悪法も法なり

 「法律ばかりがたくさんあるのは悪政の兆候である」とアリストテレスは述べている。
 アメリカでは毎年15万件ほど法律が作られているが、ポケットにアイスクリーム・コーンを入れて持ち歩くことを禁じるレキシントン市の条例や、キリンに乗って釣りをすると罰せられるアイダホ州の州法のことを鑑みれば確かにうなずける名言である。この他にもホテルの部屋でオレンジの皮をむいてはならない(カリフォルニア州)とか投げ縄で魚を捕まえてはならない(テネシー州ノックスヴィル)などアメリカの悪法は数多く存在している。この影響は世界に広がっているらしく、例えばお隣カナダのブリティッシュ・コロンビア州は賞金をかけて二人三脚をする事を禁じている。
 しかしながらそうした数々の悪法の中にも例外は存在する。コネチカット州は9本のピンによるボウリングを禁止する法令を布告し、この伝統的スポーツを10本のピンで行われるようにした。
 またインディアナ州は1897年に法令で円周率をとある有理数に定義した。おそらくは人類の文明に多大な貢献をするはずだったこの法律が現在では破棄されているというのは全く理解できない。この法律によって人類は数学者ウイリアム・シャンクスのように15年もかけて円周率を小数点以下707桁まで計算して最後の百桁ほどを間違えたり、最新鋭のコンピュータをわざわざ算出に使い、しかもその結果を本にして出版したりといった時間とエネルギーの無駄な浪費から解放されるはずであったのにである。おそらく失業を恐れた数学者たちが圧力をかけたのだろう。

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