第11章 真・聖王伝説


由宇香復活

今までにそろえた由宇香のパーツを、一カ所に集めなければならない。日下に預けている場合は市ヶ谷シェルターで、それ以外の場合は、御茶ノ水シェルターまたは品川ホテルに個人用培養槽があるだろうから、そこで由宇香を蘇らせることになる。

ここでは、市ヶ谷シェルターで復活させることにしよう。他の場合でも、展開は全然変わらない。全パーツをそろえたことを日下に報告しに行くと、それまでに預けていたパーツの返却か、または由宇香の蘇生のどちらかを選ぶことができる。ここではもちろん由宇香の蘇生の方だ。

日下についてくるよう言われ、培養槽が設置してあるエリアへ。早坂の遺体が保存されているあそこだ。そこで、最後のパーツを日下に渡す。日下は培養槽から由宇香のパーツを取り出す。まるで生きているかのように脈打つそれらを台の上に並べて、パーツ同士を静かに近づけていく。すると……。

パーツ全体が、淡い光を放ち始める。切断部分の組織が反応を起こし、繊維状の光が、最初は細く、次第に太い帯となって、パーツ同士を結んでいく。切断部分は、急速に修復され、ついにはもとの美しい由宇香の姿になった。

由宇香はゆっくりと目を開ける。葛城の姿を認めると、その顔は歓喜で一杯になった。しかし、次の瞬間耐えかねたように気絶してしまう。心臓がないせいだろう。だが、奇跡は起こった。泪も驚いている。心臓がないのに、これだけ動くなんて、と。しかも、由宇香は葛城のことを覚えていた。角生かづさが、蘇った由宇香は別人になっているかもしれない、と警告していたにもかかわらず、だ。大好きな人のことなんだから当たり前よね……と泪はつぶやいた。

泪は、葛城に背を向けて歩き出す。扉の前に来ると、振り返って葛城の方をまっすぐ見つめ、今度はバエル城で逢いましょう、と言った。泪は去っていく。葛城は、黙って見送った。こうなることは、わかっていたはずだから。

日下も驚いている。さすがの彼も、バラバラになった体が再生するのは見たことがなかったのだろう。しかし、日下は科学者らしく冷静に、心臓のない由宇香は想像を絶する負担が身体にかかる、気をつけていなければすぐに死んでしまうだろう、と教えてくれる。そして、日下も自室に戻っていった。

これ以後、葛城、ニュートン、由宇香のパーティーで行動することになる。由宇香は、生前の能力のまま。つまり、バエル城はおろか地上で行動するにも実力不足だ。装備も生前のまま、なのだが、考えてみればこれはおかしいぞ。葛城が由宇香の遺品を持っていたとしても、破れて血の付いたジャケットは着られまい。あらかじめ英美あたりにそろえてもらっておいたのだろうか。

とにかく、能力も装備も非常に貧弱だ。金はたっぷりあるだろうから装備を更新するのはたやすいが、残念なことに能力不足で強力な武器や防具は使用できない。じゃあ先にレベルアップを目指すか、ということになるのだが、なにしろ由宇香は心臓がないのである。戦闘時の激しい動きに耐えられるはずがない。そうでなくても、数歩ごとにHPとMPを消耗していく。そのまま放っておくと気絶し、HPかMPが尽きると瀕死に。気絶したまま葛城たちがいくら悪魔を斃しても、気絶は行動不能扱いなので、由宇香は戦闘に参加しなかったことになり、経験値はまったく入らない。これではレベルアップもおぼつかない。

また、たとえレベルアップしたとしても、高レベルになればなるほど少し歩いただけで気絶してしまうようになる。高レベルの悪魔の抗体ポイント(CP)が高いことからもわかるように、レベルが上がるとエネルギーの消耗が激しくなるのだ。それでもレベルアップさせるかどうかはプレイヤーの自由。強力な装備を身につけられるようになれば、即死は免れられるからだ。

ところで、少し気になるのは、せっかく由宇香を復活させても、あまりメッセージが変化しないこと。とくに、英美もかづさも蘇生前と同じことしか言わないのは明らかに変だ。最低でもこのふたりには喜んだり悲しんだりしてほしかった。

さて、残る目標はバエル城を残すのみとなった。葛城、由宇香、泪、バエル。それぞれが己の因縁に決着をつけなければならない。それに、東京の未来もかかっている。未来が葛城の手に委ねられた、とは吉野姫も岳克美も同じように言うこと。葛城がもうひとりのメシアだとすれば、それも当然かもしれない。

バエル城攻略

再びバエル城へ。都庁を上っていく。今回は、固定場所に悪魔が出現することもない。エレベーターで一気に最上階へ。奥の部屋からバエル城に侵入。

最初の通路を出て、分岐路にさしかかったところで姿を現したのは、アドニスだった。性懲りもなく、と思うが、今回も自信たっぷりだ。結界が消えたのをいいことに侵入してきた葛城を嘲り、自分がいかに力を増したかを自慢する。「僕に取りすがって、許しを乞う君の姿が目に浮かぶ」んだそうだ。そして、今度こそ君の息の根を止めてやる、と言って襲いかかってきた。

