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「薔薇は他の名前で呼ばれたところで芳ばしい香りを放つだろう」とシェイクスピアは書いている。それを証明してみせたのかどうかは知らないが彼は自分の名を11通りの綴りで書いた。アメリカ中央情報局の皆さんもその説を支持しているようで、特殊暗殺部隊を「健康改造委員会」と命名、ニューヨーク・タイムズ紙の婉曲表現大賞を受賞した。 しかしながらそこまでの高尚な精神を持たない人々にとっては名前は極めて重要な意味を持つものであり、しばしば大変情熱的な名前が見られるのもまた事実である。こうした命名熱のはしりはやはりフランス革命時で、ユマニテ(人類愛)やらプレブ・エガル(平等の民)などといった名前はそれこそ数知れず、とある愛国者はマラー・クートン・ピック(恐怖政治家マラーとクートンに死を)なる名を息子に与え、大臣のルブランに至っては娘をジェマップ・ヴィクトワール・レピュブリック(ジェマップにてオーストリア軍を撃破せしフランス共和国)と名づけている。もっとも流石は自由・平等・博愛のお国柄か、おそらくは途方もない名前を親から与えられて絶望する子供たちを救うためにその後は子供の名前は内務省が作成したリストの中から選ぶことになった。しかしこの規定は1970年に廃止されてしまったため、かの国で再び幼児虐待の嵐が吹き荒れていることは想像に難くない。 命名熱の次なるブームはご多分に漏れずロシア革命で、レヴォリューションという名の女性を多数誕生させたほか、マルレーヌ(マルクスとレーニンの合体形)やらメルソール(マルクス・エンゲルス・レーニン・10月・革命の頭字連結)という名が大流行した。もっとも革命熱が醒めてくるとその流行も「平和共存」やら「死後名誉回復」やらといった意味の名に取って代わられた。 価値の多様化と自由主義の蔓延に彩られた現代においてはもはやこうした熱狂は記録者たちの活力の遙か彼方に到達しており、多分あなたがこれを読んでいる間にもまた一つ想像を絶するような名前が考案されていることは疑う余地が無い。数々の輝ける金字塔のことについては専門書に譲るとして、ここではある一つの事例を紹介するに留めたい。1974年に確認された長い名前の世界記録は Napuamahalaonaonekawehiwehionakuahiweanenaawawakehoonkakehoaalekeeaonanainananiakeao Hawaiikawad 、すなわち「山や谷を埋める素晴らしい花々が、ハワイ中にそのかぐわしい香りを漂わせはじめる」とされている。 |