウコの噂を追ってこのキャンプに潜入したものの、やはりバールハダドに捕まったのだとか。オルトロスはともかく、ツチグモがバールハダドに捕まったというあたりはやや不自然だろう。バールハダドが積極的に代々木労働キャンプにかかわっていた形跡が、ほとんどないからだ。
それはさておき。泪の特別牢、といってもけっこうな広さの個室にしか見えないが、そこに入って、一緒に逃げよう、と園田がいうと泪はうなずく。彼女はなぜか葛城たちの装備を持っていて、返してくれる。しかも、魔法の薬でふたりは全快。
部屋の外に出ると、またもや山瀬がいた。葛城たちを尾行していたのだ。山瀬は、2度までも葛城たちを裏切り、看守どもを呼ぶ。おまえたちと話をしていて仲間じゃないかと疑われてしまったが、これで無実を証明できる、といって。すぐに3人のバール兵がやってきて戦闘になるが、装備が戻った葛城たちの敵ではない。それに、泪の実力も侮れないものがある。すべて斃すと、山瀬の先導で魔王バールゼフォンが到着。おまえたちは処刑してやろうと思っていたから、手間が省けた、と奴は言う。こいつを斃さないと先には進めない。戦闘となる。
バールゼフォンは、古代エジプト人に崇拝された神で、奴隷の逃亡を防いでくれる力があると信じられていた。カナアンの主神バールの、エジプトでの姿である。メンフィスでは土着神であった創造神プタハとも同一視され、船乗りたちに信仰されたという。ゼフォンは元々サフォン(「北」の意)からきており、これはバールの館があったとされるカナアンのサフォン山を指すのだそうだ。
「タルギュム」(タルグムとも。ヘブライ語で「翻訳」を意味し、旧約聖書を翻訳したものを指す。アラム語のものが一般的だが、ここではカルデア語訳。カルデア語とは、バビロン捕囚で有名な新バビロニア王国の言葉。アッカド語の一種らしい。おそらくこの聖書は、捕囚期に作られたものと思われる)の記述では、殺戮の天使がすべての神像を破壊したときでも、バールゼフォンの像にだけは手をかけなかったというが、理由は不明である。
後世の悪魔学では第二階級の魔神とされ、地獄の衛兵隊または歩哨隊の隊長と考えられた。ただ、この衛兵または歩哨というのは、獄卒あるいは奴隷頭のようなものを指すのだろう、と生体エナジー協会代表は推察されている。
奴隷の逃亡を防ぐ神なので、ゲーム中では労働キャンプの支配者となっているわけだ。また、エジプトの神なのでファラオのような姿で描かれている。しかし、バールゼフォンはフェニキア人的な姿で信仰されていたことから、ややリアリティが欠けるという指摘もある。
バエルに比べれば、さほどの強さではない。体力こそ高いが、肝心の鞭攻撃が弱い。苦戦するほどではないだろう。斃すと拷問の鞭を落とすので、泪に装備させてやろう。バールゼフォンを撃破。この予想外のできごとに山瀬は狼狽し、怯えはじめる。俺はバールゼフォンを利用していただけだから関係ないんだ、といって逃げ出してしまう。こいつは、こればっかり。
キャンプを脱出しよう。今度は泪が誘導してくれる。地上を目指してひたすら上へ。途中、固定悪魔としてバール兵が出てくれば、正しいルートを通っていることになる。通路ではいろいろな敵にも出会う。マシン・T-92αやバエル信者タランテラのような警備兵のほか、邪鬼レッドキャップや妖精ジャック・ランタン、妖精ジャック・フロストといった悪魔も出現する。なお、寄り道してあちこちの施設に入ると、バール兵どもと戦うハメになる。時間の無駄なのでやめておこう。
ちなみに、この時点でDDSがふたたび使えるようになっているのだが、原因はよくわからない。とりあえず、これまで使えなかったのは、アームターミナルのパーツの一部が山瀬の手で外されていたからで、それは泪が一緒に返してくれたのだ、ということにしておこう。
キャンプを抜けると、そこは代々木公園駅だった(B2F)。邪龍ワーム2体が道を塞いでいるので、泪のムドで斃してしまおう。階段をのぼると、水妖アズミと魔獣オコンキツネが待ち受けている。これをかわして、階段を探す。地上に脱出する直前、ふたたび由宇香のヴィジョンが現れる。「アドニス」と「爆心地」、「心臓」と「殺される」。この時点では何のことかはわからない。そして地上へ。
ところで、もしキャンプの食堂で、由宇香の警告を無視して、連行されていく園田を尻目に万歳を唱え、食事を摂っていたらどうなっていたか。このとき、体力は少し回復する。その後独房に戻されるが、眠ろうとするとバエルのヴィジョンが現れる。我に従え……。我を崇めよ……。バエルは繰り返すのだった。