さすがにバエルの分霊だけあって、今回ばかりはアドニスもかなりパワーアップしている。臥竜刹、飛竜刹にマハジオンガを繰り出し、攻撃力も大幅に上がっている。こちらは弱い由宇香を抱えているだけに、彼女を守ろうとすると、なかなか反撃に転じられない可能性もある。ただ、自信過剰のアドニスは防具を何も装備していない。強力な仲間をそろえて一気呵成に攻め立てれば、以外とあっけなく斃れてくれる。

なぜ君に勝てない……とつぶやきながら今度こそ本当にアドニスは死ぬ。装備していたゲイボルグを落とすことがある。伝説では、ケルトの英雄クーフーリンが所持していた魔法の槍だ。ここでも、布津御霊剣を超える、すさまじい威力を有する。

ここからが本当の攻略のスタートだ。だが、バエル城は恐ろしく広いので、間違った道を進むと、すぐに迷子になる。しかも、堂々巡りで、全然先へ進めないのだ。気をつけなければならないのは、以前泪に教えられた道は、今回は使えないということ。エレベーターで一気に最上階へ、などということができるはずもない。地道に上っていくしかないのだが、そもそも以前泪が指示してくれたコースの方へは、近づいてもいけないのだ。そっちの方へ行くと、わけがわからなくなる。バエルの思う壺だ。

一方通行になっている、回廊状の通路の奥にある階段を上るのが正解。2階以降も、こうした迷いやすい作りになっている。必ずしも真っ先に見つけた階段を上るのが正しいとは限らない。先にワープゾーンを通って別のエリアに出てから、正しい階段を上らなければならないこともしばしばだ。

言葉では説明しにくいし、ラストでもあるので、細かい進み方の解説は避けよう。とにかく、階段を上って5階についたとき、目の前に魔獣ケルベロスがいれば正解だ。メガテンシリーズお約束のケルベロス。今回はこんなところに登場する。大破壊前、瞬間転送システムの暴走によって吉祥寺から飛ばされてしまったケルベロスと同一なのかは不明だが、一体しか現れないところを見ると、その可能性はかなり高い。仲魔にすれば、ブレイズブレスやサマリカームを操る頼もしい味方になってくれる。

同じく5階では、自分のドッペルゲンガーがまた現れる。斃すのはたやすい。しかし、ドッペルゲンガーの出現は何を暗示しているのだろう。己の運命と向き合う瞬間が近づいているということか。

6階。次第にエリアの広さが狭まってきている。最上階が近いらしいとわかる。一本道なので、迷うことはあり得ない。最初の扉を開けたとき、泪が現れた。予言通り、バエル城で逢うことになったわけだ。

泪は、ついにここまで来たのね……と言い、そして、驚くべき言葉を口にする。由宇香の心臓は、自分の体の中にある、それは由宇香を引き裂き、喰ったからだ、と。そして、泪は光を放ち、悪魔の姿へと変わっていった。それは、確かに由宇香を喰らった悪魔のひとり、アスタルテだった。アスタルテは葛城に選択を迫る。由宇香を選ぶのか、それとも泪を選ぶのかを。曖昧な答えは許されない。どちらかを選べば、片方は確実に死ぬことになる。なぜなら、両者はもともとひとつ、ともに女神イシュタルの分霊だからだ。

ここから先、展開が細かく分かれる。筆者もすべて把握している自信はない。しかも、今まで由宇香や泪に対してとってきた行動によって結果が変化するのだが、その相関関係は明らかではない。さらに、葛城自身の属性も絡んでいるような気がする。もうこうなるとお手上げである。なので、ここではわかっている限りの結果のみを述べることにする。

まず、由宇香を選んだ場合。泪の正体は悪魔だったわけだし、護国寺を焼き払って一度は西野の命を奪った相手でもある。それに、由宇香を喰らった相手を愛することはできない等々。いろいろ理由はあるだろう。単に由宇香の方が好きだ、というのでもいい。こちらの方がオーソドックスな選択であろう。このとき、それまでの状況によって、アスタルテは異なった反応を示す。

まず、アスタルテが自分の心臓をえぐり出す場合がある。わかってたんだわ……と言いながら、納得した様子で息絶える。壮絶なシーンである。この場合、心臓は由宇香に吸い込まれ、由宇香は光り輝き、女神の姿になる。イシュタルの復活である。イシュタルは、いにしえの記憶を取り戻したようだ。そして、葛城に、ともにバエルの元へ行こうと言う。

しかし、心臓をえぐり出す場合でも、別のパターンがある。こんなものさえなければ……といまいましそうに言いながら息絶えるパターンである。これだと、泪が葛城を愛していたのは、もともと由宇香のものだった心臓を喰らったためであるかのようにもとれる。

そして、アスタルテが怒り狂って襲いかかってくる場合がある。この場合は、やっぱりね、とか言うので、泪に対して相当冷たくしていた報いであろう。筆者がこれを見たのは、泪とのラブシーンで泪を拒絶した場合であった。斃すと、自分の心臓を得て由宇香は覚醒し、女神イシュタルに変わる。

もうひとつの選択肢として、泪の方を選んだ場合がある。これは、泪の魔性の魅力にとり憑かれたからであろうか。それとも単にひねくれているだけだったりして。

このとき、由宇香も異なった反応を示す。私はこの人の中で見守っているわ、と言って由宇香とアスタルテが光を放ちながら融合する場合。やはりイシュタルが出現するが、それは泪の面影を濃く残すものとなる。口調もやや違う。

また、由宇香が怒り狂う場合がある。こちらは、なぜか由宇香は心臓がないままイシュタルの姿に変わり、怒りにまかせて葛城に襲いかかってくる。これが、デタラメに強い。激怒した瞬間に覚醒したのであろうか。もともと戦闘神の側面もあるだけに、いったん暴れ出したら手がつけられない。ジオンダインやブフダイオン、女神の微笑みなど、多彩な攻撃を繰り出してくる。しかも、体力は今まで闘ってきたどのボスよりも高い。苦戦は必至だ。

そして、泪を選んだのにも関わらずアスタルテが襲いかかってくる場合もある。つまり、不誠実な奴と思われたわけだ。由宇香を選んで戦闘になった場合と同じく、魔王アスタルテを相手にしなければならない。護国寺を焼き払ったというブレイズブレスは強力。マリンカリンやジオンダインなども操る。斃すと、心臓を取り戻すことができ、由宇香はイシュタルとなる。

とりあえず、由宇香を選んでイシュタルになったものとして話を進めよう。次の扉を開けた先は、ダークゾーン。少し進むと、ターミナル回線に接続できる端末がある。最後のセーブポイントだ。また、回復ポイントと赤い泉がある。

この泉が、重要な役割を果たす。例の、精霊が出現する泉だ。ここに、布津御霊剣を投げ込み、出てきた精霊の質問に正直に答える。もしくは、まったく正反対に答える(この場合もなぜか精霊は怒るよりもむしろ感心する)。すると、精霊は火之迦具土剣をくれるのだ。豊穣の剣などと並ぶ最強の剣のひとつ。属性は火炎。戦闘中に使用すればアギダイオンの効果を発揮する(そんな機会はないだろうが)。布津御霊剣自身強力な剣だったので、大幅に攻撃力が上昇するわけではないが、攻撃回数が増すので、実際に敵に与えられるダメージはかなり違う。ただし、使いこなすためには抜群の体力と、それなりの器用さが必要だ。

火之迦具土剣は、その名の通り炎の神カグツチの神霊を宿した剣である。一説によるとそれは巨大な七支刀のような形状で、しかし枝状の突起は8つあり、使用者が気を込めるとその突起から炎が螺旋状に飛び出して敵を焼き尽くすという。神話ではカグツチはイザナミより生まれた最後の子供で、生まれた瞬間にその熱でイザナミの陰部に火傷を負わせ、それがもとでイザナミは亡くなってしまった。激怒したイザナギは十握剣とつかのつるぎまたの名を天之尾羽張あめのおおばりなる剣でカグツチの首をはねた。そのとき飛び散ったカグツチの血から、雷神タケミカヅチや軍神フツヌシが生まれたという。したがって、布津御霊剣が火之迦具土剣へと変化するのは、原初の荒ぶるパワーを蘇らせたからだと考えられる。

ちなみに、この赤い泉の精霊は、炎の力を宿しているらしく、天叢雲剣レプリカを投げ込んで質問に答えると、火龍剣をくれる。

7階へ。ここは、単なる通路である。階段を上るだけだ。

8階。最上階である。すなわち、バエルがここにいる。

最後の戦い

ちょっと話がわき道にそれるが、ここでいったいバエル城がどんな外形をしているのか考えてみたい。西洋の古城風、なわけはない。下の階から上ってくるにつれて、だんだんフロアの面積が狭まってきている。しかも、都庁のように棟が分かれているわけでもない。

ジグラット、というものがある。古代メソポタミアの遺跡に見られる、巨大な階段状の塔のことだ。バビロニア・アッシリアの神話では、ティアマトを滅ぼしたマルドゥークの神殿が、このジグラットの上に立てられたという。これは、旧約聖書のバベルの塔の原型である。ちなみに、バベルの語源はバーブ・イルで、神の門という意味。つまり、神殿を指している。