これを3日続けると、イニシエーションの儀式を受ける資格を得る。新宿労働キャンプでダンタリオンも行っていたものだ。とある部屋に連れて行かれ、そこにはなぜかアドニスがいる。彼がイニシエーションを授けてくれるという。蛍光緑色の液体が入ったグラスを差し出される。あたりに、南国の花のような濃厚な香りが漂う。一気に飲み干すと、意識が朦朧としてきた……。
場面が変わる。そこは、亜空間。不気味なダンジョンだった。恐ろしく長い廊下をひたすら進んでいくと、突き当たりの部屋にバエルがいる。バエルの言葉を聞いたところで儀式は終了。これで、バエルに忠誠を誓ったことになる。
意識が戻ると、そこはもとのイニシエーションの間。近いうちにもっと環境のよいところで、バエル様のために貢献してもらう、とアドニスがいう。イニシエーションを受けた嫌悪感が、葛城の心の中に充満している。だが、なぜか「ありがたき幸せ」という言葉が口をついて出てくるのだった。
イニシエーションを受けた結果、属性がCHAOS寄りになる。これは亜空間に突入した時点で変化するので、バエルに対してどう答えるかは影響しない。また、体に力が漲ってきて、レベルアップ。次のレベルまでに必要な分だけ、経験値が上昇するしくみになっているのだ。さらに、敏捷値が8ポイント上昇するそうだ。ただ、これは一時的なもので、洗脳が解けると元に戻るという。
イニシエーション後は労働は免除。個室を与えられる。泪が連れて行ってくれるのだが、部屋の中で彼女が誘惑してくる。何も起きないが(笑)、選択しだいでは、キスくらいはしてくれるらしい。以後、自由行動が可能になり、キャンプ内はどこでもフリーパス。キャンプ全体をまわるには最適だ。ただし、地上には出られない。
あちこち見て回ると、山瀬もちゃっかり個室をもらっていることがわかる。ツチグモやオルトロスには、愚かな人間だと哀れまれる。バールゼフォンとアドニスはなぜか不在。キャンプ内に宝箱などはない。番人のいる泉(B3F)でHPを回復できるが、1,000マッカ取られる。
作業場でも、待遇がずいぶん違う。バール兵は低姿勢になり、一部の労働者からは羨ましがられる。と同時に、葛城の態度もすっかり変わってしまっている。洗脳されて精神がおかしくなっているのだ。助けてください、とすがりつく労働者の女性に対し、バエル様のために働け、などと口走るのである。そういえば、イニシエーションを受けた夫は私に見向きもしなくなった、とこぼす女性もいたっけ。なお、DARKな選択肢を選んでも、属性には影響しない。
新宿労働キャンプ解放後、労働者の中に廃人や精神に異常をきたした人が多いという話を耳にした。ここ代々木では実際にそういう人々を目にする。そして、そうなる理由も明らかになる。というよりむしろ、自らの身をもって体験するハメになったというべきか。
洗脳の手段は薬だ。食事に混ぜてあるので、避けられない。断固拒否すれば鞭打ちの刑にあい、最後は餓死してしまうからだ。バエルのヴィジョンだけが現れるところを見ると、薬は科学的に合成されたものではなく、魔法の産物のようだ。薬を摂取しつづけると、じょじょに洗脳されていく。精神的に抵抗した者は脳をやられ、廃人になってしまう。洗脳された者の中で、ごく一部だけがイニシエーションを受ける。こうなると完全にバエルの虜になってしまい、逆洗脳は困難になる――はずなのだが。葛城はそうでもないようなのだ(後述)。
全般的に、行けるところは多いが、どこもあまり重要ではない感じだ。しかも、キャンプ内はめちゃくちゃ広いので、迷子になる可能性もある。ほどほどで帰るべきだろう。
部屋に戻って眠ろうとすると、園田が入ってくる。一緒に泪を助けて脱出しようという。だが、洗脳されている葛城は抵抗する。やむなく園田は葛城を殴って気絶させ、外へ連れ出す。
目が覚めると、なぜか正気に戻っている。イニシエーションはただの催眠術とは違うはずなので、かなり不自然だ。もう少し説明がほしかったところである。あえて強引に解釈すれば、園田は泪からもらった食事の一部をまだ持っていて、それを葛城に食べさせたのかもしれない。その不思議な力で、葛城はイニシエーションの呪縛から解放されたのだ――といったところか。もちろん、葛城の中に眠っている、特殊な力のせいかもしれないが。とにかく、泪を救出したうえで、キャンプを脱走しなければならない。彼女のいる特別牢に向かう。そこから先の展開は同じ。