また、カナアンの神話では、「混沌」を司る海を征伐したバアルが、「家」を建てたという記述がある。それは神々の職人に作らせたもので、城を持つ王者としての権力を象徴している。この神話は、上に述べた、海水を支配するティアマトを滅ぼしたマルドゥークが、神殿を建てたストーリーに似ている。実は、マルドゥークの神話がカナアンに取り入れられてこのエピソードができたと考えられている。以上のことを総合すると、バエル城はジグラットの形をしているのではないかと推測できる。つまり、ジグラットの上に建てられたマルドゥークの神殿は、ここでは最上階のバエルの部屋にあたるわけだ。さらに言えば、バエル城はバベルの塔でもあり、唯一神に挑戦する傲慢さの象徴でもある。このように、バエルとマルドゥークは神話上の性格が似通っており、ともに唯一神のライバルであるという点でも共通するのである。

さて、バエルの部屋に行く前に、ひとつの宝箱があることに気づくだろう。いかにも開けてくださいという風情だ。が、注意しなければならない。宝箱の中身はダグザの棍棒という武器であり、あらゆる武器の中で最大の破壊力を持つ逸品であるが(ただし命中率は低い)、宝箱のトラップにより、開けた者は呪われてしまう。解呪の魔法カトラディが使えないのであれば、無理して開けるのは控えた方がよい。呪いも怖いが、せっかく手に入れたダグザの棍棒も、よほど体力のある仲魔でなければ、扱うことができないからだ。

蛇足だが、ダグザの棍棒のダグザは、ダーザもしくは「ダーザ・モール(偉大なるダーザ)」とも呼ばれるケルトの神である。彼は「トゥアハ・デ・ダナーン(女神ダヌーの一族)」の一員で、神々の偉大なる父であるが、ダーザというのは「良き神」という称号のようなもので、本名は不明である。彼が持つ棍棒は、八人がかりでなければ持ち上がらないほど重く、八つの突起がついていて、ダーザがこれを一振りすると、八人までの戦列は全身の骨がバラバラになるほどにまで粉砕されてしまうという。

そろそろ話を先へ進めよう。バエルの部屋の前に、一体の悪魔が立ちはだかっている。それは、決して忘れることのできない、初台シェルター、それにおそらく原宿シェルターをも滅ぼした大悪魔、堕天使ムールムールだ。

思えば、数奇な巡り合わせである。最後にムールムールを目にしたときは、圧倒的な力の差を見せて打ち据えられ、息も絶え絶えになりながら、床にはいつくばって由宇香が引き裂かれる様を見せつけられたのだった。しかし、いまや葛城は逞しく成長し、強力な仲魔と、そして女神イシュタルとともにムールムールに対峙し、戦いを挑もうとしているのだ。ムールムールも力を付けた葛城に対して驚きを隠せない。しかし、自分の勝利を疑ってはいない。バエル様のお手を煩わせるまでもない、と悪魔は言う。戦闘となる。

もちろん、以前のようにこちらの攻撃が通じないということはない。しかし、やはり強敵であることは確かだ。黒魔術の達人らしく死の吸引やムド、ネクロマンなどを繰り出してくる。テトラジャが使えれば、圧倒的に優位に立てるだろう。ただし、攻撃力、防御力ともに高い。魔法を封じても油断は禁物だ。それでも、地道にダメージを与え続けていくと、ムールムールは斃れる。装備している死の槍を落とすことがある。地獄の炎で鍛えられたという不気味な代物だが、呪われはしない。強力な武器として最後の戦いに役立ってくれるだろう。

かつての強敵、ムールムールも死んだ。残る敵はあとひとり。魔王の部屋の扉を、葛城はゆっくりと開けた。

中ではバエルが葛城とイシュタルを待ちかまえていた。精神世界で、「息子よ……」と語りかけてきたのが、まさに今目にしているバエルだった。バエルは、イシュタルに自分の妻となってともに魔都東京を支配することを持ちかける。

ここで、展開は少し分かれる。由宇香ベースのイシュタルの場合は、静かに、私は現世ではあなたの妻ではありません、と言い、葛城と結ばれることを望む。泪ベースのイシュタルの場合は、私は史人についていく、とはっきり宣言する。また、アスタルテとともにここに来た場合は、葛城を殺せ、というバエルの命令に背き、アスタルテは葛城の側につく。いずれにせよ、バエルと戦闘になる。

未確認だが、これ以外の展開もあるようだ。とくに、葛城の属性がLIGHT/CHAOSの場合、イシュタルが、私のために死ねるか、と聞いてくるらしい。ここで死ねる、と答えればよいが、君とは遊びだった、と答えると、怒り狂ったイシュタルと戦闘になる。イシュタルを斃したあとはやはりバエルとの戦いになるので、この展開はきつい。連戦になるうえ、仲魔をひとり失うわけだから。

ラストボスのバエルは、やはりそれにふさわしく、恐ろしく強い。嵐を司る神だけに、テンペストなどを放ってくるが、むしろそういった特殊攻撃を仕掛けてくれた方が気持ちは楽である。恐ろしいのは、仲間すべてをコンピューターに還してしまうマハデサマン。一挙に形勢が変わってしまう。そして、MPを大幅に奪っていく聖王の剣攻撃。通常の剣攻撃もすさまじく強力だ。連続攻撃であっという間にこちらのHPが削り取られていく。しかも、追加効果で緊縛になることも。

逆に、こちらの攻撃はダメージをかなり軽減されてしまい、しかも当たりづらい。バエルは聖王の鎧、聖王の兜などの装備を身につけているのだが、これらは豊穣の装備よりもさらに1ランク上の、最強の装備なのだ。衝撃と電撃の魔法は反射される。したがって、風塵剣や雷迅剣による攻撃もはじき返される。嵐の神なら、これも当然か。剣よりも槍の攻撃の方がダメージを与えやすい。ゲイボルグや死の槍、ニュートンのオクトパイクなどで攻撃しよう。タルカジャは必須だが、デカジャで無効化されしまうこともしばしば。リカームドラの連続がけができればかなり楽になるのだが。体力回復のためのアイテムはたくさん持っておくべきだ(とくに宝玉)。こちらが全滅してしまわないうちに、先に相手が斃れてくれるのを祈るしかない。

バエルを斃すと、エンディングとなる。だが、これがまた厄介なのだ。

それぞれの結末

エンディングの何が厄介なのか。偽典のウリのひとつは、マルチエンディングである。主人公の行動次第でエンディングが変わるわけだ。このエンディング、当初は3つか4つくらいだと考えられていた。それは、最初にクリアする際には、葛城の属性がNEUTRAL/NEUTRALもしくはLIGHT/NEUTRALで、しかも由宇香を選択するのが一般的だからであった。それ以外となると、泪を選んでアスタルテとともにバエルを斃すことになるわけで、これで全部かもしれないと思われていた時期もあった。

しかし、一部の人々の献身的な努力によって研究が進み、今では未確認のものも併せて なんと10くらいのエンディングがあることがわかってきている。もしこの未確認のものも実在するとすると、個人でこれらをみんな見ることは不可能に近い。かくして、エンディングは偽典最大の謎のひとつとなってしまった。これこそが、エンディングが「厄介」な理由である。多すぎるのだ。

ではまず、これまでに確認されているところから見てみよう。上にも述べたように、もっとも遭遇しやすいのは、NEUTRAL/NEUTRALもしくはLIGHT/NEUTRALで、由宇香を選んでイシュタルとともにバエルを斃した場合。バエルは、自分に代わる支配者にならないかと言う。これを拒否すると、せめて自分の聖王の剣で心臓を貫き、とどめを刺してくれないかと頼んでくる。これも拒否すると、バエルは一匹のヒキガエルに変じる。これを拾うか潰すかを選択することに。

バエルに代わる支配者になることを選ぶと、葛城の意識は薄れ、次にぼんやりとした意識の中で、多くの悪魔たちが新たなる支配者を歓迎する声を聞く。バエルに代わるどころか自分がバエルと同化してしまった。かくしてバエルの野望は達成される。イシュタルがどうなったかは不明。言うまでもなくバッドエンディングである。

バエルに聖王の剣でとどめを刺した場合、心臓を貫いた瞬間、やはり葛城の意識は薄れていく。次に気づいたところは、真っ暗闇の中。そこには、タムズ、バールゼフォン、アドニスらがいる。葛城は、彼らとともにバエルの意識の中に取り込まれてしまった。まだわずかながら自我が残っているものの、このまま抵抗しなければ、すぐにバエルに同化されてしまう。バッドエンディングである。ただ、抵抗した場合、おそらく葛城の属性がLIGHT/NEUTRALならば、呪縛から脱出することができる。このときは、次の、ヒキガエルを拾うかまたは潰した場合と同じエンディングになる。分霊に逃げられたバエルがどうなったのかはわからないが、たぶん葛城かイシュタルに本当にとどめを刺されたのだろう。

ヒキガエルを拾うか潰した場合、寝そべった葛城の傍らに、ひざまくらをするような姿勢でイシュタルが寄り添う。ふたりの愛は永遠だ、というメッセージが出て、スタッフロールへ。グッドエンディングだろうが、非常にあっけない。ただ、ふつうはこのエンディングを見る可能性が高いと思われる。

さて、属性は変わらなくとも、アスタルテとともにバエルを斃した場合は、内容が少し変わってくる。イシュタルと寝そべるシーンはもちろんない。バエルに代わり、葛城はアスタルテとともに魔都東京の新たなる支配者となる。東京は混沌の勢力が制圧することになる。葛城の傍らに美しい魔性の女(アスタルテ)が寄り添う。これはバッドエンディングとは言えないだろう。ひとつの選択ではある。このとき、イシュタルは現世では完全な復活がかなわなかったことになる。分霊が勝利し、心臓のないまま斃されてしまったからだ。空を見上げると、中天に美しい月がかかっている。イシュタルの魂は滅びることなく月へと上っていく。次なる転生の時を待つために。