初台シェルター編に続き、ここでも少しだけ補足しておく。小ネタをひとつと、コラムを2本。楽しんでいただきたい。
まずは小ネタから。葛城には、2度の覚醒のチャンスがある。そのとき新しい技能を覚えることがある点については、第1章1節のコラムで述べた。それじゃあ、全技能をマスターするにはどうすればいいんだろうか。
最初に、デビルバスター入隊試験で魔法を使いまくり、魔法戦タイプになろう。その後、バーチャルトレーナーでレベルアップに励むときは、銃撃を繰り返す。これで、1度目の覚醒時に射撃技能を身につけられる。そして、新宿労働キャンプでは、仲魔にできるかどうかにかかわらず、ひたすら悪魔に話しかける。都庁でもいいのだが、危険が大きいので労働キャンプのほうが無難だろう。魔法や銃撃は極力控えよう。そうすれば、2度目の覚醒時にコンピュータ技能を修得するはずだ。めでたし、めでたし。
ついで、コラムをお送りする。
ストーリーのなかで、園田は、泪といっしょに逃げることにずいぶんとこだわっている。命の恩人だから、というのが表向きの理由だが、どうも本音は違う気がする。
思い出してみてほしい。牢獄エリアで葛城がある囚人を助けようとしたとき、園田はなんと言っただろうか。その男性は足に怪我をしていて、ほとんど動けない状態だった。それを見た園田は、足手まといになるからダメだ、と首を縦に振らなかったのだ。もし園田が、もとデビルバスターとしての正義感に駆り立てられて行動しているのなら、足手まといでもその人を助けていたはずだろう。しかし、そうではなかったのである。
ところが、泪だけはどうしても助けたいという。命の恩人だから助けなければ、という正義感は、ここで破綻している。なぜなら、泪はちっとも虐待されておらず、囚人に比べて殺される危険はずっと少ないからだ。しかも、結果的に泪は高い戦闘力をもっていたとはいえ、園田がそのことをあらかじめ知っていたとも思えない。つまり、泪がたとえ足手まといになっても、園田は彼女を助けるつもりだったのだ。
園田が、そこまでこだわる真の理由。それは、恋愛感情以外考えられない。要するに、園田は泪に一目惚れしたのだ(笑)。たんに女に弱いとかいうレベルでは説明がつかない。生きるか死ぬかの瀬戸際なわけだから。
だが、この推測が正しいとすると、その後の園田の運命、そして泪と葛城の関係を考えると、なかなか皮肉な状況である(第4章5節、第9章1節、第12章参照)。詳しくは該当個所を参照してもらいたいが、そこからわかることはつまりこういうことだ――ひょっとすると、園田はアテ馬だったのかもしれない(笑)。
新宿と代々木にある、ふたつの強制労働キャンプ。バール教団が支配するその場所は、カルトっぽさが漂っている。薬物で無理矢理洗脳して、イニシエーションを行って……。バール教団は「破壊的カルト」という設定なので、当然といえば当然なのかもしれない。もちろん、新宿に化学プラントがあることからもわかるように、この設定には某教団が起こした事件の影響がありありとうかがえる。たぶん、この化学プラントでも、神経ガスなんかを製造していたのだろう。
よくわからないのは、このキャンプの目的だ。新宿では、大破壊前の物資を発掘したり、バエル城建設のための資材を調達したりしていたらしい。だが、発掘して使える物資なんてあるんだろうか。建設資材も、わざわざ旧歌舞伎町を掘って調達するというのはかなり不自然だ。それに、この時点でバエル城の建設はまだ始まっていないはず。採掘した資材をどこに保存しておいたのかという疑問もある。
となると、代々木がそうだったように、新宿でも本当は「古代の鏡」を探していたのかもしれない。資材うんぬんは口実というわけ。しかし、この「古代の鏡」、つまり八咫鏡はすでに別のところで見つかっていたようだ(第8章4節参照)。掘っても無駄だと知らずに、えんえんと作業をつづけさせていたんだろうか。
あと、ちょっと気になるのは、マインド・コントロール的なものの描き方が足りなかったかなというところ。カルトといえば、やっぱりマインド・コントロールだろう。洗脳とマインド・コントロールの差は微妙だが、洗脳がその人の価値観を強制的に別のものに置き換えてしまうのに対して、マインド・コントロールは自分の頭で考えることを放棄させ、自由意志を奪ってしまう。このへんをゲーム内で表現しようとするとドロドロしすぎるのかもしれないが、もうちょっとつっこんでみても面白かったかもしれない。