ここまではまあ、一般的といえる。プレイヤーの選択次第で、わりと簡単に見ることができる。だが、ここから先は少し特殊なものだ。ふつうにプレイしていては、たぶん見られない。これらのエンディングの発見は、セーブデータを操作し、葛城の属性を書き換えることによってもたらされた。

まず、葛城の属性がLIGHT/LAWのとき。葛城は天使に覚醒する。背中が熱く感じられたかと思うと筋肉が盛り上がり、そこから羽が生えてくる。葛城は、神に選ばれた都市東京の新たなる支配者となる。つまり、唯一神の思い描くメシアそのものになったわけだ。頭上には無数の天使が舞い、葛城のことを祝福してくれる。その足下には、無数の悪魔の死骸が山のように積み重なっている。もはや下級の悪魔ならば葛城が発するオーラを浴びただけで消し飛んでしまう。東京から悪魔は一掃された。これからは東京には神の秩序と平和がもたらされる。ただ、イシュタルがどうなったのかはわからない。はたして、唯一神が彼女の存在を許すだろうか。東京を出ていったのか、それとも再び転生することにしたのか、ひょっとして他の悪魔もろとも滅ぼされたのか……。

葛城の属性がLIGHT/CHAOSの場合。葛城は鬼神に覚醒する。全身の筋肉が盛り上がり、身体は赤く変色し、牙や角が生えるなど、まさに鬼そのもの。東京中の悪魔を力でねじ伏せ、新たなる混沌の支配者となる。東京に平穏が戻ることはない。イシュタルがどうなったのかもやはりわからない。

葛城の属性がDARK/LAWまたはDARK/CHAOSの場合(おそらくDARK/NEUTRALは他のNEUTRALエンディングと同じ)。悪魔どもの死骸の上に立つ、葛城の姿があるだけだ。魔都東京の新たなる支配者となったが、何かに覚醒したわけでもない。邪神とかに覚醒してくれるとおもしろかったのだが。

これらそれぞれのパターンについて、アスタルテとともにバエルを斃した場合には、アスタルテがそばに寄り添うという情報があるが、実際にはアスタルテを連れてLIGHT/LAWやLIGHT/CHAOSになることはちょっと考えにくいのではないかと思う。

最後に、未確認のエンディングを挙げておこう。なお、これらについては、実在するという保証がない。ボツになっているかも。

まず、ひとつ目は、葛城が魔神に覚醒するというもの。魔神ならば属性はLIGHT/NEUTRALのはずだが、この属性でクリアしても、魔神に覚醒するという話は聞かない。ただ、裏モードでゲームに使われているグラフィックを確認すると、4本の腕に3つ目という魔神らしき葛城の姿があるにはある。

次は、葛城が新たな敵を求めて旅に出るというもの。その後、誰ひとりとして葛城の姿を見たものはいないという。これも、グラフィックだけは確認されている。廃墟の東京にひとりたたずみ、遠くを見つめる葛城の絵だ。太陽が明るく葛城を照らし出している。これも、存否不明。

さらに、グラフィックすらない幻のエンディングもある。葛城がバエルと合体し、東京の新たなる魔王として君臨する。この場合、葛城がバエルを吸収してしまうのだ。しかも、神々との間に戦争が勃発し、魔王葛城はそれにも勝ち残るという。こうなるとやや眉唾物だが、実在すれば確かにおもしろい。

未確認のものは少し脇へ置いて、確認済みのものについて、少し整理してみよう。要するにまずバエルの思惑通りにことが運んだ場合と、そうでない場合があるわけだ。エンディングでは詳しく語られないが、最強の分霊となった葛城を吸収すれば、もはやバエルに敵はない。イシュタルはバエルに殺されるか、支配されてしまったかのどちらかだろう。東京は魔都と化し、悪魔どもが猖獗を極め、人間たちは奴隷もしくは生け贄となる。恐怖と混沌、暴力と流血が支配の象徴となる。ペンタグランマの残党は一掃され、天津神や国津神が力を合わせてもとても抗しきれないだろう。カズミとメイも無事ではいられまい。八重洲地下街にも悪魔が侵入し、多くの子供たちが殺されるだろう。おそらく英多も……。渋谷はどうなるだろうか。新たなるメシアの降臨を待つべく、唯一神は住人たちを東京の外へ導くかもしれない。モーセによるエジプト脱出のようなことになるわけだ。

バエルの思惑通りには行かなかった場合、そこから先は葛城自身の意志で東京の未来が決まる。バエルに成り代わって魔都東京の支配者にもなれる。鬼神や天使となり、「混沌」または「秩序」一色に東京を染め上げることもできる。はたして、それが正しいのかは別にして。ひょっとしたら、魔神のエンディングならば、東京は悪魔と人間が共存できる世界になるのかもしれない。マルドゥークが夢見た理想郷だ。

どれが「真」のエンディングかは未だはっきりしない。ひょっとすると逆にはっきりとした答えを出さないことが、偽典の偽典たるゆえんかもしれない。オーソドックスなものなどない、というわけだ。

終わりに

最後に、全体を通して概観してみたい。

偽典は、その名が指し示す通り、正典たる「真・女神転生 I」とは別の角度からメシア伝説に光を当てたものだ。つまり、一種の「If...」である。こんな未来の選択肢もあり得たのかもしれない、といった意味合いになる。

大破壊のとき、「真・女神転生 I」の主人公たちは金剛神界へと飛ばされ、現世に戻ってくるのは30年ものちのことである。この間に、まったく異なるストーリーが展開されていた、というのが偽典のバックグラウンドになっている。

「真・女神転生 I」の主人公は、現世に戻ってきたあと、カテドラルで壮絶な戦いを繰り広げ、その選択次第で東京の運命を左右することになる。つまり、唯一神の側から見ればメシアということになる。したがって、このメシアが再び地上に降り立つまでは、唯一神は人間界に手が出せない。なぜなら、唯一神は人間に自由意思を与えたことになっているので、その自由意思をねじ曲げるようなことになれば、自己矛盾に陥るからである。ただ、メシアが降臨したあとならば、時は満ちたということになるので、唯一神は積極的に干渉を始めることになる。

その、いわば神が不在の時代にもうひとりのメシアが生まれた、というところに偽典のおもしろさがある。本来メシアとは、唯一神のコントロール下にあるはずだ。かつてのメシア、イエスが神の子としてカナアンに降臨したのは、その証だ。もうひとりのメシアたる資格を持つバプテスマのヨハネも、ちゃんと計画通りにメシアが救いを始めるまでの地ならしをしてくれた。

だが、新しいメシアは、イスラエルではなく東京に生まれた。これは、メシアが唯一神のコントロールを離れたことを意味する。大天使ガブリエルは、葛城の未来はわからないと言った。つまり、唯一神は、メシアに干渉できないどころか、その未来を予測することさえもできないのだ。その根本にあるのは、神の上に「運命」が存在するという考え方だ。ミルトンの『失楽園』でルシファーはこの立場に立つ。つまり、異教的・異端的な考え方なのだが、異教的・異端的なものこそ女神転生シリーズの本質である。

唯一神は、自ら人間界に接触できないという制約の中で、己の計画を実現するべく、許す限りの手を打った。まず、来るべき千年王国の礎とするため、自分の教えに忠実な信者たちを渋谷に集め、強力な対悪魔結界を張って保護することにした。異教の像すなわち五色不動の結界が作用していないことも好都合だった。また、バエルの勢力があまりにも強くなることを恐れ、人間をエージェントに立て、レジスタンスに接触させた。資金・物資・武器などの援助を行い、悪魔に対抗させ、これによって秩序と混沌の勢力の均衡を図ろうとした。それが、ペンタグランマである。

しかし、それ以外の人間界への干渉はタブーとし、天使たちも渋谷以外の場所に降臨することは禁じられた。それは、余計なことはするな、という意思表示であった。このタブーを破ったのが、身を挺して御茶ノ水シェルターを救おうとしたファニエルである。だが、無情にも「兄弟」たちは誰ひとりとして助けようとはしなかった。ファニエルの自由意思に任せたといえば聞こえはいいが、ていよく見殺しにした観もある。

一方、バエルは東京を支配するべく着々と計画を進めていた。唯一神に対抗し、自分の勢力をより強固なものにすべく、バール教という自分の手足となる教団を作り上げた。また、イシュタルを信仰する金星教団をバックアップして背後から操った。さらに、メシア教という偽の教団を作り上げ、何も知らないピャンカラを騙しておだて上げ、マイトレーヤという名の教祖に据えた。だが、その実体は純粋培養された人間を生け贄にするためのカモフラージュにすぎなかった。

同時期に、将来的にバエル城建設を見込んで、影武者に都庁を守らせておいた。結界が邪魔になる五色不動も無力化した。国津神やミュータントたちはバエルの勢力が強まってくると周辺部へと追いやられていったが、天津神は全面戦争になると厄介なので、高天原への道をふさいで結界を張り、自滅するようし向けた。

また、将来の全地上支配のモデルケースとして、新宿と代々木に労働キャンプを設けた。そこでは、人間たちは尊厳を奪われ、ひたすら服従を強いられた。そして、シェルターに立てこもって出てこない目障りな人間どもを消すために、DDMを送りつけ、内部から壊滅させる作戦に出た。

これらのほとんどは成功したが、懸案はまだまだあった。配下の幹部級悪魔は力で押さえつけているため、いつ刃向かってくるかわからない。それに、自分に従わない独立勢力の悪魔もいる。唯一神の支援を受けたペンタグランマもうっとうしい。また、イシュタルの分霊が転生していることはすでに察知していたが、前世で唯一神によって邪悪なる部分を引き裂かれたイシュタルは、もはや「バビロニアの大淫婦」ではないので自分の言うことを聞きそうにない。さらに、自分の支配下にないバール神の分霊が、一体だけ転生していることも知った。

邪魔な勢力を叩きつぶし、魔都の覇王として君臨するためには、女神イシュタルの性的パワー(シャクティ)が必要だった。だが、単にイシュタルを覚醒させただけでは、聖王たる自分はいつか殺されてしまう。そこで、バエルは一計を案じた。さまざまな懸案を一挙に解決できそうな妙案だった。

バール神の分霊たる葛城の目の前で、覚醒前のイシュタルの分霊を八つ裂きにし、そのパーツを配下の幹部級悪魔たちに喰らわせて体内で保存させる。そうすれば、愛する者を殺された葛城は、前世の因縁もあり、執念でパーツを集めようとするだろう。その過程で自分のライバルである幹部級悪魔たちを葬り去ってくれる。また、バエルの分霊を斃したときには、バエルの力はより強大なものとなる。

一方、頭部だけは手元に置き、生け贄の血を浴びせ、その魂を再び穢れたものにする。これで覚醒し、復活したイシュタルはバエル自身がコントロールできるようになるはずだった。そして、葛城にすべてのパーツを集めさせないために、イシュタルのもうひとつの分霊であるアスタルテに由宇香の心臓を喰らわせ、しかも飛鳥泪という人間の女性に化けさせて、代々木労働キャンプで出逢うよう細工した。サロメとして送り込んだのだ。アスタルテの葛城に対する感情を考慮した上での、巧妙な作戦だった。

その後もバエルの計画は着々と進む。都庁がペンタグランマによって陥落させられたのは計算外だったが、彼らの油断につけ込み、都庁を奪還するのは、造作もないことだった。しかも、リーダーである渡邊伸明を腹心の部下たるバールハダドとすり替え、内部からペンタグランマを壊滅させることに成功した。また、それ以降も、爆弾テロで有明の指導者ヒルコを暗殺し、マルドゥークが守護する八重洲を壊滅させようともくろんだりもした。

が、御茶ノ水シェルター攻略に失敗したあたりから、次第に雲行きが怪しくなってきた。葛城が予想以上に力を付け、自分の計画をことごとく邪魔し始めたのだ。バエルに忠実な悪魔までも、次々に斃していく。アスタルテに護国寺を焼き払わせ、黄泉から三種の神器のひとつ草薙剣を取ってこれないようにさせたが、なぜか鳥居が復活してしまい、失敗した。中有の制圧も邪魔だてされ、腹心のバールハダドは斃された。しかも、無効化したはずの五色不動は復活し、東京中の結界が無効になってしまった。

急遽渋谷を配下の悪魔に攻めさせる一方、このころになると、バエルは方針を転換していた。むしろ、積極的に葛城に力を付けさせ、自分の手で殺し、自分に次ぐ力を持った分霊を手に入れることにした。そこで、わざとバエル城におびき寄せて由宇香の頭部を奪わせたりもした。

だが、事態はバエルの予想を超えて、はるかに悪化していた。最大のミスは、葛城がもうひとりのメシアだったということだ。分霊としての霊格はバエルを凌駕するほど高く、しかも悪魔召喚という術を身につけていたため、ひとりの場合に比べて戦闘力は何倍にもなっていた。さらに、イシュタルの魂をコントロールすることにも失敗した。イシュタルは葛城を選び、言うことを聞かなかった。

そしてついに、バエルは葛城によって斃されてしまう。だが、そこから先は葛城本人の意志によって未来を選択することになる。その選択によって、世界は救われもするし、破滅もする。だが、いずれにせよ、人々の記憶に、新たなる聖王伝説、メシア伝説が刻まれる……はずだったのだが。メシア降臨とともに唯一神の計画が発動し始める。東京は大洪水によって大半が水没してしまうのだ。無数の人々もろとも。つまり、結末を強引に修正してしまうわけで、これによって「偽典・女神転生」と「真・女神転生 I」のストーリーはつながってしまうのである。

補足

最後に、書ききれなかったことを少しだけ。まず、ルイ・サイファーの位置づけである。バエルとの正面衝突を避け、ミュータントを指揮して得た研究成果を各シェルターに還元して人間を間接的にバックアップしている。まさかこのルイ・サイファーはルシファーとは別人である、といった予想外の設定ではなかろう。すると、ルイ・サイファーがこれほどまでにおとなしいのは、やはり唯一神と同じように、メシアが降臨するのを待っているからなのだろうか。

また、謎は多く残されている。結局、ラビスシジルの石版の謎は解けなかった。マルドゥークは封印されたままだ。そして、早坂も蘇生できなかった。英美は、いつまで市ヶ谷シェルターで働き続けることになるのだろう。それに、相馬三四郎はどこに行ったのだろう。最後まで消息を聞くことはなかった。こうした謎は、MS-DOS版「偽典・女神転生」では未解決のままとなってしまった。Windows版ではそれぞれに一定の答えが与えられていることを期待したい。

ご愛読ありがとうございました。


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